<アメリカのワクチンスケジュール>

(以下は2007年に書いたもので、情報が古くなっています。最新の情報を公的機関のサイトでチェックしてください。)

まずはアメリカにおけるワクチンのスケジュールを見てみましょう。

新生児 B型肝炎

1ヵ月 B型肝炎

2ヵ月 3種混合、インフルエンザ桿菌、肺炎双球菌、ポリオ

4ヵ月 3種混合、インフルエンザ桿菌、肺炎双球菌、ポリオ

6ヵ月 3種混合、インフルエンザ桿菌、肺炎双球菌

9ヵ月 B型肝炎、ツベルクリン反応

12ヵ月 肺炎双球菌、水痘

15ヵ月 インフルエンザ桿菌、MMR

18ヵ月 3種混合、ポリオ

4~6歳 3種混合、ポりオ、MMR

11~13歳 ツベルクリン反応 破傷風

アメリカのワクチンには幾つか日本にはない大きな特徴があります。

1.スケジュールがしっかり守るために発熱していても構わず打つ。

2.複数同日接種が行われている。

3.これらのワクチンを全て受けていないと小学校に入学できない。

4.B型肝炎の予防接種が全員に行われている。

5.インフルエンザ桿菌と肺炎球菌ワクチンが定期接種に組み込まれている。

6.ポリオワクチンの投与方法が違う。

7.おたふく(ムンプス)が定期接種に組み込まれている。

8.水痘が定期接種に組み込まれている。

9.BCGがない。結核は予防するのではなく罹患したら治療すれば良いという考え方である。

10.日本脳炎ワクチンが行われていない。(アメリカ大陸には日本脳炎ウイルスが全くいません。)

以上がアメリカのワクチンの特徴です。

最も感染のリスクが高い、母体からの免疫が切れる生後6~7ヶ月頃までに最低限の免疫をつけるためには

複数のワクチンを同日接種しないと、全国民にワクチンを行き渡らせることは困難です。

同日接種しても互いに増殖を抑制しないことは多くのワクチンで確認されています。

MMRなどはそれが特許になっていますし、具体的にはアメリカ小児学会の基準に示されています。

日本で定期接種されているワクチンはどれも同日接種ができるものばかりです。

アメリカ小児科学会(AAP)の基準では、

a) 生ワクチンと生ワクチンの同時接種可

b) 生ワクチンと不活化ワクチンの同時接種可

c) 不活化ワクチンと不活化ワクチンの同時接種可

d) コレラ(不活化)接種3週間以内の黄熱病ワクチン接種不可

e) 腸チフスとポリオの同時経口接種不可

f) 異なるワクチンを1本の注射器に吸い混合接種することは禁止

g) 異なる部位(1inch以上空ける)に種類毎、個別に接種する。

となっています。

事実上、コレラと黄熱、腸チフスとポリオ以外に相互に増殖を抑制するという事実は認められていません。

もちろん、夏風邪とポリオは同種もしくは同属であることが多く、ケースによっては避けた方が良い場合もあるかも知れませんが、

多くのワクチンや感染症罹患中の接種は免疫が付くために不利益には働きません。

インフルエンザですらAとBが同時に感染することがあるわけですし、

(これは検査キットの誤反応ではなく、PCRという正確な方法で確認されています。)

ポリオも3種の免疫が付くために2回の接種で3種の免疫が付いています。

これは同種のウイルスが増殖する際、酵素系が競合しても実際は完全に抑制されず、

(不完全ながらも免疫が付く程度に)ウイルスが増殖しているということを意味しています。

このように感染症罹患中でも免疫が十分付くことが殆どです。

(アメリカではワクチンのスケジュールがタイトなので少々発熱していても構わず接種しています。

因みに私の息子もアメリカでHibとPneumococcalを受けた時、体温は測られませんでした。)

「免疫の付き方が不十分かも知れない」という科学的根拠のない迷信よりも、

全てのワクチンを漏れなく接種していくというアメリカ行政の強い姿勢が見て取れます。

同日接種は患者にとっても医師にとっても拘束の負担が少なく、

不利益は行政にとって副反応が現れた時にどのワクチンによるものなのかが判りにくくなることだけです。

当院では、多少の咽頭発赤、咳があっても構わず接種しています。

喘息時にも中発作以下でステロイド静注が必要ない場合には積極的に接種を行っています。

日本脳炎ワクチンは当院では扱っていませんが、

養豚場が近くにあるような田舎に行く機会のある子供にも日本脳炎ワクチンの接種を勧めています。

厚生労働省は休止を決定しましたが、後述するように現行日本脳炎ワクチンの副反応は

日本脳炎自体のリスク(かなり高い死亡率)を凌駕するものではありません。

休止後に熊本で3歳児の日本脳炎患者が現れました。

今後、日本脳炎患児が増えるのではないかと危惧しています。

日本の予防接種ガイドラインによると、

「あらかじめ混合されていない2種類以上のワクチンについて、医師が必要と認めた場合には同時に接種を行うことができる」

と記されています。

これは諸外国では同時接種が普通に行われていて、日本でも医学的に可能であることを示しています。

海外への引っ越し等がある場合には、A型肝炎、狂犬病ワクチン、黄熱病ワクチン、コレラワクチン、腸チフスワクチン等が

必要になるケースもあります。

限られた期間内に必要なワクチンを全部打つためには、同時接種が必要になることも多く、

その場合はためらうべきではありません。

当院でも同日接種や不活化ワクチン接種後1週間以内、生ワクチン接種後4週間以内に次のワクチンを接種することを行っています。

(もちろん、家族の要望や流行状況によって接種間隔を変更しています。)