昆虫食は腸内細菌叢を改善する

地球が温暖化している中、今後は食料生産は不安定なものになっていくことが予想される。

日本で暮らしていると渇水は滅多に意識しないが、世界中の多くの土地には水が不足している。

牛肉の生産にも多くの牧草地とそれを養う水が必要である。

それは鶏肉の生産より水やエネルギーのコストが高い。

一方、鶏肉より地球への負荷が低いのは昆虫である。

我々の祖先も400万年以上前に樹上生活から地上に降り立ってから、ホモエレクトスとして捕食者になった180万年前までは木の根や昆虫を食べていたらしい。

進化の歴史や理屈は分かってもなかなか気持ち悪くて食べられないという人も多いと思う。(私も無理です。)

「節足動物だからエビの親戚だ」と思うように頑張ってもなかなか厳しい。

理屈を一つ追加してみたい。

腸内嫌気性菌を増やすのは難消化性糖質である食物繊維セルロースだが、セルロースは小腸の消化酵素では分解されず、大腸に辿り着く。大腸にいる嫌気性菌がセルロースを分解して、酪酸や乳酸等の短鎖脂肪酸を作り出す。この酸性によって腐敗菌である好気性菌を減少させると共に自分たちが生き残るために炎症を抑える物質を合成して、排除されないようにしている。また短鎖脂肪酸は脳や心筋の栄養源になる。

キノコや昆虫が外骨格に持つ、野菜や果物とは違う「キチンナノファイバー」という繊維はセルロースと似たムコ多糖類で、分解によって二糖類やオリゴ糖が生成される。(セルロースとキチンは六員環の2位炭素の水酸基→アセトアミド基に置換されたものでかなり似ている。)

NatureのScientific Reportsにコオロギ粉入り朝食によって腸内の善玉菌であるビフィズス菌(Bifidobacterium animalis)が増え、TNF-αという炎症性サイトカインが減ることが報告された。

さあ、これで食べることができるでしょうか?

まずはエビやカニの外骨格を粉砕してシェイクやふりかけにしてもタンパクは摂れませんが、腸内細菌叢を改善させるはずです。

(2021/08/07 管理者記載)

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<概要>

高タンパクレベルに加えて、コオロギには腸の健康に影響を与える可能性のあるキチンやその他の繊維が含まれています。この研究では、安全性と耐容性を評価しながら、25グラム/日のコオロギ粉末の摂取が腸内細菌叢の組成に及ぼす影響を評価しました。 20人の健康な成人がこの6週間の二重盲検クロスオーバー食事療法に参加しました。

参加者はランダムに2つの群に分けられ、朝食としてマフィンと、コオロギ粉入りシェイクもしくは対照としての通常のシェイクを14日間摂取した後、インターバル後に反対の朝食に割り当てられました。肝機能と微生物叢の変化を評価するために、ベースライン時と各治療期間後に血液と糞便のサンプルを収集しました。

<結果>

コオロギ粉入り朝食を食べることが無害であり、体調不良は増えなかった。

コオロギの粉は、プロバイオティクス細菌を増加させ、特にビフィズス菌は5.7倍に増えました。コオロギ粉入り朝食は、血漿TNF-αの低下とも関連していました。これらのデータは、コオロギを食べると腸の健康が改善され、全身性炎症が軽減される可能性があることを示唆しています。


Impact of Edible Cricket Consumption on Gut Microbiota in Healthy Adults, a Double-blind, Randomized Crossover Trial


Valerie J. Stull, Elijah Finer, Rachel S. Bergmans, Hallie P. Febvre, Colin Longhurst, Daniel K. Manter, Jonathan A. Patz & Tiffany L. Weir


Scientific Reports volume 8, Article number: 10762 (2018)

https://www.nature.com/articles/s41598-018-29032-2


Abstract

Edible insects are often considered a nutritious, protein-rich, environmentally sustainable alternative to traditional livestock with growing popularity among North American consumers. While the nutrient composition of several insects is characterized, all potential health impacts have not been evaluated. In addition to high protein levels, crickets contain chitin and other fibers that may influence gut health. In this study, we evaluated the effects of consuming 25 grams/day whole cricket powder on gut microbiota composition, while assessing safety and tolerability. Twenty healthy adults participated in this six-week, double-blind, crossover dietary intervention. Participants were randomized into two study arms and consumed either cricket-containing or control breakfast foods for 14 days, followed by a washout period and assignment to the opposite treatment. Blood and stool samples were collected at baseline and after each treatment period to assess liver function and microbiota changes. Results demonstrate cricket consumption is tolerable and non-toxic at the studied dose. Cricket powder supported growth of the probiotic bacterium, Bifidobacterium animalis, which increased 5.7-fold. Cricket consumption was also associated with reduced plasma TNF-α. These data suggest that eating crickets may improve gut health and reduce systemic inflammation; however, more research is needed to understand these effects and underlying mechanisms.