<急性胃腸炎、嘔吐・下痢・腹痛>

嘔気、嘔吐、下痢、腹痛は漢方の得意分野です。

小児では殆どの嘔気に対して五苓散が有効です。

五苓散と柴苓湯は似た効果の薬剤ですので、安価な五苓散がお勧めです。

五苓散注腸はナウゼリンやプリンペランよりも腸管蠕動運動の改善に優れることが動物実験では示されています。

ウイルスによる小児の嘔気・嘔吐には五苓散が第一選択と考えて良いでしょう。

下痢にも五苓散が有効ですが、乳児の消化不良や腸炎後症候群では

桂枝加芍薬湯、小建中湯、啓脾湯等の方が良い場合もあります。

またガランターゼを使用しないと止まらない下痢もあります。

・562例のウイルス性胃腸炎患児を対象とした症例集積研究。

柴苓湯注腸投与群が86%の有効性、五苓散注腸投与群が85%の有効性で、有意差はなかった。

・211例のウイルス性胃腸炎患児を対象とした五苓散注腸の効果の症例集積研究では、

五苓散注腸による制吐作用の発現は83%であった。

より早期に投与する方が有効性が高かった。

・ロタウイルスもしくはアデノウイルスによる胃腸炎患児84例に対して五苓散注腸を行った症例集積研究では

有効率は85%で、年齢による有効性の違いはなく、年長児でも有効性は高かった。

有効例の85%は投与30分以内に効果発現を認め、特に低年齢層ほど即効性があった。

・プラセボとの比較ではありませんが、五苓散坐薬と補中益気湯坐薬とのRCTによる比較検討では

五苓散坐薬投与群が75%の有効性で、補中益気湯坐薬投与群が28%の有効性と有意差がありました。

・ウイルス性胃腸炎による下痢患者に関して、RCTによって以下の4群に分けた。

(A群)柴苓湯+整腸剤+タンニン酸アルブミン、(B群)柴苓湯単独、(C群)整腸剤+タンニン酸アルブミン、(D群)無治療、

投与初日に、A群がC群に対して有意な改善を示した。

投与2日目には、A群とB群が、C群に対して有意な改善を示した。

脱水のため入院した症例のうち、59%が無治療群(D群)で、整腸剤と止痢剤群(C群)は38%、

柴苓湯単独群(B群)は3%、全て併用の群(A群)は0%であった。

無治療よりは整腸剤使用が望ましく、柴苓湯併用が更に望ましいという結果であった。