9価ワクチンは2回でも十分だろう

日本で接種が止まってしまっていたHPVワクチンでしたが、海外では止まるどころか、2016年頃に更に9価になっていました。

アメリカでは発売後からの調査で2回接種でもかなり抗体上昇が良いことが分かっていて、9歳〜14歳は2回接種で十分ということになっています。

15歳〜26歳に対する2回接種 vs 3回接種の非劣勢試験が行われていなかったのですが、3回接種は、0,2,6ヶ月時に接種なので、2ヶ月半もあれば有意に抗体上昇します。Sexual activityが高まる年齢なので、アメリカではこの年齢層にのんびり2回接種という選択肢は考えていないのでしょう。

私見ですが、日本では貞操の固い人であれば、15歳以上でも初回から6〜12ヶ月後に2回目を打つという選択肢もありだろうと思います。

また海外では(2016年以前には2価のサーバリックスを追いやって、4価のガーダシルがシェアの殆どを占めていたこともあって)6,11,16,18型を含むMerck社のガーダシルと、HPV6/11/16/18型に加え、HPV31/33/45/52/58型を含むガーダシル9(日本だけはシルガードという姑息な名前です。)で互換性は議論になることもなく、シームレスに移行しました。(医学的に互換性があるのは自明です。)

日本では厚労省がガーダシルとガーダシル9の互換性を認めず、4価を1回でも打っていれば4価を3回完遂する必要があると主張し、9価はまだ自費扱いです。しかも医師側は色々登録が必要で最大で登録に30分かかります。

患者側も副反応が無いか日記のような記録を残すことが要求され、まるで罰ゲームのようです。

3種混合+不活化ポリオと4種混合の互換性を認め、DTと3種混合もしくは4種混合との互換性を認めながら、

4価のガーダシルと9価のガーダシルに互換性が無いという厚労省の主張は矛盾しています。

不活化ポリオの時もそうでしたが、海外で日系人を含むアジア人のデータは大量にあるにも関わらず、安全性や有効性の確認のため日本でも治験を行いました。そのため、国内で買う不活化ポリオワクチンは海外から輸入した不活化ポリオワクチンの3倍以上高価になりました。

ファイザーのコミナティも日系人を含むアメリカ人のデータが大量にあるにも関わらず、日本人160名の治験を行うために輸入が2〜3ヶ月遅れました。一体誰のための行政でしょうか。

<医学的にはどうすれば最善か?>

9歳で2回接種することをお勧めしたいです。

なぜなら、

1.思春期以前の方が迷走神経反射が起こりにくい。

2.膠原病等の免疫異常は女性の方が起こりやすく、性差が出るのは思春期以降である。思春期以前の方がGuillain-Barreも起こりにくいだろう。

3.小学生のうちに色気付く人は少ない。

という理由です。

<行政のルールに対応するにはどうすれば良いか?>

上記でお勧めした9歳で接種は無理です。早くて小学6年からですね。

高校2年以上は9価ワクチンを選んでください。

まずは(半年以上空けて)2回接種しましょう。

4価ワクチンは3回接種で約5万円程度かかります。9価は1回3万円を超えるので2回接種に減らしても6万円以上です。

しかし4価の有効率50〜60%と、9価の有効率80〜90%はかなり差があります。

今は生涯独身で過ごす人も多いので、結婚したいような異性が見つかったら3回目を接種でも良いのかなと思います。

3万円なんて安いもんだ、と思う人は普通の接種スケジュールで良いでしょう。

現在、高校生1年の人は4価×3回接種を選ぶしかないでしょう。お金持ちの家庭の人は初めから9価でも良いでしょうが。

現在、中学生の人は難しい問題です。

厚労省の中の人も保身優先という人ばかりでは無いはずです。その証拠にCoVID-19で激務の最中に9価を発売までこぎ着けました。

ある程度、データが集まったら定期接種化されると予想しています。

しかしそれがいつかは全く分かりません。

(2021/08/12 管理者記載)

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ここからはCDCのサイトの訳です。

<免疫原性>

2回接種法のFDA承認の基礎となった9vHPV臨床試験では、参加者は9〜14歳の少女と少年で、16〜26歳の若い女性と比較されました。 1,377人の参加者のうち、97.9%以上が、最後の投与から4週間後までにワクチンで予防可能な9種類のHPVすべてに抗体陽転しました。 6か月間隔(0、6ヶ月スケジュール)または12か月間隔(0、12ヶ月スケジュール)で9vHPVを2回投与された少女と少年の場合、抗体陽転化とGMTの(3回接種に対する)非劣性基準が満たされました。

さらに、3回接種(0、2、6ヶ月のスケジュール)された16〜26歳の女性と比較して、2回接種された9〜14歳の人のすべての9vHPVタイプでGMTは有意に高かった。

6つの研究では、4vHPVと2vHPVで同様の結果でした。免疫原性は、臨床的有効性が実証されたグループの3回の投与と比較して、9〜14歳の人の2回の投与で非劣性であることがわかりました(GRADE evidence type 3)。


<有効性>

有効性とライセンス後の有効性の研究がレビューされましたが、上記の選択基準を満たしたものはありませんでした。ライセンス前のHPVワクチンの有効性試験は、3回接種シリーズで実施されました。これらの試験のいくつかからのデータを用いて実施された事後分析は、2回接種を受けたワクチン接種者と3回接種を受けたワクチン接種者の間で感染に対する高い有効性を発見しました。 2回の投与と3回の投与を比較した大規模な研究でも、感染に対する同様の有効性が示唆されました。

ライセンス後の有効性研究では、3回投与されたワクチン接種者と比較して2回投与されたワクチン接種者のさまざまなHPV関連転帰に対する有効性が低いことがわかりましたが、これらの研究の方法論的にこの解釈を制限されます。

(管理者注:これは発売後調査が症例集積研究であり、前方視的研究では無いから信頼性が低いという意味だと思います。)


<有効期間>

臨床試験からの10年間の追跡調査を通じて、HPVワクチンの3回接種後に防御が弱まるという証拠は見つかりませんでした。抗体動態は2回投与および3回投与シリーズと類似しているため、保護期間も2回投与シリーズ後も長続きすると予想されます。


<健康への影響と費用対効果のモデリング>

米国における9vHPVの2回接種および3回接種スケジュールの人口レベルの有効性と費用対効果がモデル化されています。

有効性と保護期間の両方がどちらのスケジュールでも類似していると仮定すると、2回接種シリーズはコストを節約し、3回接種シリーズと同様に死亡率を低下させます。保護期間が2回接種シリーズで20年、3回接種シリーズで生涯であっても、3回接種シリーズの追加の利点は比較的小さく、2回接種シリーズの方が費用効果が高くなります。


<15歳以上は2回接種だけで有効か?>

ACIPが知り得た研究では、9〜14歳に少なくとも6ヶ月間隔で2回接種したHPVワクチンは、15〜26歳に3回接種した場合よりも良好良好な抗体上昇を示しました。

15〜26歳に対する2回接種法の免疫応答は同じ方法で研究されていないため、利用できる情報はありません。

そのため、15〜26歳は、最善の保護のために3回接種が必要です。


<9〜14歳のときに5ヶ月未満の間隔で2回だけ接種した人は3回目が必要>

HPVワクチンの2回接種スケジュールでは、推奨される1回目と2回目の間隔は6〜12ヶ月で、最小間隔は5ヶ月以上です。 2回目の投与が5ヶ月より前に行われた場合は、3回目の投与を行う必要があります。


<2価もしくは4価HPVワクチンを打ったが、完了していない人>

認可されたHPVワクチンはすべて、同じ推奨スケジュールと投与間隔で一連のワクチン接種を完了するために使用できます。

HPVワクチンの初回投与が15歳の誕生日以前に行われた場合、ワクチン接種は2回の投与スケジュールに従って完了する必要があります。 2回投与シリーズでは、2回目の投与は最初の投与から6〜12ヶ月後に推奨されます(0、6〜12ヶ月のスケジュール)。

HPVワクチンの初回投与が15歳の誕生日以降に行われた場合、ワクチン接種は3回の投与スケジュールに従って完了する必要があります。 3回投与シリーズでは、2回目の投与は最初の投与の1〜2ヶ月後に推奨され、3回目の投与は最初の投与の6か月後に推奨されます(0、1〜2、6ヶ月のスケジュール)。

予防接種スケジュールが中断された場合、ワクチンの投与を繰り返す必要はありません。

(2価、4価、9価が混在していたとしても初回が15歳未満なら合計2回接種、初回が15歳以上なら合計3回接種です。)


<27〜45歳の人に対して>

HPVワクチン接種は、人がHPVにさらされる前に与えられたときに最大の利益をもたらします。そのため、CDCは11〜12歳でHPVワクチン接種を推奨しています。 HPVワクチン接種は、若いときにワクチン接種を受けなかった場合は、26歳までのすべての人に推奨されます。

通常27歳以上の人には予防接種はお勧めしません。ただし、27〜45歳の成人の中には、若いときに十分なワクチン接種を受けていなかった場合、臨床医との話し合いに基づいてHPVワクチンを接種することを決定する場合があります。この年齢層の人々へのHPVワクチン接種は、すでにHPVにさらされているため、利益が少なくなります。

ほとんどの性的に活発な成人はすでにHPVに感染していますが、必ずしもすべてのタイプのHPVがワクチン接種の対象となるわけではありません。年齢を問わず、新しいセックスパートナーを持つことは、新しいHPV感染症にかかる危険因子です。すでに長期にわたる一夫一婦制の関係にある人々は、新たなHPV感染症にかかる可能性は低いです。

HPVワクチン接種は、新しいHPV感染を予防しますが、既存の感染や病気は治療しません。


Use of a 2-Dose Schedule for Human Papillomavirus Vaccination — Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices

Weekly / December 16, 2016 / 65(49);1405–1408

Elissa Meites, MD; Allison Kempe, MD; Lauri E. Markowitz, MD

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/65/wr/mm6549a5.htm


https://www.cdc.gov/hpv/hcp/schedules-recommendations.html


Immunogenicity of the 9-valent HPV vaccine using 2-dose regimens in girls and boys vs a 3-dose regimen in women.

Iversen O-E, Miranda MJ, Ulied A, et al.

JAMA 2016;316:2411–21.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2588254


Indian HPV Vaccine Study Group. Immunogenicity and HPV infection after one, two, and three doses of quadrivalent HPV vaccine in girls in India: a multicentre prospective cohort study.

Sankaranarayanan R, Prabhu PR, Pawlita M, et al. ;

Lancet Oncol 2016;17:67–77.

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(15)00414-3/fulltext