クラリスの催奇形性

クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)はFDAのPregnancy risk categoryのCに位置づけられているが、その理由は、

「動物における器官形成期投与試験で、母動物に毒性が現れる高用量において、

・ラット胎児に心血管系異常、

・マウス胎児に口蓋裂

・サル胎児に発育遅延

が認められ、これらの胎児毒性は母動物の体重低下に伴う胎児の発育不良によるものと考えられている。」

という事実に依ります。


このため、クラリスロマイシンはFDAのカテゴリーCとされています。



人では比較対照試験は行われていませんが、以下の3つの報告があります。


1. クラミジア陽性の妊婦に於いて、クラリスロマイシンの投与を行った文献報告において、

   新生児に異常所見は見られていない。


2. 使用成績調査および特別調査において、妊婦401例中、

   妊婦の副作用発現は4例(1%)に見られ、嘔気2例、下痢1例、発疹1例であった。

   妊婦特有の副作用ではなく、一般の人に投与する際に起こり得る副作用の種類と頻度であった。

   また出生児372例のうち3例に奇形があったが、通常に起こり得る奇形児の比率4%より低く、

   いずれもクラリスロマイシンとの関連はないと報告されている。

  (インタビューフォームVIII-10-1 妊婦・産婦への投与より)


3. 妊婦の一般感染症におけるクラリスロマイシンの影響を検討した海外の報告では、

   催奇形性を示唆するデータは得られなかった。



薬剤を用いて、妊婦に比較対照試験を行うことは非常に困難で、

比較対象試験で安全性が確認できているのは、ビタミン剤ぐらいしかありません。

おそらくビタミン剤は葉酸のように胎児に良い影響を与えたものがあるため、

「あなたのお子さんに良い影響が出るか、プラセボ群との比較対照試験に参加してください」

とお願いして同意を得ることは可能かも知れませんが、

他の薬剤では、サリドマイドのような悪い歴史しかないため、

「あなたのお子さんに奇形や胎児毒性が出るか、プラセボ群との比較対照試験に参加してください」

とはお願いしても、誰も参加してくれないでしょう。

ですから、妊婦に安全とされている多くの薬剤はFDAのカテゴリーB止まりです。

(複数の動物実験で奇形が増えないか、RCTを行うしかない。)



人間に最も近いサルの実験を参考にするならば、おそらく人間で起こり得ることは

出生体重の減少でしょうが、母体にクラリスロマイシンを投与した場合の胎児中血中濃度は、

母胎中の血中濃度の約1/4と胎盤を通過しにくいので、胎児毒性は起こりにくいと考えられます。


しかし動物実験で安全性が確認されたAZM(ジスロマック)、EM(エリスロシン)の方が安心でしょう。