LDL-Cは血液透析患者の感染症リスクを低減

血液透析患者では血清総コレステロール値が死亡リスクと逆相関することがよく知られている。一般的に、LDL-コレステロール(LDL-C)の高値は死亡リスクの上昇につながるが、血液透析患者には当てはまらない。血液透析患者の死亡原因の第1位は心血管疾患であるが、次に多いのが感染症であり、LDL-Cは細菌性毒素の吸収および不活化に働いて、先天免疫に関与している可能性が考えられている。米・University of California Davis School of MedicineのGeorge A. Kaysen氏らは、こうした観点から血液透析患者のアウトカムに関する国際的なデータベースを解析し、実際にLDL-C高値が感染症による死亡リスクの低下と関連していることを、米国腎臓学会・腎臓週間(ASN Kidney Week 2017、10月31日~11月5日、ニューオーリンズ)で報告した。


LDL-C高値が全死亡や感染症による死亡のリスク低下と関連

 Kaysen氏らは、血液透析患者の予後改善を目指す国際的な取り組みであるThe MONitoring Dialysis Outcomes(MONDO)initiativeのデータベースを利用して今回の解析を実施した。2000年1月1日〜12年12月31日に血液透析を開始し、少なくとも1回は血清脂質などの測定が行われている患者1万4,650例(男性60.2%)を対象とした。最終の測定から4年後までの全死亡、感染症による死亡、心血管疾患(動脈硬化性疾患)による死亡を追跡して、血清脂質との関連を時間依存性共変量のCox回帰モデルで解析した。

 その結果、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)や好中球/リンパ球比(NLR)を含む多変量モデルにおいて、LDL-C高値、HDLコレステロール(HDL-C)高値、トリグリセライド(TG)高値は、いずれも全死亡リスクの低下と関連していた。また、LDL-C高値は感染症による死亡リスクの低下とも関連していた(図)。HDL-C高値も透析歴をモデルに含めると感染症による死亡リスクの低下と関連していた。

図. 血液透析患者における感染症による死亡と血清脂質などの関連


血液透析患者の動脈硬化性疾患ではLDL-Cよりも炎症が関与

 今回の解析で、HDL-C高値は動脈硬化性疾患による死亡リスクの低下と関連していたが〔ハザード比(HR)0.44、95%CI 0.33~0.60、P<0.0001〕、LDL-C高値(同 0.92、0.83~1.01)やTG高値(同 0.99、0.82~1.21)動脈硬化性疾患による死亡リスクを上昇させなかった

 血液透析患者においてLDL-C値が高いほど生命予後が良いのは、栄養状態の反映と考えられてきたが、LDL-Cが高値であるほど全死亡の他、感染症による死亡が減少しており、Kaysen氏らは「そのことが血液透析患者ではLDL-Cの低下が必ずしも予後の改善につながらないことの理由ではないか」と指摘している。血液透析患者における動脈硬化性疾患ではLDL-Cよりも炎症の関与がより大きく、炎症そのものや細菌性毒素などが炎症を起こすプロセスの抑制がより重要な可能性があるという。