糞便微生物相移植(Fecal Microbiota Transplantation ;FMT)

<反復性のC.difficile感染症(CDI)に対する有効性と安全性が確立>

  2014年9月

Montefiore Medical CenterのOlga C. Aroniadis氏らが従来治療に抵抗性の過敏性腸症候群(IBS)に対するFMTの有効性を検討。その成績を発表した。


登録基準に合致した患者13例のうち. 41項目の質問梨を用いた評価で、9例(70%)にFMT後,症状の寛解あるいは改善が見られた他、腹痛(72%),便通異常(69%),ディスペプシア(67%)、腹部膨満(50%)、放屁(42%)、 QOL(46%)なども改普した。


リリースによると,同氏らの検討ではIBS以外にも潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)に対して有効性が期待できる成績が示されている。


Mayo ClinicのShil Khanna氏らによる,再発性CDI患者を対象とした初の経口微生物相製剤(oralmicrobiome)SER-109の臨床第III相試験。


年齢中央値70歳(22-88歳)の再発性CDI忠者15例を含むシングルアーム・オープンラベルデザインの同薬に関する臨床第I/II相試験の成績が発表された。


抄録によると同薬治療後8週時点で全例がC.difficile陰性化、下痢の消失が認められ、薬剤関連の有害事象はゼロであった。


個々の患者の腸内微生物相のゲノム解析では事前の抗菌薬投与による微生物相の異常(dysbiosis)の改善も認められた。


凍結した便の経口製剤でCDI性下痢が9割解消

MassachusettsGeneral HospitalのIlan Youngster氏らは, 再発を繰り返すClostridium difficile (C. difficile) 感染症(CDI)患者20例に対し、凍結した便のカプセル製剤を経口投与したところ、90%で下痢が解消したとする予備的研究の結果をJAMA(2014年10月11日オンライン版)に発表した。


これまでにも再発性CDIに対し、健康な人の糞便微生物叢を移植する治療法(Fecal Microbiota Transplantation; FMT)が有効であることが報告されていたが、移植手技の煩雑さや安全性への懸念から普及には至らなかった。今回,非血縁ドナーの便微生物叢を用いた経口製剤の有効性が示されたことから,その実用化が近づいた。


なお,この研究結来は米国感染症週間(IDWeek2014. 10月8-12日,フィラデルフィア)でも報告された。


経口カプセルで従来手技の課題を克服

再発を繰り返すCDIは,疾患や死亡の大きな原因となっており,成人・小児ともに世界的に感染者が増加している。標準治療 はメトロニダゾールまたはパンコマイシンの経口投与だが,治療失敗の割合は上昇している。


一方、FMTのCDIに対する有効性を示す複数の研究結果が報告されているが,そのほとんどが血縁ドナーから得た新鮮便の懸濁液を注入する治療法を検討したもので,実用性に問題がある他,安全性も懸念されていた。

こうした障壁を克服するために、今回,入念なスクリーニングを経た健康ドナーからの凍結便製剤をFMTに用いることが検討された。


以前の研究で経鼻胃管を用いた凍結使製剤の投与が大腸内視鏡下での送達と同等に有効であったことから,Youngster氏らは便微生物叢をカプセルに封入し,凍結保存した経口投与が可能な製剤を開発。同製剤投与の安全性と下痢の解消率について検討した。


同氏らは、まずスクリーニングを経た4人の健康ボランティアの糞便からFMTカプセルを製造し、-80℃で保管。同施設において2013年8月-2014年6月に軽度~中等度のCDIエピソードを3回以上経験し、6-8週間のパンコマイシン漸減投与が奏効しないか、もしくは入院を要する重度エピソードを2回以経験している患者20例(年齢中央値64.5歳)に対し、連続する2日間にわたってオープンラベルで同製剤を1日当たり15カプセル投与。症状解消まで追跡するとともに有害事象について6カ月間監視した。


治療に関連した重度の有害事象は認められず

その結果、20例中14例(70%. 95%CI=47-85%)で下痢の臨床的な解消(排便回数が3回/日以下と定義)が得られ, 無症候を8週間維持した。


下痢が解消しなかった6例に対しては初回治療後に再度治療を行ったところ,うち4例で下痢が解消した。

これらを総合すると, 下痢の臨床的解消率は90% (95%CI=68-98%)に達した。


また, 1日の排便回数は投与前の中央値5回〔四分位範囲(IQR)3-6回〕から3日後には2回(同1-3回、

p =0.001). 8週間後には1回(同1-2回. P<0.001)に減少した。

10段階で評価した質問票による全体的およぴ消化管の健康状態も, 投与前 [全体的健康度5 (IQR5-7), 消化管健康度4.5 (同3-7)]に比べて投与後8週時には有意に改善[いずれも8 (同7-9, P =0.001)]した。

なおFMTカプセル投与に関連した重度の有害事象は認められなかった。


この結果を踏まえ, Youngster氏らは「将来, 実薬対照群を用いた研究で確認されれば, より多くの患者により安全にFMTが実施できる可能性がある」と期待を示している。

また. 凍結カプセル製剤の利点について 「ドナーのスクリーニングを投与直前でなく事前に行うことが可能」

「侵襲的な手技が不要となるため,手技に関連した合併症を回避でき,費用も削減できる」ことなどを挙げ

今後長期の安全性と有効性を大規模試験で検討する必要があると述べている。