瞑想で子どもの睡眠が改善
Mindfulness(瞑想)は昔から禅宗で行われていて、その有用性を報告しているものは多い。
瞑想状態に入るとα波優位になり、Default mode network が活性化される。前頭葉と後頭葉を繋ぐDefault mode networkが活性化されると、普段接続されていない脳の部位が繋がり、閃きやアイディアが浮かぶという。
山中先生がiPS細胞のアイディアを思い付いたのは、リラックスした入浴中だった。コンピュータや原爆を作り、量子力学の数学的基礎付けを与えたvon Neumannがシャワーを浴びている最中に論文を思い付いたりと、α波優位のときにアイディアが浮かんだというエピソードは世界中に溢れている。
またリラックスした状態の脳波が持続することは交感神経と副交感神経のバランスを調整する。
興奮した状態:ノルアドレナリンやドーパミンが多く出ている状態では覚醒状態になり、入眠が困難になる。セロトニンが増えた状態では逆に入眠は容易になる。
修行を積んだ禅僧は目を閉じた瞬間から即座にα波が出るようだが、一般人には難しかった。
しかし「無」になろうとするのでは無く、AppleWatchのアプリを利用したり、自分の呼吸に集中して深呼吸してみたり、散歩しているときに自分の左右の足に交互に意識を集中してみたり、拭き掃除などの単純作業を黙々としてみたりすることで、Default mode networkが活性化される可能性がある。
1日30分の運動と30分の瞑想は長い人生では長寿や睡眠の安定や心の安定をもたらす可能性がある。
(2021/07/29 管理者記載)
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学校がマインドフルネスを学ぶカリキュラムを組んで、深呼吸やヨガなどを教えると、睡眠時間が増え、睡眠の質も高まる可能性があるとする研究結果が報告された。米スタンフォード大学医学部のChristina Chick氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Sleep Medicine」に2021/07/06に掲載された。
この研究は、サンフランシスコ·ベイエリアの主にヒスパニック系から成る2つの低所得コミュニティに住む子ども115人(8~11歳、女児49人)を対象にしたもの。どちらのコミュニティも治安が悪く、住んでいる人たちは食料不安や過密で不安定な住環境によるストレスを抱えている。「こうした住環境の条件は、睡眠に悪影響を及ぼす」と研究グループは説明する。
1つ目のコミュニティの子ども(58人)は、マインドフルネスのカリキュラムで週に2回、2年にわたって授業を受けた(介入群)。このカリキュラムでは、今この瞬間に注意を向けるマインドフルネスのトレーニングや、ゆっくりとした深呼吸やヨガをベースにした動きの練習、ストレスに関する教育などが行われた。もう一つのコミュニティの子ども(57人)は、マインドフルネスのカリキュラムの代わりに通常の体育の授業を受ける対照群とした。全ての子どもに対して、試験開始時(カリキュラム開始前)とカリキュラム開始から1年後と2年後に、睡眠ポリグラフ検査により夜間の睡眠状態を調べるとともに、対象者自身が感じているストレスレベルについても評価した。
研究開始時点では、理由は不明だが、介入群よりも対照群の方が一晩当たりの睡眠時間が平均54分(対照群7.5時間、介入群6.6時間)、REM睡眠の時間が平均15分長かった。ところが、2年間の研究期間の間に、両群の睡眠パターンは変化していき、睡眠時間が、対照群では平均64分短くなったのに対して、介入群では平均74分も長くなっていた。また、REM睡眠についても、対照群では試験開始時から変化が見られなかったのに対して、介入群では24分増えていた。
Chick氏は、「われわれは、マインドフルネスによる介入が役立つだろうと考えてはいたが、これほど大きな効果が得られたことに感銘を受けた」と話す。
Chick氏らは、子どもたちの睡眠の改善は、ストレスが軽減したためだと考えていた。しかし、対象者の中で睡眠時間が最も伸びた子どもでは、同時にストレスも増えていたことが判明した。この点について同氏らは、授業を通じてストレスについての理解が深まったことが関係しているのではないかと推測している。
この研究には関与していない、ワシントン大学の小児·思春期医学分野のCora Breuner氏は、「子どもの成長にとって睡眠は欠かせず、睡眠がこれほど重要になる年代は他にはない。ニューロンの再生や、日中に経験した活動やストレッサーからの体の回復などは睡眠中になされるからだ」と子どもにとっての睡眠の重要性を強調する。その上で、「何らかのスキルにより自分の内面に集中できるようになると、自分が元来持っている力で眠りにつくことができるようになる」と話している。
Chick氏らは今後、教師が同様のカリキュラムを計画するのを支援するなどして、得られた知見を広めたいと考えている。また、カリキュラムの構成要素、例えばゆっくりとした深呼吸を促す運動などを行うことにより、体の機能がどのように変化して、それが睡眠の改善につながるのかを解明していきたいとしている。
A school-based health and mindfulness curriculum improves children's objectively measured sleep: a prospective observational cohort study.
Christina F Chick, Anisha Singh, Lauren A Anker, Casey Buck, Makoto Kawai, Christine Gould, Isabelle Cotto, Logan Schneider, Omer Linkovski, Rosy Karna, Sophia Pirog, Kai Parker-Fong, Christian R Nolan, Deanna N Shinsky, Priyanka N Hiteshi, Oscar Leyva, Brenda Flores, Ryan Matlow, Travis Bradley, Josh Jordan, Victor Carrion, Ruth O'Hara
Journal of clinical sleep medicine :
official publication of the American Academy of Sleep Medicine. 2021 Jul 06; doi: 10.5664/jcsm.9508.
Abstract
STUDY OBJECTIVES :
Poor sleep impedes children's cognitive, emotional, and psychosocial development. Pediatric sleep dysregulation is common, and children who live in communities of low socioeconomic status (SES) experience additional risk factors for short sleep duration and poor sleep quality. School-based training in mindfulness and yoga-informed practices can improve children's behavior and well-being, but effects on objectively measured sleep are unknown.
METHODS :
Effects of a school-based health and mindfulness curriculum, which taught practices such as paced breathing, on sleep and stress were examined in 115 children (49 girls, ages eight to 11 at baseline). 58 children in a community of low socioeconomic status (SES) received the curriculum twice weekly for two years. 57 children in an SES-matched community engaged in their usual physical education class instead. In-home ambulatory polysomnography and perceived social stress were measured from all children at three timepoints: at baseline (i.e., prior to curriculum exposure) and at two yearly follow-ups.
RESULTS :
Children receiving the curriculum gained an average of 74 minutes of total sleep time, and 24 minutes of rapid eye movement (REM) sleep, per night over the two-year study period. Children not receiving the curriculum experienced a decrease in total sleep time averaging 64 minutes per night, with no changes in REM sleep. Sleep improved within the first three months of curriculum exposure, in a dose-dependent fashion. Higher curriculum engagement (e.g., using the breathing exercises outside of class) was associated with larger gains in total and REM sleep duration. Aggregate within-group changes in social stress were not significant. However, among children receiving the curriculum, those who experienced larger gains in total and REM sleep duration also experienced larger increases in perceived social stress.
CONCLUSIONS :
A school-based health and mindfulness curriculum improved children's objectively measured sleep over two years. Social stress did not mediate these effects; instead, mindfulness training may have increased awareness of environmental stressors, while developing tools to reduce stress vulnerability.