内分泌疾患治療薬

糖尿病

糖尿病による胎児奇形

(Miller E, et al: NEJM 1981:304;1331)


薬剤が胎児の及ぼす影響

胎生4w未満:All or none(奇形の無い子が生まれてくるか、流産するかどちらか。)

胎生4w~8w:最も催奇形因子への感受性が高い時期

胎生8w~16w:奇形因子への感受性が低くなる時期

胎生16w以降:奇形感受性は消失し、胎児毒性が重要になる時期


<サリドマイドの例>

サリドマイドは、最終月経から34日目までだけ、もしくは50日目以降にだけ服用された場合は、奇形を生じない。

35~49日が感受性期で、この時期に服用すると以下のような奇形を生じる。

最終月経から

35~37日: 耳の欠損と聾

39~41日: 上肢の欠損

43~44日: 3指のあるPhocomelia

46~48日: 3関節のある母指

最も遅くまで奇形感受性が残るのが、中枢神経系です。

サリドマイドはヒト以外のあらゆる哺乳類で奇形が起きなかったため、発売されてしまいました。

糖尿病治療薬

原則、インスリンと食事のみでコントロールする。

甲状腺機能亢進

甲状腺機能亢進では、妊娠中3~4w毎に甲状腺機能を検査する。

T3とT4を正常上限に保つように、最少量の薬剤を使用する。

PTU(propylthiouracil)で重度の肝障害の報告あり。

FDA alert [06/0402009]

Propylthiouracil-related liver toxicity:

public workshop, April 19, 2009, Washington D.C.


PTUは胎盤を通過する(胎児の甲状腺機能低下を引き起こす)が、乳汁中には殆ど分泌されない。頭皮欠損の報告は殆ど無い。


Methimazole で、胎児の頭皮欠損、食道閉鎖、後鼻孔閉鎖の報告。

Buhimaschi CS, et al.

Obstet Gynecol 2009; 113:116-88.


Methimazoleは胎盤を通過し(胎児の甲状腺腫やクレチン症を引き起こす。用量依存性あり。)、乳汁中に分泌される。


第一三半期はPTUを使い、それ以降はMethimazoleに変更する方向が考えられている。

FDA alert [06/04/2009]


<ダナゾール>

129例 妊娠中の投与⇒23例 人工妊娠中絶

12例 自然流産

94例 分娩⇒37例 男児

57例 女児⇒23例(女児の40%に男性化

(全て妊娠8wを越えて投与している症例)

(Brit J Obstet Gynaecol 1992;99:212-215.)

<奇形の発生機序>

器官発生の異常⇒malformation (例:サリドマイド、ダナゾール)

正常器官に異常な作用が働く⇒deformation (例:羊水過少によるPotter症候群)

正常器官の破綻⇒disruption (例:妊娠後半にワーファリンによる胎児出血、Constriction band syndrome、Misoprostolによる奇形)


<Misoprostol>

PGE1製剤である。

妊婦への投与

子宮収縮作用があり、妊婦で完全または不完全流産および子宮出血が見られたとの報告がある。

胎生11w頃、中絶目的で内服した母親から水頭症の児が生まれた報告あり。

ラットに投与したところ、妊娠前および妊娠初期投与試験では

着床数の減少および生存胎児数の減少が見られた。

器官形成期投与試験では胎児の生存および発育には影響が見られず、催奇形性も無かった。

ウサギに投与した器官形成期投与試験では着床後の死亡率および第13肋骨の出現頻度が増加した