授乳と薬剤-総論

総じて言うと、

1.代謝拮抗剤(抗腫瘍剤)

2.放射性同位元素

3.ホルモン剤

4.向精神薬

のグループを除き、授乳を止める必要は全くない。副作用どころか、作用すら出ない

これらのグループの中にも授乳を続けられるものが多く存在する。

抗生剤、鎮咳剤、去痰剤、解熱鎮痛剤も一切授乳を止める必要はない。

日本では多くの薬剤が、「授乳中止」や「授乳を避ける」と記載されているため、

小児科医や産婦人科医以外の医師、例えば内科医が授乳婦に投薬すると「授乳を止めてくださいね。」と言われてしまう。

しかし近年、母乳の長所が毎年のように報告され続けており、

人工乳に比べて、母乳栄養児は感染症に罹患するリスクが1/3~1/4に減少する。

認知機能の改善作用や、1型糖尿病のリスクを下げたり、悪性リンパ腫のリスクを減らしたりと

生涯に渡って大きな利点をもたらす。

母乳は治療薬であり、予防薬である。

この優れた母乳という”薬”を手放さないといけないような薬は殆ど無いのである。

まず、殆どの外用薬と吸入薬は安全である。

内服薬は母乳中にどの程度分泌されるかで評価する。

Relative infant dose (RID) = infant dose (mg/kg/day) / Maternal dose (mg/kg/day)

殆どの薬剤は母乳中に移行するが、一般的に1%以下のものが多い

Relative infant dose > 10%の場合は、level of concern の状態と言える。

(Bennett PN: Drugs and human lactation, 2nd ed., Elsevier, Amsterdam, 1996.)


≪児/母体摂取(RID)が5%を超える薬剤≫

AAPの授乳中の薬剤に関するガイドライン

Pediatrics Vol.108 No.3 September 2001 , pp.776-789

AAP: the transfer of drugs and other chemicals into human milk committee on drugs.

http://aappolicy.aappublications.org/cgi/content/full/pediatrics%3b108/3/776

(Googleで、「drug human milk」で検索すればこのサイトがトップに表示される。)


授乳中に使える主要な薬剤例

<抗菌薬>

セフェム系

ペニシリン系

マクロライド系

クリンダマイシン

ストレプトマイシン

カナマイシン

テトラサイクリン

抗ウイルス剤>

アシクロビル

<抗結核薬>

抗結核剤 エタンブトール

リファンピシン

イソニアジド

解熱鎮痛剤>

アセトアミノフェン

インドメタシン

イブプロフェン

ピロキシカム

降圧剤・利尿剤>

ヒドララジン

カプトリル

メチルドーパ

ニフェジピン

スピロノラクトン

ベラパミル

プロプラノロール

抗ガン剤>

シスプラチン

強心剤>

ジゴキシン

副腎皮質ホルモン>

プレドニン

抗甲状腺剤>

PTU

メチマゾール

抗凝固剤>

ワーファリン

緩下剤>

センナ