QT延長を起こす薬剤

Drugs That Prolong the QT Interval and/or Induce Torsades de Pointes

http://www.azcert.org/medical-pros/drug-lists/printable-drug-list.cfm

Unbound MEDLINE :

http://www.unboundmedicine.com/medline/ebm/mesh/Torsades_de_Pointes

これらでは、ナウゼリン、プリンペランといった制吐剤や、マクロライド系抗菌薬でリスクがあることになっています。

マクロライド系抗菌薬

マクロライド系抗菌薬は、ペニシリン系やセフェム系のように2~3倍量を使うというやり方を殆どしません。例外はピロリ菌の除菌の場合等幾つかのケースだけです。通常は高用量を用いないので、まずリスクはありません。

プリンペラン

プリンペランは約1%に錐体外路症状という不随意運動が生じるため、QT延長を起こす前に錐体外路症状が起きるため致死的なQT延長が起きることが無く、安全(?)です。

(1965年発売開始。市販後調査は行われていない。海外文献23報を集積した錐体外路症状の報告は、1023例中10例≒約1%で起きています。対照群は設定されていません。)

ナウゼリン

一方、別の制吐剤であるナウゼリンは髄体外路症状が起きにくく、特に血中濃度が上がりやすい注射薬や坐剤でも脱水時にQT延長による突然死が起きることがあるようです。

ナウゼリン注射薬では、1982年9月の発売開始から、1985年10月までに17例のショック症状発現例が起き、そのうち7例は救命できずに死亡しました。そのため注射薬は発売中止になっています。

発売開始から1984年6月までに465万本出荷されており、一人当たり3回投与されたとすると推定患者数は155万人。推定発現率:0.001%です。

ナウゼリン坐薬では、注射薬より血中濃度が上がりにくいため、ショック症例は少なく、2013年の時点でも発売は継続されていますが、1982年6月~1988年6月の間にショックが成人4例、小児2例で起きています。このうち成人3名、小児1名が死亡しています。

私の知り合いの小児科医の中でも2名がナウゼリン坐薬によるショックを経験しています。(うち1名は死亡。)

脱水のあるときは、かなり注意しないといけない薬だと言えます。

嘔吐の9割程度は漢方薬で止めることができるので、ナウゼリンは不要な薬だと考えます。


オーラップ(ピモジド)

【併用禁忌】

● HIVプロテアーゼ阻害剤:ノービア(リトナビル)等

● アゾール系抗真菌剤(外用剤を除く):イトリゾール(イトラコナゾール)、フロリードゲル経口用(ミコナゾール)、ジフルカン(フルコナゾール)

クラリス、クラリシッド(クラリスロマイシン)

エリスロシン(エリスロマイシン)

【臨床症状・措置方法】

QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作用を起こすおそれがある。

【機序・危険因子】

これらの薬剤がチトクロムP450 (CYP3A4 )による薬物代謝を阻害し、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。

【併用禁忌】

● パキシル(パロキセチン)

● ルボックス、デプロメール(フルボキサミン)

【臨床症状・措置方法】

QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作用を起こすおそれがある。

【機序・危険因子】

これらの薬剤が本剤の代謝を阻害し血中濃度が上昇するおそれがある。


自閉症児でオーラップを内服している子はいるでしょうが、SSRIと呼ばれる抗うつ薬や、風邪のときにクラリス等を出してはいけないのです。

SSRIは児童精神科医や小児神経科医ぐらいしか処方しないでしょうが、クラリスはどこの町医者でも出されることがあると思います。

多くの医師はオーラップという自閉症の薬剤のことを知らないからです。

処方されている人は注意しましょう。

日本では唯一、自閉症への保険適用のある薬剤でしたが、海外では自閉症への有効性が否定された意味のない薬剤です。