肉摂取量増加で冠動脈疾患リスク上昇,日本人2型糖尿病の縦断研究

2型糖尿病患者の肉摂取量増加は,冠動脈疾患の発症リスクを上昇させるという研究結果が,新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科の堀川千嘉氏らにより,第25回日本疫学会学術総会(2015年1月21~23日,学会長=名古屋大学大学院医療行政学教授・浜島信之氏)で報告された。1日肉摂取量が10g増えるごとに,2型糖尿病患者の冠動脈疾患発症リスクは9%上昇したという。

最も多い群で約3倍高リスク

 肉の摂取量が増えると,糖尿病の発症リスクが高くなることが国内外で報告されている。

さらに,2型糖尿病患者における冠動脈疾患の発症リスクも上昇するというデータが米国で報告されているが,日本人で調べた報告はこれまでなかった。米国人と日本人では,肉摂取量が大きく異なるため,日本人における検討が望まれていた。

 堀川氏らは,日本人2型糖尿病患者を対象とする大規模疫学研究Japan Diabetes Complication Study(JDCS)において,肉摂取量と心血管疾患発症リスクとの関連を縦断的に検討した。JDCSは,全国59か所の糖尿病専門施設外来に通院する,進行合併症を持たない日本人2型糖尿病患者約2,000例を対象とした前向きコホート研究。1996年に開始され,日本人糖尿病患者のエビデンスを多数明らかにしてきた。新潟大学大学院血液・内分泌・代謝内科学(曽根博仁教授)が研究本部。

 堀川氏らは,JDCS登録例のうち約1,600例について,8年後まで心血管疾患全般,冠動脈疾患,脳卒中の発症を検討した。その結果,4分位で分けた1日肉摂取量が多い群ほど,冠動脈疾患の発症リスクが有意に高くなった。脳卒中の発症リスクは,肉摂取量との間に有意な関連が見られなかった。心血管疾患全般の発症リスクは,肉摂取量が最も多い群でのみ有意な上昇が認められた。

 冠動脈疾患の発症リスクは,1日肉摂取量が10g増えるごとに9%上昇。1日肉摂取量が最も多い群(平均98g)では,最も少ない群(平均10g)に比べ,冠動脈疾患の発症リスクが約3倍高かった。

 以上から,同氏は,今後さらなる検討が必要とした上で「2型糖尿病患者の食事では,肉のみに偏らない蛋白質・脂質の摂取が重要である可能性が示唆された」とまとめた。