経口ステロイド剤
商品名: プレドニン、リンデロンシロップ、セレスタミン等々
ステロイド剤は
A.”全身”に投与するもの(静注薬や内服薬)と、
B.”局所”に投与するもの(吸入薬のように気管支粘膜や鼻腔粘膜に働くもの、
軟膏やクリームのように主に皮膚に働くもの)があります。
B.の局所投与するものについては、全身性の副作用が無いことが確認されてから発売されています。
A.の全身投与するものは全身性の副作用が避けられません。
副作用は、肥満、白内障、緑内障、骨成長の停止、骨密度低下等々多岐に渡っています。
幼児は1年間に4~5cm身長が伸びるはずですが、ステロイド内服中は1年間に平均1cmしか伸びません。要するに内服中は殆ど身長が停止すると考えてください。
また2008年のPediatricsに、ステロイド内服もしくは静注を5日間以上続けると骨密度が男児で有意に低下し、その有意差は少なくとも7年間続くという論文が掲載されました。(女児では有意差がありませんでした。)
short course 経口ステロイド投与が男児の骨密度を7年間以上に渡って減らし、骨折のリスクを上げる
(Pediatrics H. W. Kelly MLV. Natta et al, 2008; 122: e53-e61)
アメリカのCAMP studyからの報告です。
タイトルの通りに、経口ステロイドは男児の骨密度を有意に減らすようです。
アメリカで、”short course”とは何日間の投与のことを指すのか知りませんが、
おそらく3~7日間程度でしょうか?
1年間に、short courseを0回、1~4回、5回以上の投与の3群に、531名の男児と346名の女児を割り振った
Prospectiveな研究です。(年齢は5~12歳で、平均は7歳です。)
1~4回投与群でも有意差が出ています。
用量依存性にリスクが上昇します。
不思議なことに女児では有意差が出ませんでした。
結論の中で、思春期を通した長期のICSも男児にとっては、
骨密度増加率をわずかに減少させたが、short course の経口ステロイド投与よりは減少が少なく
経口ステロイド投与を減らす利点が強調されていました。
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2012年に吸入ステロイドを毎日吸入すると成人になっても、使用していない群より1.2cm身長が低くなり、その差は成人まで続いたと報告されていました。
一方で、間欠吸入では非吸入群と身長に差が出なかったそうです。
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ステロイド内服は1週間も経てば明らかな副作用が出てきますが、低用量のステロイド吸入でも漫然と使用すると、多少の副作用は出るようです。
皮膚への塗布は体の場合であれば、週に3日以下であれば毛細血管の拡張や菲薄化や多毛といった副作用が生じなかったという論文があります。
点鼻に関しては、フルナーゼやナゾネックスのようなbioavailabilityの低いステロイドの場合は
副作用は皆無です。
感冒や中耳炎程度なら安易にステロイド内服をしないようにしてください。
中耳炎のガイドラインに記載されているステロイド使用法は、
鼓膜にチューブを留置した状態でデキサメサゾンを点耳する治療法のみです。
セレスタミンやリンデロンシロップで中耳炎の治療や予防に有効だったという根拠はありません。
ただし、脳症の際にメチルプレドニゾロンのパルスをすることは有意に脳の後遺症を減らします。
ネフローゼや紫斑病性腎炎の場合も腎機能を守るために骨成長を捨てて、緑内障に注意しながら用います。低身長や肥満よりも、視力や腎機能を保つことを優先させる訳です。
基本的にステロイドの全身投与は入院で行うか、外来の場合は毎日/毎週/毎月通院して慎重に管理しないといけません。易感染性も増すため発熱時にはすぐに病院に行く必要があります。
外用の場合は目に入ったりしなければ、殆どの場合、心配要りません。
(最も深刻なステロイドの長期的副作用は、目に対する緑内障および白内障だけです。
皮膚線条は治癒しない副作用ですが、生活に大きな支障を来しません。)