運動すると風邪を引きにくい

アメリカの前向き疫学研究


 「子供は風の子,大人は火の子」とは小児の活発な運動による健康増進を勧めることわざの1つだが,大人もよく運動するほど風邪をひきにくくなるようだ。 18歳以上の成人を対象とした研究で週5日以上運動する人では,ほとんど運動しない人に比べ風邪(上気道炎)の程度が軽いとの前向き疫学研究が本日(2010年11 月2日)発行のBr J Sports Medオンライン版で発表された。意外なようだが,これまで運動と風邪との関連を疫学的に検討した研究は少なかった,と同論文著者のDavid C. Nieman氏(米アパラチアン州立大学)らは述べている。


罹患日数がほぼ半減

 米国の統計によると,1年間にかかる風邪の平均回数は成人で2~4回,小児では6~10回で,米経済に与える影響は400億USドルに上るそうだ。

 風邪の発症には免疫機能の低下や感染リスクを増加させるストレスや睡眠不足などさまざまな要因が関連すると考えられている。一方,運動が免疫低下 を抑制し,風邪の罹患リスクを下げることが報告されており,動物実験やもともと運動をしない人を対象とした運動介入試験などで裏付けが得られているとい う。しかし,身体活動性が中等度,あるいはほとんど運動しない人を比較対象とした疫学研究の報告はこれまでほとんどなかった,とNieman氏らは指摘。 風邪に関する健康関連項目の評価を目的とした地域データベース(Wisconsin Upper Respiratory Symtom Survey;WURSS)による検討が行われた。

 追跡開始の2週間前に,18~85歳の男女1,002例(女性60%,男性40%)に対し,運動回数とその強度を10ポイントのスケール (Likert scale)で自己評価してもらったほか,食事や最近感じたストレス,生活習慣など免疫機能にかかわる因子を調査,回答を集めた。

 調査後,週5日以上の有酸素運動を行っていた人(215例)では,12週の間に風邪に罹患した日数がほとんど運動しない(週1日以下,341例) 人に比べ43%有意に減少していた(P<0.05)。健康に対する自己評価(physical fitness)が高い人でも,同罹患日数は低い人に比べ46%の有意な低下が確認された(P<0.05)。

 さらにこれらの人では,風邪の重症度スコアおよび症状スコアも32~41%と大幅に低下していた。以上はすべて年齢,教育レベル,結婚,性,スト レスレベル,BMI,果物の摂取状況を補正して得られた値だという。なお,加齢,男性,既婚は風邪の発症回数減少と関連が見られていたが,健康への自己評価の高さ運動回数が最も有意な関連を示した,と同氏らは述べている。