肥満手術で糖尿病リスクが8割低下

英King's Colege LondonのHelen Booth氏らは, 肥満者に対する外科的治療が2型糖尿病発症リスクに及ぼす影響をマッチドコホート研究で検討。最長で7年間追跡した結果, 肥満手術を受けた肥満者では

手術を受けなかった肥満者に比べて同リスクが8割り低かったとの結果を、Lancet Diabetes Endocrinol(20l4年11月3日オンライン版)で報告した。


スウェーデンの研究でも大幅なリスク低下


肥満手術による減量効果は極めて高く,肥満関連疾患の低減やQOLの向上にも寄与することが知られている。

また,ベースライン時に糖尿病がない肥満者を対象に 肥満手術による2型糖尿病発症への影響を検討

したスウェーデンのSOS研究では, 最長15年間の追跡で大幅な2型糖尿病リスクの低下が示された。


しかし検討対象の手術の術式を見ると,現在はあまり実施されていない垂直帯胃形成術が中心であった。

さらに肥満手術による2型糖尿病発症への影響を検討した他の研究は, 術後のケアが強化されているものが多く, 実際の診療の実態が反映されているとはいえなかった。


そこでBooth氏らは今回,人口ベースのマッチドコホート研究でこの点について検討した。

680超のプライマリケア施設の患者500万例以上を含む診療データベース(CPRD)から, 20-100歳でBMI 30以上の患者を同定。2002-14年に肥満手術を受けた2,167例(肥満手術群)とBMI, 年齢, 性, index year(術年),HbA1cが一致した肥満手術を受けなかった患者2,167例(対照鮮)を対象に2型糖尿病の新規発症を最長7年間(中央値2.8年,四分位範囲1.3-4.5年)追跡した。


肥満手術群と対照群の84-87%を女性が占め,平均年齢は44-45歳、平均BMIは両群とも43であった。

肥満手術の術式は腹腔鏡下胃パンディング術(1,053例), 胃パイパス術(795例),スリープ状胃切除術(317例), 不明(2例)であった。


性,年齢にかかわらずリスク低下


追跡期間中に肥満手術群で38例(4.3%), 対照群で177例(16.2%)が新たに糖尿病と診断された。

1,000例・年当たりの発症率は対照群の28.2(95% CI 24.4-32.7)に対し, 肥満手術群では5.7(同4.2-7.8)で全ての交絡因子を調整後のハザード比(HR)は0.20(同0.13-0.30,P<0.0001)て、あった。


肥満手術の効果は男女, BMI, カテゴリ一, 年齢層にかかわらず認められた。

この結果について,Booth氏らは「(術後に)ルーチンの診療が行われていた場合でも、最長7年間の追跡

期間における2型糖尿病の新規発症リスクは肥満手術により8割低下していた」と説明。

「重度の肥満者にとって、肥満手術は糖尿病の新規発症を予防するのに極めて効果的な方法である可能性がある」との見解を示している。


(※交絡因子)

BMI,年齢, 性, HbAlc, 術年, 冠動脈疾患, 脳卒中, うつ, 喫煙, 総コレステロール, 高血圧, 降圧薬とスタチンの使用