診療方針

上医治未病,中医治欲病,下医治已病

これは2000年以上前の中国の医学書である黄帝内経に書かれている言葉です。

最も優れた医師は、他の人の健康を維持し、病気にさせない。

次に優れた医師は病気になりかかっている状態を治す。

凡庸な医師はすでに病気になっている者を治す。

という意味です。

医師免許を取って研鑽すれば下医にはなれます。

中医になるにはかなりの研鑽が必要で、誰でもなれるものではありません。

上医になるのは殆ど不可能でしょう。

しかしどの医師でも親でもワクチンという武器によって、(いくつかの疾患に限っては)上医になれるのです。

愛着形成と自尊心(自己肯定感)

また「育児本」のページで紹介してある本を読んで実践することで、子どもの未来の精神疾患を予防し、健康な心で人生を過ごせます。

乳幼児期の愛着形成と、幼児期〜思春期までの自己肯定感の形成に努力してください。

害の少ない早期治療を目指して

漢方薬のいくつかは、(おそらくNK活性を高めることに由来する)予防効果の示されたものも存在します。

また抗ウイルス作用を持つ薬剤も複数あり、早期に治療すると著効します。

黄連、黄芩、黄柏、山梔子など少数の生薬を含むもの以外は殆ど副作用を気にすること無く使用できます。

発熱に関しては、感染源がはっきりしない39℃以上の5歳未満児(特に2歳未満児)に対して

積極的に採血することを勧めています。

血液検査によって、ウイルス感染症か細菌感染症か、細菌感染症であれば菌血症の可能性があるかどうか概ね判るからです。

特に発熱してから半日~1日経過していると正確に判断できます。

細菌感染症が疑わしければ抗菌薬をしっかり使い、ウイルス感染症と判れば抗菌薬を使用すべきではありません。

小児の発熱性疾患のうち、8〜9割はウイルス性疾患で抗菌薬は無効です。

食育と腸内細菌叢の形成

細菌感染の証拠があれば抗菌薬の使用は仕方がないのですが、抗菌薬の内服は正常の腸内細菌叢を破壊し、2ヶ月間は殆ど正常細菌はいなくなります。元に戻るのに数ヶ月掛かります。

まだ、元に戻れば良いのですが、5歳未満、特に2歳未満では免疫学的寛容性があるため、正常細菌が少ない状態がその子にとっての”正常”になることもあるのです。

2009年頃から腸内細菌叢が色々な疾患の発症と関連していることを示す論文が次々に出てくるようになりました。

アトピーの増加、肥満の増加、クローン病の増加は乳幼児期の抗菌薬使用と関連している複数の証拠が出てきています。(2016年時点)

私見ですが、川崎病や乾癬のように、この20〜30年で4〜5倍に増えている免疫の疾患があります。

これらも乳幼児期の抗菌薬多用と食生活の欧米化(ショ糖・果糖が増え、野菜が減った)によって正常腸内細菌叢の数、多様性が共に減少しているためと推測しています。

副鼻腔炎による粘性鼻汁であっても細菌性は0.5〜2%と極わずかです。(Nelson Pediatrics)少なくとも10日間は抗菌薬は不要です。

滲出性中耳炎には抗菌薬は「抗菌薬は害が利益を上回るため、使用しないことを強く推奨する」と「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年」の41ページに書かれています。

急性中耳炎は細菌性が7割です。(Nelson Pediatrics)だからと言って全て抗菌薬を使うわけではありません。

急性中耳炎のガイドラインには問題点があります。

発熱や不機嫌といった全身症状のスコアが2点満点で評価されていて、鼓膜という局所所見が8点満点で採点して、合計点で抗菌薬の使用を決めているのです。

おそらく耳鼻科以外の医師で、”局所”のスコアが、”全身”のスコアより重視されていることに同意する人は殆どいないと思います。(普通に考えたら、全身が8点、局所が2点と逆でしょう。)

また肺炎球菌や溶連菌やマイコプラズマなどの細菌感染の多くは39℃を越えてきます。

(少数の例外としては、百日咳、結核、MACによる肺の感染、ブドウ球菌による皮膚の膿痂疹、副鼻”腔”炎や中耳”腔”炎といった空洞の粘膜の炎症があります。)

疼痛や発熱のない急性中耳炎と副鼻腔炎の多くは、乳幼児であっても抗菌薬投与を避けることができます。

正常細菌叢の発達のためにオリゴ糖とセルロース(食物繊維)が有効です。

最近は糖質制限食が注目されていますが、糖質は全て同じではありません。

ショ糖は大腸菌のような腐敗菌を増やし、同じ糖類でもデンプンではそれほど増えません。

乳酸菌・ビフィズス菌などのいわゆる善玉菌はオリゴ糖やセルロースといった”糖質”を利用するのです。

酸のある環境下では、腐敗菌があまり増えることができず、正常の腸内細菌叢では大腸菌は8%程度です。

抗菌薬投与や砂糖の摂取を最小限にして、野菜やオリゴ糖や発酵食品を摂ってください。

これらは便秘の治療にもなります。

食物アレルギーの予防

離乳食はできたら生後5ヶ月、”遅くとも”6ヶ月には始めてください。卵、人工乳かヨーグルト、小麦も6ヶ月から始めてください。ただし微量からです。ケストースという二糖類のオリゴ糖も加えると良いでしょう。

成育医療センターのグループによるLancetに掲載された2016年の論文では、わずか0.25gという卵の粉末を摂り続けることによって、除去した場合より卵アレルギーの発症は1/5に減ったという結果でした。

ピーナッツでも生後6ヶ月から離乳食に混ぜる文化を持つイスラエルのユダヤ人と、2歳まで除去するイギリス在住のユダヤ人でも同様の結果が出ています。

高熱と下痢のときは1週間だけ除去しても良いですが、それ以上は空けないようにしてください。

できたら毎日の方が良いのですが、難しければ週に2回は摂ってください。

蕎麦屋の家庭の子はやはり生後6ヶ月から蕎麦を与えた方が良いでしょう。

環境にある抗原に対して経皮感作を起こす前に、経口免疫寛容を誘導しましょう。

皮膚からの異物は敵と認識する傾向が強く、消化管からの異物は同化しないといけないので、免疫寛容が起きやすいのです。

また敵であれば、そこに炎症が起こるはずなので、炎症のある場所にあるタンパクは敵と見なされてしまう傾向があるのです。

ですから、湿疹のある子はステロイドの力を借りてでも皮膚炎を治す必要があるのです。

怖がらず、でも慎重に行ってください。

検診は中医、ワクチンは上医

江戸時代は生まれてきた子どものうち、成人を迎えることができたのは3人に1人程度、明治時代になっても3人に2人程度でした。

今でも途上国では10%近い乳児死亡率ですが、それでも昔の先進国よりも助かるのです。

この改善は、栄養状態の改善と衛生状態の改善(上下水道の完備)だけでなく、医療の進歩も大きな役割を果たしています。

その中でもワクチン、外科手術における消毒、抗菌薬の貢献が最も大きなものでしょう。

世界中で亡くなっている子どものうち、1/4がワクチンで予防できる疾患で亡くなっています。

一日でも早く免疫を付けるために、感冒症状ごときでワクチンを先延ばしにしないでください。

(1996年にJAMAに投稿された論文で、感冒の最中でも、抗体は上昇し、副反応も健常児群と有意差が無かったと報告されています。)

ワクチンが存在する疾患は死んだり、後遺症を残したりする可能性がある疾患ばかりです。

普通の感冒を起こすコロナウイルスやライノウイルスとは怖さが違います。

同時接種も同様です。すでに現在、4種混合ワクチンを打っています。

アメリカでは6種混合で、ヨーロッパでも5種混合ワクチンを接種しています。

タンパクの種類でカウントすると、水痘が最も多く、約3000種類のタンパクを含む”同時接種”です。

牛肉と豚肉の合い挽きのハンバーグを食べたら、牛肉だけのハンバーグよりも死ぬ人が増えるでしょうか?

当院では、14:10〜15:00に2歳未満の児に対して予防接種を行っています。

同時接種をしたくない人は15:00以降の時間帯で対応します。

(里帰り分娩で、地元の小児科医が同時接種しないスタイルの医師であったために、バラバラに接種している場合も、申し訳ありませんが同様に15:00以降になります。)

ワクチンを否定し、一切のワクチンを受けない方針の方は、来院しないでください。

感染源になるため社会の迷惑です

先天性免疫不全の児はワクチンを打ちたくても打つことができず、また0歳の多くは麻疹の抗体を持っていません。

これらの弱い立場の人を集団免疫で守るのが、周りの人の役目です。

ワクチンは自分を守るためだけではありません。弱者を守るための社会における義務です。

(水道や電気などのインフラを自力で用意して離島や寒村で一人でひっそり暮らすのなら、ワクチンを打たないことは全く問題ありません。)

HPVワクチン(通称、子宮頸癌ワクチン)をぜひ受けてください。

子宮頸癌を発症する人は毎年10000〜15000名で、死ぬ人は3000〜3500名(2010年頃の時点)です。1年間だけでこの数です。

子宮頸癌のうち、半数がワクチンで防げる遺伝子型です。

HPVワクチンのせいで、方向障害や記憶障害が残ったとされているような患者は、実は昔から知られていました。

転換性障害と呼ばれる疾患で、時間は掛かりますが、環境調整や認知行動療法で徐々に治っていきます。

むしろ「HPVワクチンのせいで歩けなくなってしまった」と思い込み、適切なサポートが受けられなくて、迷路に迷い込んでいることは残念です。

副反応だと報道されているワクチンと無関係の疾患に怯えて、ワクチンを接種する機会を逃すことはとても損をすることです。

医師に中にも、ガン検診すればワクチンは不要だと考える人が少数いますが、これは間違っています。

日本人にはガン検診への抵抗が大きく、欧米とは比較にならないぐらい低率です。

ガン検診は中医(早期治療)で、ワクチンは上医(予防医療)です。

検診で見つかっても子宮を失う可能性があります。

一方的なマスコミの報道に騙されないでください。

子宮頸癌で亡くなった人なんて紹介していないのです。

HPVワクチンを接種した方が得なことは小学生でも分かる不等式の問題です。