コロナ患者の予後が経時的に著明改善

ウイルスによるパンデミックは高病原性株は隔離や死亡によって、淘汰圧が掛かり、逆に低病原性株は隔離をすり抜け、不顕性感染という形で選ばれていきます。歴史的に、必ず宿主にとって病原性が減り、共存するようになります。期間は早ければ1〜2年(スペイン風邪)、長いものでもおそらく10〜20年(潜伏期が長く、遺伝子変異が起こりにくいもの)でしょう。


しかし、全体としては低病原性に変化する方向性の中で、必ず変異はランダムに生まれます。

高病原性株も時には生まれてくるのです。こういった重傷者の隔離はとても重要です。


一人の体内に2種類の株が同時に感染すると重症化することが分かっていますが、体内では隔離政策は取れませんから、2種類ずつ持っているうちの、より増殖に有利な酵素やタンパクが選ばれて利用させるため、この場合は重症化します。


また今年罹患するよりも来年、来年よりも再来年に罹患した方が普通は軽症になるはずです。

SARS-COV2はRNAウイルスという変異の早いグループの中ではRNA修復酵素を持っていて、変異がやや遅い方になります。


従って、やはり普通の季節性コロナウイルスのような感冒になるまでには、3〜5年程度は掛かると(管理者の私見ですが)思っています。

抗体よりも細胞性免疫と自然免疫が重要な疾患なので、毎年罹患するという人は稀でしょうが、今後も3〜5年に1回は流行するような普通の感冒になっていくでしょう。



本当に大切なことは、重傷者を少なく抑えることと、経済死を減らすことの両立です。

感染者数自体は、この2点より劣る統計的要素です。


台湾、中国、ベトナム、タイのようにIT技術や広汎なPCRを使って、クラスターを封じ込めて、多くの人が経済活動できることが理想なのですが、7月下旬時点で、未だに安全でRNA混入のリスクが低いカートリッジ式のPCR機器を使用せず、ピペットを持ってPCRをしている保健所の姿が報道されると愕然とします。


こういったカートリッジ式PCRの機器を作って輸出している会社は日本にはあり、実際に3月頃にはフランスにOEMとして輸出していたそうです。

政治家の科学リテラシーの低さがこの惨状を招いています。

(しかし、ケインズ理論的政策を行っているという点では正しく、マスコミの報道が最も混迷を作り出しています。マスコミが最も、科学も、政治も、経済もリテラシーが低いように思います。)



(※ 以上、管理者注 2020/07/28記載)


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英·University of BristolのRichard A. Armstrong氏らは、アジア、欧州および北米の3大陸から報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の集中治療室(ICU)退出時転帰に関する観察研究24件のシステマチックレビューおよびメタ解析の結果、2020年1~5月にICU生存退室率が著明に改善していることをAnaesthesia(2020年6月30日オンライン版)で発表した。


<ICU退出時転帰を調査>

COVID-19の出現により、世界中で集中治療のニーズが高まっている。しかし、COVID-19でICUに入室した患者の死亡率は不明である。今回の研究では、システマチックレビューとメタ解析を実施し、COVID-19で集中治療を受けた成人患者の死亡率を検討した。

MEDLINE、EMBASE、PubMed およびCochrane Libraryを用いて、2020年1月1日~5月31日に発表された、COVID-19でICUまたは高度治療室に入室した18歳以上の患者のICU死亡率に関する文献を抽出した。主要評価項目は、ICU退出時転帰(生存退室または死亡退出)における死亡率とした。ICUで治療中の生存患者は対象に含まれない。

 欧米とアジアから、COVID-19と診断されICUに入室した患者合計1万150例を含む観察研究24件が特定された。これらの研究の患者数の中央値は30例〔四分位範囲(IQR )19~134例〕。発行日は2020年1月24日~5月29日で、国別件数は中国8件、米国6件、フランス2件、カナダ、デンマーク、オランダ、香港、イタリア、シンガポール、スペインおよび英国が各1件。ICU死亡率は0~84.6%と報告された。


<アジア、欧州、北米で有意差なし>

24件中7件の研究では全対象者のICU転帰を報告していたが、残り17件ではその割合が24.5~97.2%とがさまざまだった。アジア、欧州および北米を統合した全体のICU退出時の死亡率は41.6%(95%CI 34.0~49.7%、 I2 = 93.2%)と推定された。

 大陸別、研究特性(サンプルサイズ、ICU転帰打ち切りなど)によるサブグループ解析では、グループ間で有意差や異質性の大幅な低下はなかった。

 一方、メタ回帰分析では、地理的位置と転帰が報告された患者の割合を調整後も研究報告の発行日が死亡率に有意な影響を与えており、死亡率は経時的に低下した〔1カ月経過するごとの治療効果(ロジット変換確率)-0.62、P=0.01〕。


<死亡率は350%超→5月末40%>

 以上の結果から、Armstrong氏らは「COVID-19患者のICU転帰に関するシステマチックレビューとメタ解析の結果、研究全体のICU死亡率は41.6%で、世界中で差がなかった。また、今年3月に50%を超えていた死亡率は5月末に40%近くまで低下した。臨床報告の迅速な公開により世界中で行われた学習の効果やICU入室基準の変更などが影響したと考えられる。パンデミックの進展に伴い、さまざまな要因が複合的に影響してICUに入室したCOVID-19患者の生存率が大幅に改善した」と述べている。

ICU死亡率は、入室基準、ICUでの治療内容に違いがあったにもかかわらず、大陸間で有意差がなかった。同氏らは「このデータは5月末まで一貫しており、特定の治療法が死亡率を低下させているのではないことを示唆する」とした。

ただし、英国のRECOVERY試験でデキサメタゾンがCOVID-19重症例の死亡を減少させると報告されたことから、同薬による今後の生存率改善に期待を示した。日本でも厚生労働省が7月17日付けで「COVID-19診療の手引き」に承認薬として同薬を記載した。

 同氏らは「将来的には、ICUの転帰データをより体系的手法で収集·報告すること、また集中治療の定義を明確化し、適用された入室基準、入室時の患者の状態および治療内容などを含めた研究を行うことが重要になる」と指摘している。

Outcomes from intensive care in patients with COVID-19:

a systematic review and meta-analysis of observational studies

R A Armstrong , A D Kane , T M Cook

Anaesthesia. 2020 Jun 30. doi: 10.1111/anae.15201. Online ahead of print.


Abstract

The emergence of coronavirus disease 2019 (COVID-19) has led to high demand for intensive care services worldwide. However, the mortality of patients admitted to the intensive care unit (ICU) with COVID-19 is unclear. Here, we perform a systematic review and meta-analysis, in line with PRISMA guidelines, to assess the reported ICU mortality for patients with confirmed COVID-19. We searched MEDLINE, EMBASE, PubMed and Cochrane databases up to 31 May 2020 for studies reporting ICU mortality for adult patients admitted with COVID-19. The primary outcome measure was death in intensive care as a proportion of completed ICU admissions, either through discharge from the ICU or death. The definition thus did not include patients still alive on ICU. Twenty-four observational studies including 10,150 patients were identified from centres across Asia, Europe and North America. In-ICU mortality in reported studies ranged from 0 to 84.6%. Seven studies reported outcome data for all patients. In the remaining studies, the proportion of patients discharged from ICU at the point of reporting varied from 24.5 to 97.2%. In patients with completed ICU admissions with COVID-19 infection, combined ICU mortality (95%CI) was 41.6% (34.0-49.7%), I2 = 93.2%). Sub-group analysis by continent showed that mortality is broadly consistent across the globe. As the pandemic has progressed, the reported mortality rates have fallen from above 50% to close to 40%. The in-ICU mortality from COVID-19 is higher than usually seen in ICU admissions with other viral

pneumonias. Importantly, the mortality from completed episodes of ICU differs considerably from the crude mortality rates in some early reports.


忽那賢志先生が2020/07/26に書いた記事:

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200726-00189953/

についてですが、


1.第1波では診断されていなかった軽症例が診断されている


2.重症者は遅れて増加してくる


3.重症化しやすい年齢層の患者数も、若い年齢層から遅れて増えてきている

(この3.は2.と独立事象ではなく、2.に含まれる部分事象なので、この議論では無意味です。)


という3点から、「新型コロナが弱毒化しているという証拠はない」と主張していますが、これは逆の

「新型コロナが弱毒化していないという証拠はある」と言っているわけではありません。


それどころか、今回のフロリダでは、以下のようにかなり広範囲に高齢者が感染していますが、

患者数は10倍程度に増えても、死者はせいぜい2〜3倍です。2週間のタイムラグの問題があるため、本当は死者のグラフを2週間分右にシフトしないといけませんので、開きは小さくなる可能性はあります。

日本でもECMOは大きく増えていません。

デキザメサゾンと抗凝固療法はかなり有力な治療となるでしょうし、アクテムラも同様でしょう。

実際は重症例に対する治療効果とウイルスの低病原性化を切り分けるのは難しいです。

しかしレムデシビルのEBMはかなり貧弱で、気休めにしかならず、多くの期待された抗ウイルス剤は無効でした。

今の所、軽症→中等症に発展するのを抑制することが最も難しいので、この部分で弱病原性化を見ていくしか方法がないように思います。


(※ 管理者注、2020/07/30記載)