習慣的な飲酒で精液の質が低下

習慣的な飲酒で精液の質が低下

デンマーク University of Southern DenmarkのTina Kold Jensen氏らによる

18-28歳の健康男性約1,200人を対象とした住民ベースの横断研究から,

習慣的な飲酒により精夜の質が低下する可能性が示された。

精液の質の低下は習慣的な飲酒量が中等度(週当たり5ユニット超,アルコール度数5%程度のビール5缶に相当)から認められ,

週の飲酒量が40ユニット超の男性では1-5ユニットの男性に比べて精子濃度が33%低下していたという。

詳細はBMI open(2014; 4: e005462)に報告された。

精子濃度,精子数,精子正常形態率が低下

欧州では若者の大量の飲酒が問題となっており,冠動脈疾患(CHD)や脳卒中, 肝疾患なと健康への悪影響が危惧されている。

一方,飲酒と生殖機能の関連については複数の報告があるものの,結果は一貫していない。

また多くは平均飲酒量を用いた検討である。

そこで、Jensen氏らは,最近の飲酒量や短時間での大量飲酒(binge drinking)の頻度と,

精液の質や血中の生殖ホルモンとの関連を検討する住民ベースの横断研究を実施。

2008~2012年に兵役適正検査を受けた18~28歳のデンマーク人男性(平均年齢19.1歳)を

登録し質問票により飲酒習慣を調査した。

また,精液を提出した全員について,血液検査と身体検査を行った。

質問票は

① 前週の飲酒量

②通常の週当たりの飲酒量(習慣的飲酒量)

③過去1カ月に1日5ユニット超の大量飲酒をした回数

-などの質問項目で構成。

精液の状態(量,精子濃度, 精子数,精子の運動率および奇形率)と,生殖ホルモン

[卵胞刺激ホルモン(FSH),テストステロン, 黄体形成ホルモン(LH),性ホルモン結合グロプリン(SHBG),

エストラジオール,遊離テストステロン, インヒビンB] の血中濃度との関連を評価した。

その結果,前週の平均飲酒量は11ユニットで,過去1カ月に3回以上大量飲酒した人の割合は64%に上った。

553人(45%)は前週の飲酒パターンが通常の飲酒パターンに当てはまると回答したため,

同データを「習慣的な飲酒」の解析に用いた。

交絡因子を調整して解析した結果、精子濃度,精子数,精子正常形態率は,

習慣的な飲酒量の増加と逆相関していた(それぞれのp=0.02,0.01, 0.01)。

この関連は,週に5ユニットを超えると認められ,25ユニット超ではより強い関連が認められた。

週に1-5ユニットの習慣的飲酒と比べ,40ユニット超の習慣的な飲酒では,精子濃度は33%低下(95%CI 11-59%) していた。

一方,習慣的飲酒と精子運動率,精液量との聞に関連は認められなかった。

また,飲酒を全くしない場合も精液の質の低下と関連していた。

習慣的飲酒を避けるよう指導を

前週の飲酒量や過去1カ月以内の大量飲酒の回数と精液の質との間には,交絡因子を調整後明らかな関連はなかったが,

前週の飲酒量の増加に伴い血中の生殖ホルモンレベルは変化した。

テストステロン,遊離テストステロンのレベルは上昇し,SHBGのレベルは低下した。

過去1カ月の大量飲酒の回数に関しでも同様の関連が示された。

前週の飲酒量とLH,FSH,インヒビンB,エストラジオールとの間に関連は見られなかった。

習慣的飲酒も生殖ホルモンに影響したが.最近の飲酒と比べて関連は弱かった。

以上から,中等度の飲酒量であっても週に5ユニットを超える習慣的飲酒により精液の質は低下し,

その影響は25ユニットを超えると顕著になることが分かった。

Jensen氏らは「今回は直近1週間の飲酒量を基に検討しており,

対象者の記憶に基づく平均飲酒量のデータを用いた以前の研究よりも正確性が高い」とする一方で,

「アルコールによる精子形成への直接的な影響を検討するため交絡因子を調整して解析したが,

それでもなお、アルコールの摂取量が多い者での生活習慣や健康行動,食事の違いが結果に影響した可能性は残る」

と述べている。

(※注 1ユニットはエタノール換算で12gに相当(ビール300mL, ワイングラス1杯、蒸留酒40ml相当)