<母乳哺育>

<要約>

母乳はビタミンK、D、鉄分が足りないことを除けば乳児にとって完璧な栄養源です。

母乳栄養は人工栄養に比べて感染症を少なくとも1/3以下に減らします。

母乳は脳の発達を促します。母乳は乳幼児突然死症候群を減らします。

母乳によって将来の肥満、1型および2型糖尿病、悪性リンパ腫、白血病、ホジキン病、肥満、高脂血症が減ります。

母乳を与えている母親は、閉経後の骨粗鬆症、卵巣癌、乳癌のリスクが減ります。

母親のインフルエンザ、感染性胃腸炎、風疹、ムンプス等殆どのウイルス感染では授乳を続けられます。

むしろ母乳により児を守ることが期待できます。

母親のHIV感染、結核感染、水痘および単純ヘルペス罹患中は原則授乳禁忌です。

帯状疱疹では乳房に発疹がなければ搾母乳は可能です。母親の麻疹罹患、A型肝炎罹患は搾母乳なら可能です。

全ての外用剤と殆どの内服薬は授乳を禁止する理由になりません。

代謝阻害剤、抗ガン剤、麻薬、放射性医薬品は使用期間中のみ授乳禁忌です。

向精神薬、ホルモン剤、スルホンアミド、クロラムフェニコール、テトラサイクリンは授乳注意で、個々に対応します。

アメリカ小児科学会の”AAP policy”を全訳しましたので、ビタミンK、D、鉄分の投与法など詳細をご覧ください。


<人工乳は決して母乳を代用できない>

牛乳をそのまま(成分未調整)滅菌しただけで与えると新生児の多くは死亡します。

この事実は19世紀末に小児科学が内科から分離独立する原因の一つとなりました。

現在では、母乳に近づけるように調製されています。

脂肪については、リノール酸、DHA、アラキドン酸を強化し、

タンパク質については、牛乳は多すぎるため含有量を減らしてあります。

特にカゼインは便を硬くするため量を減らし、非タンパク性窒素を増量しています。

トリプトファンを添加するためαラクトアルブミンを強化してあります。

牛乳は乳糖が少ないため添加し、

ミネラルは牛乳中に多すぎて、新生児や乳児早期には腎臓の負担になるため減量されています。

ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、パントテン酸、ニコチン酸、

葉酸、シスチン、タウリン、鉄、亜鉛、銅等が強化されています。

(母乳中のビタミンB1含有量は十分なので脚気が発生することはまずありません。

 母乳中のビタミンB12含有量は多くありませんが、同時に特異的転送因子が存在するため十分量を吸収することが可能です。)


このように牛乳を母乳に近づける作業をして、新生児が死なないような人工乳が開発されてきました。

しかし後述するように牛乳に感染症を防止する作用はなく、

これを実現する添加物は開発されていませんし、今後も当分不可能と思われます。

また母乳が神経学的発達を促進することが解ってきましたが、その促進させる可能性の候補として

長鎖多価不飽和脂肪酸(特にDHA)、タウリン、リン脂質、ラクトフェリン、成長因子、ホルモン等がありますが、

これらの幾つかを添加しても、母乳の効果にはまだ程遠い状況です。