Hibワクチン>

<Hibワクチン 商品名:アクトヒブ(サノフィパスツール第一ワクチン)>

<B型インフルエンザ桿菌(Hib)>

肺炎球菌と並び小児の重症細菌感染症の起因菌となっているインフルエンザ桿菌に対して

不活化ワクチンが2007年冬から接種可能となりました。(ただし任意接種で有料です。)

因みにインフルエンザはウイルスであり、細菌であるインフルエンザ桿菌とは全く関係がありません。

100年以上前の医師がインフルエンザ患者の痰から分離し、インフルエンザの原因と勘違いしたことからその名称が始まりました。

a型からf型まであるインフルエンザ桿菌にうち、95%以上がb型による感染であることから

インフルエンザ桿菌=Hib と考えて差し支えない程で、以下Hibと略します。


<Hib感染症とHib髄膜炎>

Hib感染症の約85%は0~4歳の乳幼児で見られ、5歳以降では罹患率が下がります。

Hib髄膜炎は母体の免疫が切れてくる月齢4から発症することがあり、月齢6~9にHib髄膜炎のピークがあります。

Hib髄膜炎のうち2歳未満は66%、4歳未満は95%です。

5歳以上の化膿性髄膜炎は免疫不全児、中耳炎、副鼻腔炎、外傷を契機とした発症など

何らかの他の要因があることが多くなります。

アメリカでも5歳以上はHibワクチンと肺炎球菌7価ワクチン(pneumococcal conjugate)の対象外です。


<Hibワクチンの有効性>

Hibによる髄膜炎の0~4歳の10万人あたり年間罹患率は、

アメリカ合衆国で50~60人、ヨーロッパ・イスラエル・マレーシアで20~50人、

ウルグアイ・香港・日本・サウジアラビア・カタールで20人未満です。

アメリカのCDCのデータでは、ワクチン導入以前には5歳未満人口10万人のうちHib髄膜炎罹患率が50人程度であったものが

1996~1997年には99%低下し、10万人対0.5人程度まで減少しました。

現在のアメリカ合衆国では、患者は結合型のワクチンをまだ一度も受けていない児や、

まだ1回しか結合型のワクチンを受けていなくて十分な免疫を獲得していない児などに限られるようになりました。

他国のデータでもワクチン導入以前の1/100程度にHib感染が減少しています。

髄膜炎だけでなく肺炎や中耳炎も減少するため、生後半年以降も抗生剤が必要となる疾患は稀となります。


<髄膜炎の起因菌>

日本で1994年に行われた化膿性髄膜炎の全国調査の結果、回答のあった591例のうち

インフルエンザ桿菌が254例、肺炎球菌は86例と圧倒的に多く、

B群溶連菌が50例、大腸菌が22例と新生児期~月齢3頃までに多い起因菌が続き、

リステリア菌が12例、髄膜炎菌が3例でした。

黄色ブドウ球菌が8例、表皮ブドウ球菌が5例と常在菌によるものも少数ながらあります。

その他29例、原因菌不明が125例で、培養採取前に抗生剤が投与されているケースも多く、

原因不明の場合も原因菌が判っている場合と同様の比率とすると、

化膿性髄膜炎の原因はインフルエンザ桿菌は50%以上となり、肺炎球菌と合わせると70%以上になります。

分娩前に母体のGBSの除菌が行われており、予防可能な髄膜炎起因菌は80%以上であることが判ります。


<肺炎と中耳炎の起因菌>

後述する肺炎球菌と合わせて、Hibは細菌性肺炎や中耳炎の2大起因菌です。

中耳炎ではこの2つが80%を占めます。

肺炎でもマイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎といった非定型肺炎を除くとこれに近い比率になります。

細菌性肺炎では他にモラキセラが第3位に続きます。

成人や老人とは違い、ブランハメラ、ブドウ球菌、緑膿菌、レジオネラ等は少ない。

Hibワクチンと肺炎球菌7価ワクチン(pneumococcal conjugate)は髄膜炎だけでなく、

Hibと肺炎球菌の感染症を全般に激減させるため、肺炎と中耳炎のリスクも減らします。


<Hibワクチンの接種方法>

アメリカではHibワクチンはpneumococcal conjugateと共に同日接種されます。

・月齢2~1歳未満児:生後2、4、6ヶ月と12~15ヶ月時にpneumococcal conjugateと共に接種。合計4回。

・1歳~5歳未満児:初回接種を1回受けて、その後1ヶ月以上空けて追加接種1回。合計2回。

・5歳以上は接種不要。

日本に導入されるアクトヒブの接種方法は、

・2ヶ月~7ヶ月未満児: 初回3回を4~8週間隔毎に。1年以上空けてから追加接種1回。合計4回。

・7ヶ月~1歳未満児: 初回2回を4~8週間隔毎に。1年以上空けてから追加接種1回。合計3回。

・1歳~5歳未満児: 初回1回のみ。追加接種不要。(アメリカでは4週以上空けて1回追加している。)

・5歳以上は接種不要。

1992年以降、世界の100以上の国で定期接種に組み込まれており、世界でもHibワクチンが導入されていないのは、

アフリカの半数以上、中東の幾つかの国、アジアでは北朝鮮、モンゴル、バングラディッシュ、ネパール、ラオスくらいです。

発展途上国ですら乳児全員を対象とした定期接種として導入している国が多いのに対して

日本では主要国から15年も遅れて始まり、しかも希望者のみの任意接種です。