アトピー性皮膚炎ガイドラインを超えて

以下の文章は、2015年8月に書きましたが、2018年に日本皮膚科学会のガイドラインと、日本アレルギー学会のガイドラインが統合されました。それまでは薬剤の止め方について書かれておらず、読んでも止め方が分からないというガイドラインだったため、色々調べて結論を出しました。

ステロイドの間欠塗布に関する文献を教えてくださった成育医療センターの大矢先生と、ステロイド外用剤の細かい副作用について教えてくださった逓信病院の大谷先生に感謝します。

2015年8月時点で、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎ガイドラインには致命的な欠陥があります。

まだ、日本アレルギー学会によるガイドラインの方が良い。

しかしどちらもまだ完成形とは言えず、分かっていないことを、分かっている少ない事実から類推する作業が必要です。

まず、アトピー性皮膚炎の治療の目的を列挙しましょう。

1.将来のアレルギーマーチを予防する。

湿疹のコントロールによる経皮感作の防止。

2.失明させない。

3.ステロイドによる皮膚線条菲薄化を起こさせない。

毛細血管拡張、多毛、カンジダ、座瘡は重要な問題では無い。

皮膚線状以外は治るからである。

4.顔、首の露出部を改善し、自尊心を保つ。

5.副腎不全を起こさせない。

毎日、長期に投与したステロイド外用を突然止めると、起きる。

短期間の投与であれば、突然止めても副腎不全は起きない。)

皮膚科学会のガイドラインには、食物アレルギーや経皮感作の概念が欠落していることが致命的です。

次は治療法です。

1.保湿

2.ステロイド外用

3.タクロリムス(プロトピック)外用

4.汗の管理。特に夏季はシャワー

5.温度管理

6.漢方薬

7.抗ヒスタミン剤

今回は、6.7.については割愛し、3.4.5.は軽くコメントする程度にして、主に1.2,について説明します。

≪炎症のある部位が、食物感作の主な場所である≫

Lack先生らは経皮感作について幾つか論文を発表しています。

「アレルゲンへの経口曝露は経口免疫寛容を誘導するのに対し、

経皮曝露はTh1/2バランスをTh2にシフトさせ感作が成立させる。」

Lack G: J Allergy Clin Immunol 121 (6),1331 (2008)

(※筆者注)

後述しますが、大まかな傾向として、皮膚からは感作が起きやすく、消化管からは寛容が起きやすいと言えます。しかし、経口投与は何でも免疫寛容を起こし、経皮投与は何でも感作を起こすわけではありません。

2014年の時点で、抗原の染み込んだパッチを皮膚に貼付して、寛容が起きるという事実も確認されています。

「卵白IgE陽性は、AD患者ではコントロール群と比べてオッズ比で2.86だった。(95% CI, 2.2-6.73)

卵白IgE陽性は、湿疹がある患者ではコントロール群と比べてオッズ比で3.73だった。(95% CI, 1.49-9.36)」

Matsumoto K, Saito H, Allergol. Int. 2013: 62; 291-6

Epicutaneous immunuity and onset of allergic diseases: Pereczematous sensitization drives the allergy march.

Senti G. at al, J. Allergy Clin Immunol. 2009: 124: 997-1002.

Epicutaneous allergen administration as a novel method of allergen-specific immunotherapy.

「多重ロジスティック回帰分析で,1歳時の卵白抗原感作に影響する因子を解析したところ、

生後6ヵ月までの顔面の乳児湿疹、母親のアレルギー歴、母乳栄養、

生後6ヵ月時の顔面の黄色ブドウ球菌保菌が影響することが明らかになり、

乳児湿疹を介した卵白抗原の経皮感作が示唆された。」

中野泰至ほか。アレルギー 62(9-10),1336(2013)

また興味深い論文があって、人ではなく、ヌードマウスの実験なのですが、

コレラの毒素を混ぜた餌を与えたマウスのグループと、混ぜていないマウスのグループを一定期間飼育します。コレラの毒素を混ぜたマウスの群だけ胃腸炎を起こして、下痢します。

その後、両群にコレラの毒素を混ぜずに、餌の種類を変えて、再び一定期間飼育します。

そして、もう一度、最初に与えていた餌を両群ともコレラの毒素を入れずに与えます。

そうすると、コレラの毒素が入っていた群は、今度はコレラの毒素が入っていないにもかかわらず、下痢や膨疹が出現します。

これは、「炎症のある場所にあったタンパク抗原に感作されて、食物アレルギーを発症した」と解釈できます。

「118名の新生児を59名ずつ

The mean daily amount of emulsion-type moisturizer used by the intervention group was

7.86±4.34g, (0g for control group)

The mean daily amount of petroleum jelly applied to the control group was 0.10±0.286g

(mean frequency of use, 0.235 d/wk).

32週間観察。(10週目ぐらいから差が開いてくる。)

AD/湿疹の発症率は、ハザード比で0.48 (95% CI=0.27-0.86)

卵白とオボムコイドのCAP-FEIA値は両群で有意差が出なかった。

頬部の黄色ブドウ球菌の保持率にも有意差が出なかった。」

Ohya Y. et al. J Allergy Clin. Immunol. vol.134, tigtugi4. OCTOBER 2014

Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis

この論文で使われているのは、2eという市販の乳液タイプの保湿剤で、塗っている量はわずか1日8g足らずで、軟膏タイプの保湿剤はわずか0.1g程度しか使われておらず、たった毎日8gの保湿剤でアトピー性皮膚炎の発症が3割以上減少していることに驚きます。

おまけですが、

「最近では角質細胞間脂質と同様の成分を配合したバリアリペアクリームや

フィラグリンの代謝産物であるウロカニン酸を配合したクリームの有効性が報告されている。」

Sugarman JL. et al. J.Drugs Dermatol 8(12), 1106 (2009)

Miller DW. et al. : J Drugs Dermatol 10(5), 531 (2011)

Lowe AJ. et al. :BMC Dermatol. 12, 3(2012)

Peltonen JM. et al :Acta Derm Venereol. 94 (4), 415 (2014)

以上、スキンケアによって経皮感作を防ぐことで、将来のアトピー発症が減ること、また一旦、アトピー性皮膚炎を発症すると、食物アレルギーのリスクが高まることを見てきました。

≪ステロイド外用剤≫

これは日本皮膚科学会のガイドラインにもあるように非常に有効な治療方法です。

しかし、80年代にマスコミにステロイド外用治療が叩かれて、ステロイド忌避の保護者が増えてしまい、本来であれば、幼児期に軽快するはずの湿疹がアトピーまで移行したり、軽度で済むはずのアトピーが重症になったりという症例が多数出ました。

~~phobia(~恐怖症)という言葉は本来は、”不安障害”という精神疾患の一部で、SSRIや認知行動療法が有効なのですが、詳しいことは割愛します。

くSteroidphobia>

アトピー患者の親の 38.7%に Steroidphobiaが認められた。

1.患者が女児。 Odds ratio=1.85 (p=0.05)

2. 父のアトピー既往。 odds ratio=1.94(p=0.03)

3.頻回に受診先を変える。 odds ratio=1.25(p=0.03)

(皮疹の重症度と関係ない!)

• Kojima R.et al,Pediatr Dermatol.Vol.30 No.1 29-35, 2013

Factors associated with steroid phobia in caregivers of children with atopic dermatitis. Pediatr Dermatol 30(1) Page:29-35(2013.1)


<ステロイドのRankについて>

≪Merck manual≫ (アメリカのランク)

class I

0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾン軟膏 Diprolene

0.05%プロピオン酸クロベタゾールクリームまたは軟膏 Temovate

0.05%二酢酸ジフロラゾン軟膏 Psorcon

0.05%プロピオン酸ハロベタゾールクリームまたは軟膏 Ultravate

class II

0.1%アムシノニド軟膏 Cyclocort

0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾンクリーム Diprolene AF,Maxivate

0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾン軟膏 Diprosone,Maxivate

デソキシメタゾン0.25%クリーム,0.05%ゲル,0.25%軟膏 Topicort

0.05%二酢酸ジフロラゾン軟膏 Florone,Maxiflor

0.05%フルオシノニドクリーム, ゲル, 軟膏, ソルーション Lidex

0.1%ハルシノニドクリーム Halog

0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏 Elocon

class III

0.1%アムシノニドクリームまたはローション Cyclocort

0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾンクリーム Diprosone

0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾンローション Maxivate

0.1%吉草酸ベタメタゾン軟膏 Valisone

0.05%デソキシメタゾンクリーム Topicort LP

0.05%二酢酸ジフロラゾンクリーム Florone,Maxiflor

0.05%フルオシノニドクリーム Lidex E

0.005%プロピオン酸フルチカゾン軟膏 Cutivate

0.1%ハルシノニド軟膏またはソルーション Halog

0.1%トリアムシノロン-アセトニド軟膏 Aristocort A

class IV

0.025%フルオシノニド-アセトニド軟膏 Synalar

0.05%フルランドレノリド軟膏 Cordran

0.1%フランカルボン酸モメタゾンクリームまたはローション Elocon

0.1%トリアムシノロン-アセトニド軟膏 Aristocort,Kenalog

0.1%トリアムシノロン-アセトニドクリーム Kenalog

class V

0.1%吉草酸ベタメタゾンクリーム Valisone

0.05%デソニド軟膏 Tridesilon

0.025%フルオシノロン-アセトニドクリーム Synalar

0.05%フルランドレノリドクリーム Cordran

0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム Cutivate

0.1%酪酸ヒドロコルチゾンクリーム, 軟膏, またはソルーション Locoid

0.2%吉草酸ヒドロコルチゾンクリームまたは軟膏 Westcort

トリアムシノロン-アセトニド0.1%ローションまたは0.025%軟膏 Kenalog

class VI

0.05%ジプロピオン酸アルクロメタゾンクリームまたは軟膏 Aclovate

0.1%吉草酸ベタメタゾンローション Valisone

0.05%デソニドクリーム Tridesilon

0.01%フルオシノニド-アセトニドクリームまたはソルーション Synalar

0.03%ピバル酸フルメタゾンクリーム Locorten

0.1%トリアムシノロン-アセトニドクリーム Aristocort

0.025%トリアムシノロン-アセトニドクリームまたはローション Kenalog

class VII

ヒドロコルチゾン1%または2.5%クリーム,1%または2.5%ローション,1%または2.5%軟膏 Hytone

酢酸ヒドロコルチゾン (1%または2.5%クリーム,1%または2.5%ローション,1%または2.5%軟膏) と

1%塩酸プラモキシンの合剤 Pramosone


≪日本では≫

断片的なDB-RCTと血管収縮試験によって決まった。

EBMとしては弱いランク分けです。

1群>

0.05% clobetasol-17-propionate(17-プロピオン酸クロベタゾール) デルモベート

0.05% 17, 21-ジプロピオン酸べタメタゾン ジフラール・ダイアコート

2群>

0.05% フルオシノニド トプシム

0.064% 17, 21-ジプロピオン酸ベタメタゾン リンデロンDP

0.05% ジフルプレドナート マイザー

0.1% アムシノニド ビスダーム

0.1% 21-吉草酸ジフルコルトロン ネリゾナ

0.1% 17-酪酸, 21-プロピオン酸ヒドロコルチゾン パンデル

0.1% フランカルボン酸モメタゾン フルメタ

0.05% 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン アンテベート

3群>

0.1% 17, 21-ジプロピオン酸デキサメタゾン メサデルム

0.12% 17-吉草酸デキサメタゾン ボアラ

0.1% ハルシノニド アドコルチン

0.12% betamethasone-17-valerate(17-吉草酸ベタメタゾン) リンデロンV

0.025% 17, 21-ジプロピオン酸ベクロメタゾン プロパデルム

0.025% フルオシノロンアセトニド フルコート

4群>

0.3% 17-吉草酸, 21-酢酸プレドニゾロン リドメックス

0.1% triamcinolone acetonide(トリアムシノロンアセトニド) ケナコルトA

0.02% ピバル酸フルメタゾン ロコルテン

0.05% 17-酪酸クロベタゾン キンダベート

0.1% プロピオン酸アルクロメタゾン アルメタ

0.1% 17-酪酸ヒドロコルチゾン ロコイド

0.1% デキサメタゾン デカダーム

5群>

0.5% メチルプレドニゾロン メドロール

0.5% プレドニゾロン プレドニゾロン

1% 酪酸ヒドロコルチゾン コルテス

≪ステロイドの局所作用の強さ≫

<1群>

0.05% clobetasol-17-propionate(17-プロピオン酸クロベタゾール) デルモベート

<2群>

0.064% 17, 21-ジプロピオン酸ベタメタゾン リンデロンDP

0.05% 17, 21-ジプロピオン酸べタメタゾン ジフラール・ダイアコート

0.05% ジフルプレドネート マイザー

0.05% 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン アンテベート

<3群>

0.1% 17, 21-ジプロピオン酸デキサメタゾン メサデルム

0.12% 17-吉草酸デキサメタゾン ボアラ

0.12% betamethasone-17-valerate(17-吉草酸ベタメタゾン) リンデロンV

0.1% 17-酪酸, 21-プロピオン酸ヒドロコルチゾン パンデル

0.025% 17, 21-ジプロピオン酸ベクロメタゾン プロパデルム

0.1% 17-酪酸ヒドロコルチゾン ロコイド

0.1% プロピオン酸アルクロメタゾン アルメタ

<4群>

0.1% 21-吉草酸ジフルコルトロン ネリゾナ

<5群>

0.05% 17-酪酸クロベタゾン キンダベート

0.3% 17-吉草酸, 21-酢酸プレドニゾロン リドメックス

≪ステロイドの副腎抑制作用の強さ≫

<1群>

0.05% clobetasol-17-propionate(17-プロピオン酸クロベタゾール) デルモベート

0.05% 17, 21-ジプロピオン酸べタメタゾン ジフラール・ダイアコート

<2群>

0.064% 17, 21-ジプロピオン酸ベタメタゾン リンデロンDP

0.1% ハルシノニド アドコルチン

0.1% 21-吉草酸ジフルコルトロン ネリゾナ

<3群>

0.05% フルオシノニド トプシム

0.12% betamethasone-17-valerate(17-吉草酸ベタメタゾン) リンデロンV

0.12% 17-吉草酸デキサメタゾン ボアラ

0.05% 酪酸プロピオン酸ベタメタゾン アンテベート

0.1% 17-酪酸, 21-プロピオン酸ヒドロコルチゾン パンデル

<4群>

0.025% 17, 21-ジプロピオン酸ベクロメタゾン プロパデルム

0.1% 17-酪酸ヒドロコルチゾン ロコイド

0.3% 17-吉草酸, 21-酢酸プレドニゾロン リドメックス

<5群>

0.1% プロピオン酸アルクロメタゾン アルメタ

0.05% 17-酪酸クロベタゾン キンダベート

Frosch et al. ジューリング・チェンバー法で測定

武田他 シリコンレプリカ写真及びSUMP方レプリカ写真にて測定

このように、分類は評価方法によって様々です。

≪ステロイド外用で副腎抑制は起きるか?≫

乾癬では大量長期投与になるため、実際に副腎抑制が起きている。

アトピーではデルモベート(1群)を乳児の顔3ヶ月以上毎日塗布して、成長障害やムーンフェイスが起きた症例がある。

アトピー患者では、ODT(密封療法)糜爛面粘膜に大量投与した場合に起きる。

顔や陰部にも長期に渡って毎日塗布した後に、突然中止すると副腎不全が起きることがあるが、極めて稀である。

止めるときは1〜2週間毎に漸減する。

漸減の方法は、弱いステロイドに換えていく方法(A)と、塗る日を間延びさせる方法がある。

更に間延びさせる方法には、

(B) 1日塗って、数日空ける方法と、

(C) 数日連続で塗って、数日連続で空ける方法がある。

<例>

A. 2群を毎日塗布⇨3群毎日⇨4群毎日⇨中止(この方法にはエビデンスが乏しく推奨しない)

B.2群を毎日⇨2群を隔日塗布⇨2群を3日に1回塗布⇨(途中省略)⇨2群を週に1回⇨中止

C.2群を毎日⇨2群を4日連日塗布、3日休薬⇨2群を2日連続塗布、5日休薬⇨中止


<どれぐらい塗ったら副腎抑制が起きるか?>

「リンデロンVの密封外用 10g/day、単純塗布 20g/day副腎抑制を起こす。

デルモベート10g/day塗布=リンデロン 1Tab 内服相当。

デルモベート 40g/day 塗布=リンデロン 2Tab 内服相当

通常の外用 (30g/週)で殆どの患者で副腎抑制は生じない

島雄 周平 西日皮膚 40; 5-24, 1978

<どうやって塗るか?>

ネフローゼではPSL5mgでも成長抑制とムーンフェイスが起きる

全身投与の場合、3日間のステロイドパルスでは副作用は高血圧と高血糖ぐらいしか起きない。

少量長期投与より大量短期投与の方が安全!

副腎機能を取り戻す時間が大切。

<外用でも静注と同じようにパルス的投与は安全か?>


「・ロコイド(4群)1日2回 外用群(N=104)

→ 18週間塗布で萎縮なし(USTで評価)。

・リンデロンV(3群) 週に3回外用群(N=103)

→ 18週間塗布で萎縮なし(USTで評価)。

⇒ 効果に有意差無し。」

Thomas KS, Armstrong S, BMJ 2002, 324 (7340) 768


「Fulticasone propionate 0.005%(2群:very strong)を

1日1回、 2週間毎日塗布。

→ 1日1回、週に4日連続塗布を 2週間。

→ 1日1回、週に2日連続塗布、5日間保湿で維持する。

週2回の間欠塗布群のADの再燃は25%程度。

対照群の75%以上が再燃。有意差あり。

最終的に皮膚萎縮なし。(USTとBoipsyで評価)

血中コルチゾールも16週間では対照群と有意差無し。」

Van Der Meer JB, Br. J. Dermatol. 1999, 140; 1114-1121


「1群(strongest class)を1日2回、1週間毎日塗布→局所的副作用が現れることあり

→副作用は外用中止後3-4週間で回復

2群(very strong class)を1日2回、3週間毎日塗布→局所的副作用が現れることあり

→副作用は外用中止後 3-4週間で回復

4群(mild class)を1日2回、 6週間毎日塗布→全例で局所的副作用は現れない。」

「デルモベートは6週間毎日2回前腕部に塗布すると表皮が2割程度薄くなった。

リンデロン6週間毎日塗布で表皮が1割薄くなった。

プレドニン6週間毎日塗布では皮膚はわずかに薄くなったが、

全てのステロイド群も2週間では薄くならず

いずれの群も中止後、5週間で厚さは戻った

Korting HC. Eur J. Clin. Pharmacol. 1992, 42(2) 159-161


6週間毎日のリンデロンV塗布では表皮が2割薄くなった。有意差あり。

プレドニンでは有意差は出なかった。

Kerscher MJ, Acta Dermatol. 1992, 72(3) 214-216


デルモベート軟膏6週間毎日塗布で表皮が25%菲薄化した。

デルモベートクリームでは1週間2割菲薄化

有意差あり。

Kerscher MJ, Korting HC, Skin Pharmacol. 1992, 5(2)77-80


フルメタ(2群)6週間毎日塗布は、ヒドロコルチゾン系(3群)やプレドニン系(5群)と同様に

コントロール群より1割近く薄くなったが、

有意差は無かった。

中止後、3週間でコントロール群と同程度の厚さに戻った。

Kerscher MJ, Korting HC, Int J. Clin. Pharmacol. 1995;33,187-189


生後6ヶ月〜12歳までの重症AD患児に対し、

6週間フルメタ or ロコイドを毎日2回塗布。

フルメタ群(2群)では副作用はなく、

ロコイド群(4群)で1例のみ、投与1週間目の時点で

血中コルチゾールの一過性低下があった。

(Single blind test)

6週間で副作用なし

Vernon at al,

眼瞼への塗布は原則OK

AD患者では緑内障による失明よりも、

掻爬による網膜剥離で失明する方が遙かに多い。

成人では眼瞼に湿疹があるアトピー患者の5%が実際に網膜剥離を起こし、

50%に眼底検査で網膜剥離徴候がある。

網膜剥離や自尊心を保つために眼瞼に塗ることは重要。

可能ならプロトピックに移行する。プロトピックは3群程度の抗炎症作用があり、皮膚線条や緑内障が起きない

目に入っても眼圧上昇が起きない。最初の1~2週間は火照ることに注意する。

プロトピックをステロイドを塗布しない日に塗ってステロイド塗布の頻度を減らす。

ステロイド間欠塗布に持ち込めないときは半年~1年毎に眼科を受診させる。

(※2021年4月からコレクチム軟膏(JAK阻害剤)という緑内障や皮膚線状が起きない外用薬が2歳以上に対して使用可能になった。)

陰部にも塗って良い

上腕に比べて顔は13倍陰嚢や大陰唇は40~60倍吸収が良い。

これが原因で、日本皮膚科学会のガイドラインでは乳幼児の顔に塗らないように推奨されている。

しかし乳児は顔だけに湿疹が出る者も多く、経皮感作が起きてしまう。

⇒ カンジダや皮膚線状に注意しながら、塗布することは必要。

炎症の程度と期間に比例して感作が起きるので、できるだけ短期間で炎症を抑えることが必要。

粘膜や面状の傷には原則不可。線状の傷には塗布可

粘膜や糜爛からは5.6時間で78%が吸収される。

つまり陰茎、陰嚢、大陰唇までは塗布可能。

原則、小陰唇より内部、亀頭には不可。

仮性包茎でリンデロンの副作用を利用して、

皮膚を菲薄化させて剥く。

ケナログも粘膜に使用しているが、短期だから副作用は起きない。

<実際にどれを塗ったら良いの?>

アンテベートプロパデルムは血中で速やかに代謝されて、失活するため副作用についてランクを1つ下げて考えるべき

ステロイドは4倍希釈まで力価が下がらない

基剤によっては浸透性が増し、力価が上がることもある。

半年ぐらいで失活する物もあるので 混合外用は2ヶ月ぐらいで使い切るように指示する。


[基材について]

ワセリン⇒ プロペト⇒ サンホワイトの順に精製して不純物を減らしてある。

アンテベートキンダベートロコイドは基剤がサンホワイト

⇒ ワセリンやプロペトで割ることは(量を稼ぐ以外の目的では)無益。


3群以上では、1日1回塗布と2回塗布で効果に有意差無し

アンテベート、プロパデルム、キンダベート、プロトピックがあればAD治療は十分。

ランクを下げるより間隔を延ばす

フルメタ、アルメタ、リドメックスも安全。

リンデロンVは副作用が多い。

ロコイドは4群だと安心して、ダラダラ使うので副作用が多い。

私自身、入院患者にロコイドを毎日塗布させて、3週間でカンジダだらけにしたことがあります。

何群であるかは結構適当なものです。それよりも個々のステロイドの副作用を知ることが重要です。

虫刺され

蚊の唾液タンパクに対するアレルギー反応

1型反応は5〜10分

4型反応は48時間

つまり72時間程度、抑え込めばかなり楽になるはず!

初日の冷却デルモベート3日間、アレロック3日間

その後も痒かったら4日目からアンテベートに変更

汗の管理

夏は汗を頻回にシャワーで流しましょう。

清拭は乳児の場合、擦ることで悪化させることがあり、洗った方が良いです。

エアコン

気温25℃湿度40〜60%が最も快適です。特に湿度60%を越えると発汗します。

人間は熱帯に住む猿でしたが、400万年前から発汗しながら草原を走るようになり、特に200万年前から6万年前までアフリカの草原を走っていました。

高い湿度の地域に適応するには、6万年は少し短過ぎます。

(一方、寒冷地適応は、ネアンデルタール人の遺伝子を取り込んで、比較的早く起きたと言われています。)

汗疹の多い人は夜間湿度60%以下(気温25℃より大事!)を目標に下げましょう。