被爆による発ガンリスク
(※ 以下の記事は、主に2011年3月に書き、2011年9月頃まで時々更新していました。)
中年層でも発ガンリスク増加
〔英オックスフォード〕コロンビア大学(ニューヨーク)放射線研究センター放射線腫瘍学のDavid J. Brenner博士らは「若年層と比べた中年層の放射線被ばくによるがんリスクは,これまで考えられてきたほど低くない」との研究結果をJournal of the National Cancer Institute(2010; 102: 1628-1636)に発表した。
原爆被爆者のデータを再分析
小児では成人に比べて放射線に対する感受性が高く,被ばくによる発がんリスクも高い。一般に被ばく時の年齢が高いほど,放射線誘発がんリスクは低いとのデータもある。
一方,日本の原爆被ばく生存者を対象とした長期研究の結果から,被ばく時の年齢が30歳前後からそれ以降になると放射線誘発がんリスクは低下しなくなることが分かっている。
Brenner博士らは,放射線被ばくによるがんリスクと被ばく時の年齢との関係を明らかにするため,放射線の被ばくから発がんに至るには2つのプロセスがあるという想定で,日本の原爆被ばく生存者のデータを再分析した。
第1のプロセスは,正常な幹細胞を前がん細胞に転換する遺伝子変異が起こるイニシエーションプロセスで,第2のプロセスは体内に既存する前がん細胞を増幅させるプロモーションプロセスである。
同博士らによると,小児ではイニシエーションプロセスの影響が優位で,既に前がん細胞を多く有する中年期の成人ではプロモーションプロセスの影響が優位と考えられる。
同博士らは,こうした生物学的な作用に基づくモデルを開発し,日本の原爆被ばく生存者のデータに応用した。その結果,このモデルによって同生存者における被ばく時の年齢に関連したがんリスクのパターンが再現できた。
また,米国人のデータを用いて同モデルでのがんリスクを予測したところ,30~60歳の年齢層で予測がんリスクとデータとの一致が確認された。
低線量被爆の重要性を示唆
Brenner博士らは「中年期以降の放射線被ばくによるがんリスクが従来の考え方とは異なり,いくつかの腫瘍については増加する可能性がある」と指 摘。また,「今回の研究結果は,中年期の成人を対象に普及しているX線診断や,同じく中年期の成人が多く従事する放射線を取り扱う職業に関して,重要な情報を提示している」と述べている。
同博士らは「疫学的エビデンスによると,成人における被ばくに関しては,一般に被ばく時の年齢が高くなるに伴い放射線リスクが低下することはない。ま た,被ばくから発がんに至るまでの2つのプロセスは,今回の結果が生物学的に妥当であることを裏付けている」と説明している。
国際疫学研究所(米メリーランド州ロックビル)とバンダービルト大学(米テネシー州ナッシュビル)のJohn D. Boice博士は,同誌の付随論評(2010; 102: 1606-1609)で「日本人のデータを一般化して米国人に適用するのは妥当ではない。そのようなデータは不確実で,今回の研究結果と矛盾するデータや モデルが存在する」と指摘している。
しかし,同博士は「この生物学モデルによって興味深い仮説が立てられ,それらの結論が,われわれの社会における低線量放射線被ばくが今後も重要であることを再確認させてくれる」と述べている。
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日本でも被爆する検査によってガンが4%増加するという報告がありましたが、日本のガン患者の1~2%は不必要なCTや透視で起きている可能性があります。(もちろん必要な検査は受けなければいけませんが。)
被爆量の多いCTや透視下の検査は最低限にするべきでしょう。
消化管以外はMRIの方が情報量が上回っているし、消化管ではエコーで代用できるものもあります。
小児科領域で言えば、意識やバイタルがしっかりしている頭部外傷はMRIの方が好ましく、
副鼻腔炎はWaters法で十分だし、上手な医師や技師はエコーで副鼻腔炎の診断ができます。(筆者はエコーによる副鼻腔炎の診断はできません。) また、臨床症状だけで判断しても十分です。
腸重積もエコーで十分です。腹部CTを撮るぐらいなら、試しに透視下で高圧浣腸した方が二重に被爆せずに済みます。
虫垂炎はエコーでは判断が難しいことが多く、明らかな例以外はCTは撮った方が良いでしょう。
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上記の記載は2011年2月17日に行いましたが、3月11日の東日本大震災以降に起きた福島原発の事故によって、放射性物質が放出されたことに伴い、下記の記載を4月17日に増補しました。
≪福島原発事故の影響について≫
まず大きく分けて、
A.内部被爆
1.ヨウ素(I-131)
2.セシウム(Cs-137、Cs-134)
3.ストロンチウム(Sr-90)
4.プルトニウム(Pu-238、Pu-239)
B.外部被爆
に分けて考える必要があります。
東京に住んでいる場合、A-4 と B は関係ありません。
外部被爆では核種は関係ありません。αかβかγ崩壊かという3種類の違いだけが問題になります。
プルトニウム自体に強い化学毒性があり、またα崩壊するため人体への毒性はとても強いのですが、チェルノブイリですらプルトニウムの飛散は30km以内でした。福島県に住む人以外関係ありません。
また勘違いが多いのですが、半減期が長い方が問題ではなく、短い方が1秒当たりに出す放射線の量が多くなるため問題です。
ウランは世界中の岩石中に微量ながら含まれているが、人体への影響が問題にならないのは半減期が非常に長いからです。
しかし濃縮すると臨界に達し、自然界に含まれるウランより速く分裂して多くの放射線を出します。
キュリー夫人が死んだのも、マンハッタン計画に参加したフォンノイマンやファインマンが死んだのもおそらく外部被爆が大きかったためと思われます。
臨界点に達した放射線源に近い場所で仕事をしている人だけが外部被爆の影響を受けます。
東京に飛来する放射性物質は、I-131>>Cs-137≒Cs-134>Sr-90の順に多いです。(時間が経つと半減期の違いから、Cs-137>Cs-134となります。)
これらはα線を出しません。β線とγ線が人体のDNAを傷付けることで、ガン細胞に変わったり、もっと損傷が酷ければ細胞分裂することすらできなくなって、急性放射性障害を引き起こします。
この3種の核種は人体での分布が違います。
A-1. I-131は甲状腺に集積するため、β線による障害も甲状腺組織に集中する。
A-2. Cs-137、Cs-134はKと同様に分布するため主な集積臓器は筋肉である。
A-3. Sr-90はCaと同様に分布するため主な集積臓器は骨である。
これらのデータ集積は難しく、
Data-1. 広島と長崎の生存者の発ガンリスク上昇
Data-2. アメリカやソ連での地上核実験が行われた1940年代以降の疫学調査
Data-3. チェルノブイリ周辺住民の発ガンリスク上昇
Data-4. 動物実験
ぐらいしか参照するものがありません。
外部被爆で、白血病と白内障が最初に増えます。(Data-1.)
内部被爆で、甲状腺癌が最初に増えます。(Data-3.)
≪広島と長崎の被爆生存者の発ガンリスク≫
図1 原爆被爆者における白血病の過剰絶対リスクと線量の関係
1950年時点での広島と長崎の原爆生存者集団8万6572人を追跡調査。白血病は被爆後最も早く発生した腫瘍。白血病死亡頻度(過剰絶対リスク)は、約2.5Svまでは線量が大きいほど増加する傾向にあるが、0.05~0.1Svの低線量域ではゼロ以下。
(出典:Radiat Res 1996;146:1-27.)
やまもと なおゆき氏 (○放射線科医。愛媛県緊急被ばく医療アドバイザー。2011年3月まで、同県「初期被ばく医療機関」に指定されている市立八幡浜総合病院(愛媛県八幡浜市)副院長。)
が日経メディカル4月号に書いた記事から抜粋します。
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これまで日本の原爆被災者の追跡調査(図1)や、諸外国での事故などの被害者調査が綿密に行われており、100ミリシーベルト(mSv)未満の被曝で悪 性腫瘍の発生が増えることは認められていない。100mSv以上であればリスクが数%高くなるといえるが、その上昇はわずかであり、喫煙や化学物質などの影響よりも低いといわれている。
(注釈:1人が年間に受ける自然被曝量は世界の平均は約2.4mSv、日本の平均は1.4~1.6mSvである。ブラジルやボリビアの一部地域では放射性物質を含む岩石が多く、足下から10mSv/yr以上の被爆する。
許容できる放射線量に対しWHOは放射能の量は変動するので、なかなか断定が難しいとしながらも
「1年間の量にして10ミリシーベルトだと外出を避ける。50ミリシーベルトだとそこから避難すべき量。広島、長崎では500ミリシーベルトの放射線量を受けた人の3割がガンで死亡している」
と語った。)
胎児の奇形発生は100mSv、男性の一時的不妊は精巣に150mSv、リンパ球減少は500mSvで生じる可能性がある。
(以下、略)
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以上から外部被爆は100mSv/yrを上限とした方が良さそうである。
福島で働く人の上限を一時的に100mSv/yr→250mSvに引き上げたが、個人的には挙児希望のある従業員は100mSv/yrとした方が良いと思う。
上記のように、地上核実験が盛んだった頃の低線量被爆が、現在のアメリカ人中高年層の発ガンリスクの高さを説明できる可能性が指摘されています。
≪チェルノブイリ周辺における内部被爆≫
・チェルノブイリ周辺では追跡できている数十万人の中で6000人以上の小児甲状腺癌が発生した。
・その多くは、16歳以下であった。
・高濃度汚染地域では、それ以前の甲状腺癌発生率の約100倍であった。(本来は甲状腺癌は小児人口10万人に1人以下の発生率。)
・成人になると発ガンリスクは1/8に低下。特に40歳以上は殆ど甲状腺癌を発症していない。
・原因はI-131であり、牧草+土壌→牛乳、山羊乳、羊乳という経路で濃縮された。
・Cs-134やCs-137由来の発ガンは報告されていない。
・チェルノブイリ周辺で避難した人達の平均被爆量は50mSvであった。
・甲状腺癌は被爆5~10年後に発症している。
・2011年現在も半径30km以内は立ち入り禁止となっているが、100~200km離れたHot spotと呼ばれる高濃度汚染域がある。
(ソースはチェルノブイリ周辺の甲状腺癌患者に対し、5年以上に渡り、手術や治療を行った元信州大助教授・菅谷昭先生・現松本市長の発言です。)
≪I-131による発ガンリスク≫
CDCのサイトを訳しました。
<小児のI-131に対するリスク>
同量のI-131を摂取した場合、成人に対して、
・新生児は16倍被爆する。
・1歳未満の乳児は8倍被爆する。
・5歳児は4倍被爆する。
(CDCのサイトを読むと、甲状腺の重さで被爆量を比較するという単純な評価でしかありません。 新生児の甲状腺重量は1g、月齢6で2g、5歳児で4~5g、成人で15~20gであることを言い換えただけです。体重比でわずか1/3000程度の小さな臓器にI-131が集積するのです。年齢やヨウ素の過不足によって甲状腺への取り込み率は違いますが、人では摂取量の20~30%が甲状腺に吸収され、残りは腎排泄されます。大雑把に言って、内部被爆は外部被爆の1000倍危険だと言えます。)
<妊婦、授乳婦I-131に対するリスク>
・妊婦はヨウ素の取り込みが亢進している。特に、1st trimesterは顕著である。
・ヨウ素は胎盤を通過する。
・2nd trimester以降は胎児の甲状腺へのヨウ素の取り込みが亢進し、蓄積される。
・産後1週間は母体の甲状腺へのヨウ素取り込みは4倍まで亢進。
・母親に取り込まれたヨウ素の1/4が母乳に分泌され、乳児に移行する。
・20歳になる頃までリスクは続くが、年齢と共にリスクは減っていく。
<ミルクに含まれるI-131に対するリスク>
・農村部では新鮮な牛乳がよく飲まれている。
都市部では消費されるまでに時間が経つので、リスクは減っていく。
・ヨウ素が不足している地域ではリスクが上昇する。
・山羊や羊の乳は、牛乳の10倍、ヨウ素が濃縮される。
(哺乳類の血清から母乳への濃縮は、種によって差があるようです。)
ということでした。
このCDCのサイトでは若年で代謝が亢進していることは考慮されていない数字が表記されています。
また同時に、代謝の活発さを考慮する必要があることも、CDCのサイトに書かれています。
15歳と40歳では体重や甲状腺の重さは殆ど有意差はないかも知れないけれど、
発ガン率は大きく違います。
筆者の個人的見解ですが代謝の違いに対して最低でも2倍の係数を乗じて、外部被爆の安全上限の2000倍以上厳しく考えた方が良いと思います。(未成年の平均甲状腺サイズが成人の1/4と仮定して、実際は8倍違ったのだから最低2倍の係数が必要です。)
100mSv/yr×1/2000=0.1mSv/yr=4500Bq of I-131/yr=8.3Bq/L of I-131 × 1.5L/day × 365days 以下を新生児の基準としても良いのではないかと思っています。
つまり日本で言われている飲料水は100Bq/L以下ではなく、WHOが主張している10Bq/L以下の方が安全域として好ましいと考えます。
EPAは0.1Bq/Lとかなり厳しい条件ですが、FDAは逆に日本と同程度の170Bq/Lとなっています。
<I-131>
U.S. Environmental Protection Agency 4 mrem/yr = 3 pCi/L = 0.1 Bq/L continuous exposure in drinking water
FDA 170 Bq/kg (4,600 pCi/kg) in food , infant water and drinking water
National Council on Radiation Protection and Measurement (NCRP), and International Commission on Radiological Protection (ICRP)
Annual occupational exposure limits: 50 mSv (5 rem) for whole body dose 500 mSv (50 rem) for thyroid dose
≪WHOの飲料水のガイドライン≫
http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/gdwq3rev/en/index.html
http://whqlibdoc.who.int/publications/2004/9241546387_jpn.pdf
http://www.atsdr.cdc.gov/csem/iodine/whosat_risk.html
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Radiation Exposure from Iodine 131
Who is at Risk
* Incidence of thyroid cancer depends on many factors, including
thyroid dose and age at the time of exposure.
During 1945-1962, when they were young children (and more vulnerable
than adults to radiation exposure), many persons in the United States
were exposed to radiation fallout from I-131 from multiple sources.
Those exposures put those persons at risk for thyroid and parathyroid
disease and cancer of the thyroid.
Any person who was a child under the age of 10 between 1945 and 1962
in the United States and who drank milk should be considered
potentially exposed to I-131. People who lived near or around weapons
production facilities, especially downwinders, are at risk for having
received higher levels of exposure to I-131.
More detailed information on how Americans were exposed to I-131 is
available from the National Cancer Institute (NCI). The institute
provides free print materials and maintains a Web site on I-131.
National Cancer Institute materials on I-131
Web site: http://www.cancer.gov/i131 You are now leaving the Web
pages of the U.S. Government.
Phone: 1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)
Epidemiological studies on thyroid cancer and I-131 at Chernobyl
confirmed that the risk for thyroid cancer is dependent on the
absorbed dose, the age and location of persons at time of exposure,
and the absence of immediate iodine prophylaxes for I-131 exposure. A
strong relationship exists between the incidences of thyroid
neoplasia, hypothyroidism, and autoimmune thyroiditis and the received
dose. In the most contaminated area after the nuclear release at
Chernobyl, thyroid cancer incidence was significantly higher compared
with other regions. There are no earlier studies comparable to those
for Chernobyl because no studies were conducted around U.S. weapon
production facilities when I-131 was released.
* Children are the most sensitive group for exposure to I-131.
Age is a factor for exposure to I-131 because of the differences
between thyroid doses for children and adults. The dose to children is
much higher than that to adults because the thyroid mass in children
is smaller, and because milk, as the main route of contamination, is
consumed in higher quantities during childhood. For an equivalent
uptake of I-131, a child's thyroid receives a higher radiation dose
because the same amount of energy is deposited in a smaller tissue
mass (more energy per gram = higher dose). For newborns, the thyroid
dose is about 16 times higher than that for adults for the same
ingested radioactivity; similarly, the absorbed dose is about 8 times
higher for children under 1 year old and 4 times higher for children 5
years old.
Most of the immigrants from the former Soviet Union who came to the
United States during the 1990s came from the Ukraine. Many of them
came from areas that had been contaminated with I-131 during and after
the Chernobyl explosion. Therefore, many of them-some of whom were
children at the time-have been exposed to I-131.
* Special considerations exist for pregnant women and nursing mothers.
During pregnancy, the maternal thyroid has an increased rate of I-131
uptake, especially during the first trimester. I-131 crosses the
placental barrier. During the second and third trimesters, the fetal
thyroid takes up and stores iodine in increasing amounts. During the
first postpartum week, thyroid activity increases up to fourfold. This
critical period lasts for a couple of days. Infants and children are
at high risk from radioiodine exposure because their thyroids are
small. This risk decreases as children age, although it continues
until they are about 20 years old. About one-quarter of the iodine
ingested by the mother is secreted in breast milk, which adds an
additional risk factor for the breast-feeding infant.
* Drinking fresh versus pasteurized milk leads to a higher dose of
I-131.
The geographic distribution of persons exposed to I-131 is important
for three reasons. First, the risk is higher for those in rural areas
because fresh milk is often consumed. This is important when the milk
is produced from a contaminated pasture. The delay between the
production and consumption of milk contributes to decreasing
radioactivity for urban populations. Second, the risk is higher for
populations with endemic deficiency of iodine. I-131 absorption is
higher for these populations. Third, different types of milk and dairy
products are consumed in some rural areas. In goat's milk and sheep's
milk, I-131 concentrations are up to 10 times higher than in cow's
milk for the same concentration of I-131 in the pasture.
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≪Cs-137およびCs-134による発ガン性≫
CDCのサイトを訳しました。
http://www.atsdr.cdc.gov/toxfaqs/tf.asp?id=576&tid=107
・Cs-134やCs-137はβ崩壊する。
・Cs-134の半減期は2年、Cs-137の半減期は30年であり、
ウランやプルトニウムに比べるとかなり短く、1秒当たりに出すβ線の量が多い。
・大量のCs-133に動物を暴露させると、活動性が低下したり、亢進したりする。
・大量のCs-137やCs-134に暴露されると、急性放射性障害(嘔気、嘔吐、下痢、出血、昏睡)が現れる。
・Cs-133と発ガン性の関連を調べた研究は存在しない。
・Cs-137やCs-134と発ガン性の関連を調べた人間での研究は存在しない。
・急性に大量の放射線を浴びた広島と長崎の生存者から、発ガン性があることが予期される。
・ラットの実験からCs-137の暴露で乳癌が増えることが分かっている。
ラットでは老いると放射線に対する感受性が減る。
・広島と長崎で被爆した妊婦から生まれた子は知能が低くなることが分かっている。
・Cs-137やCs-134に暴露させた動物では、子に先天性欠損が増える。
≪NRCのCs-134とCs-137の基準値≫
The Nuclear Regulatory Commission (NRC) has set limits for radioactive cesium in workplace air of 4x10-8 microcurie per milliliter (µCi/mL) for 134Cs and 6x10-8 µCi/mL for 137Cs. EPA has set an average annual drinking water limit of 80 picocurie per liter (pCi/L) for 134Cs or 200 pCi/L for 137Cs so the public radiation dose will not exceed 4 millirem.
飲料水中のCs-137の許容量は、7.4Bq/L
飲料水中のCs-134の許容量は、3Bq/L
≪Sr-90による発ガンリスク≫
http://www.atsdr.cdc.gov/toxfaqs/tf.asp?id=655&tid=120
・Sr-90による被爆で貧血や血小板減少による易出血性が増す。
・人間のSr-90被爆では白血病が増えることが分かっている。
・動物実験では、骨、鼻、肺、皮膚にガンができる。
・The International Agency for Research on Cancer (IARC)はSr-90は発ガン性があると結論している。
・人間では先天性欠損が起こるか、また知能低下が起こるかは知られていない。しかし、動物実験では、先天性欠損が起こることが分かっている。
・安定なSrは小児の骨成長を抑制する。
・Vit.D 、Ca, タンパクを含むバランスの良い食事がSrの吸収量を減らす。
≪I-131は母乳中に25倍濃縮される≫
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母親がポピドンヨード腟ゲル剤(5g中有効ヨウ素50mg含有)を1日1回6日間使用した。
母親のタンパク結合ヨウ素と血清無機ヨウ素値は正常で、尿中ヨウ素値は1800μg/g creatinine であったが、乳児の尿中ヨウ素は6800μg/g creatinie であった。
ポピドンヨードゲル剤中止3日後も正常の母乳中濃度の3~4倍と高く、
母乳中総ヨウ素値は血清値の約25倍であった。
Postellon, D.C. and Aronow, R. : J. Am Med Assoc. 247, 463, 1982
母乳中ヨウ素は投与6時間後に最大値となり、48時間で正常値に近づく。
Kitamura T. et al, Prog Med. 7, 1031-1034, 1987
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母体が摂取したヨウ素は25~28%が乳児に移行します。
妊婦や授乳婦も細心の注意が必要です。
≪放射能(Bq)と被爆量(Sv)の換算式≫
http://www.bq.filil.net/index.cgi
300Bq の放射性ヨウ素131が検出された飲み水を 1kg 飲んだ場合の人体への影響は、
300×2.2×10-5(※)=0.0066mSv となる。
300Bq/LのI-131を含む水を毎日2L飲んだ場合、被爆量は約4.8mSv/yrとなる。
100Bq/Lの水であれば1.6mSv/yrの内部被爆となり、確かに乳児でも安全域であると思われる。
東京では、3月22~28日をピークに水道水中の放射性物質の量が減っています。
≪Common units とSI units の換算式≫
http://orise.orau.gov/reacts/guide/measure.htm
0.01 sievert (Sv) = 10 mSv = 1 rem
1 GBq = 27 millicuries
37 GBq = 1 curie
37 Bq = 1000 pCi
≪福島とChernobylの比較≫
海外では、3月下旬から福島はChernobylに匹敵すると思われているようです。
土壌の汚染もかなり進んでいます。
・SPEEDIによると福島では3月12日~24日の12日間足らずで3~11万TBqのI-131が放出された。
・チェルノブイリでは最初の10日間の黒鉛火災で176万TBqのI-131が放出された。
→つまり1日当たり17.6万TBqが放出された。
・チェルノブイリでは火災が沈静化してからはI-131の放出が減った。
・福島ではむしろ状況は悪化し、Austriaの観測では現在では1日当たり12~13万TBqが放出されている。(SPEEDIの公表よりもかなり多い。)
・福島では冷却するまでに、おそらく数ヶ月、コンクリートで固めるまでに数年以上を要する可能性が高い。
・放出するI-131の総量ではチェルノブイリを上回るだろう。
・SPEEDIの公表が遅すぎたので、飯舘村の乳幼児は甲状腺癌のリスクに曝されるかもしれない。
<楽観的な要素>
・ウクライナ人は酪農に依存する度合いが大きい。日本人の方が牛乳摂取量は少ないだろう。
外部被爆が同程度になっても、内部被爆は少ない可能性がある。
・日本人は普段から海草をよく食べるので、ウクライナ人よりI-131のuptakeが少ないかも知れない。
・セシウムの汚染はチェルノブイリを越えるだろうが、少なくともチェルノブイリ周辺では
セシウムによる腫瘍は増えていない。
(しかし今回のCs-137はチェルノブイリを越えるので、本当に大丈夫か今後追跡していく必要がある。)
・今のI-131の放出レベルが続くと仮定すると、半減期が短いことから土壌のI-131の量は
1~2ヶ月で定状状態に入り、それはチェルノブイリの最初の10日間より少ないだろう。
・今回の原発事故は数日掛けて1機ずつ壊れていったため、住民が警戒していない初期の放出量は少ない。
また3号機にはMOX燃料棒が32本(おそらく10トン超)あることも気掛かりです。
まだ5,6号機がコントロールされたことは不幸中の幸いです。
・1~6号機で燃料棒が4546本あり、
・1本当たり平均387kg、
・1~4号機中に2724本=約60%=1000トン強=チェルノブイリの5~6倍
・5,6号機で1822本=約40%、
・MOXは3号機の中だけに32本=12.4トン?
・チェルノブイリでばらまかれたのは10トン≒5%強程度で、今も95%程度は石棺の中にある。
・福島は今も熱を出し続けている。
海外の報道の方が放射性物質の放出量が正確です。
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Fukushima radioactive fallout nears Chernobyl levels
* 17:14 24 March 2011 by Debora MacKenzie
* For similar stories, visit the The Nuclear Age Topic Guide
Video: Radioactive plume from Japanese reactor
Japan's damaged nuclear plant in Fukushima has been emitting
radioactive iodine and caesium at levels approaching those seen in the
aftermath of the Chernobyl accident in 1986. Austrian researchers have
used a worldwide network of radiation detectors - designed to spot
clandestine nuclear bomb tests - to show that iodine-131 is being
released at daily levels 73 per cent of those seen after the 1986
disaster. The daily amount of caesium-137 released from Fukushima
Daiichi is around 60 per cent of the amount released from Chernobyl.
The difference between this accident and Chernobyl, they say, is that
at Chernobyl a huge fire released large amounts of many radioactive
materials, including fuel particles, in smoke. At Fukushima Daiichi,
only the volatile elements, such as iodine and caesium, are bubbling
off the damaged fuel. But these substances could nevertheless pose a
significant health risk outside the plant.
The organisation set up to verify the Comprehensive Nuclear-Test-Ban
Treaty (CTBT) has a global network of air samplers that monitor and
trace the origin of around a dozen radionuclides, the radioactive
elements released by atomic bomb blasts - and nuclear accidents. These
measurements can be combined with wind observations to track where the
radionuclides come from, and how much was released.
The level of radionuclides leaking from Fukushima Daiichi has been
unclear, but the CTBT air samplers can shed some light, says Gerhard
Wotawa of Austria's Central Institute for Meteorology and Geodynamics
in Vienna.
Ill wind
For the first two days after the accident, the wind blew east from
Fukushima towards monitoring stations on the US west coast; on the
third day it blew south-west over the Japanese monitoring station at
Takasaki, then swung east again. Each day, readings for iodine-131 at
Sacramento in California, or at Takasaki, both suggested the same
amount of iodine was coming out of Fukushima, says Wotawa: 1.2 to 1.3
× 1017 becquerels per day.
The agreement between the two "makes us confident that this is
accurate", he says. So do similar readings at CTBT stations in Alaska,
Hawaii and Montreal, Canada - readings at the latter, at least, show
that the emissions have continued.
In the 10 days it burned, Chernobyl put out 1.76 × 1018 becquerels of
iodine-131, which amounts to only 50 per cent more per day than has
been calculated for Fukushima Daiichi. It is not yet clear how long
emissions from the Japanese plant will continue.
Similarly, says Wotawa, caesium-137 emissions are on the same order of
magnitude as at Chernobyl. The Sacramento readings suggest it has
emitted 5 × 1015 becquerels of caesium-137 per day; Chernobyl put out
8.5 × 1016 in total - around 70 per cent more per day.
"This is not surprising," says Wotawa. "When the fuel is damaged there
is no reason for the volatile elements not to escape," and the
measured caesium and iodine are in the right ratios for the fuel used
by the Fukushima Daiichi reactors. Also, the Fukushima plant has
around 1760 tonnes of fresh and used nuclear fuel on site, and an
unknown amount has been damaged. The Chernobyl reactor had only 180
tonnes.
The amounts being released, he says, are "entirely consistent" with
the relatively low amounts of caesium and iodine being measured in
soil, plants and water in Japan, because so much has blown out to sea.
The amounts crossing the Pacific to places like Sacramento are
vanishingly small - they were detected there because the CTBT network
is designed to sniff out the tiniest traces.
Dangerous isotopes
The Chernobyl accident emitted much more radioactivity and a wider
diversity of radioactive elements than Fukushima Daiichi has so far,
but it was iodine and caesium that caused most of the health risk -
especially outside the immediate area of the Chernobyl plant, says
Malcolm Crick, secretary of a United Nations body that has just
reviewed the health effects of Chernobyl. Unlike other elements, he
says, they were carried far and wide by the wind.
Moreover the human body absorbs iodine and caesium readily.
"Essentially all the iodine or caesium inhaled or swallowed crosses
into the blood," says Keith Baverstock, former head of radiation
protection for the World Health Organization's European office, who
has studied Chernobyl's health effects.
Iodine is rapidly absorbed by the thyroid, and leaves only as it
decays radioactively, with a half-life of eight days. Caesium is
absorbed by muscles, where its half-life of 30 years means that it
remains until it is excreted by the body. It takes between 10 and 100
days to excrete half of what has been consumed.
While in the body the isotopes' radioactive emissions can do
significant damage, mainly to DNA. Children who ingest iodine-131 can
develop thyroid cancer 10 or more years later; adults seem relatively
resistant. A study published in the US last week found that iodine-131
from Chernobyl is still causing new cases of thyroid cancer to appear
at an undiminished rate in the most heavily affected regions of
Ukraine, Belarus and Russia.
Caesium-137 lingers in the environment because of its long half-life.
Researchers are divided over how much damage environmental exposure to
low doses has done since Chernobyl. Some researchers think it could
still cause thousands of new cases of cancer across Europe.
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以下はクリストフ・ミュリット氏のインタビューを転載しました。
(略歴) 1953年生まれ。
フリブール大学の放射線物理学で博士号取得。
1980年、連邦保険局 ( BAG/OFSP ) に入局。
2005年以降、放射線防護課主任及びスイス連邦政府放射線防護委員会の科学事務長。
環境中の放射線量の監視と放射能事故処理を専門とする。
放射能防護に関する基準値や技術的問題について、国際原子力機関 ( IAEA ) 、国際保健機関 ( WHO ) 、国際放射線保護委員会 ( ICRP ) などと協力。
北半球の放射生態学グループとスイスフランス語圏の放射能線防護学協会の会長を務める。
2011-05-10 15:38
福島原発事故、もし「フクシマ」がスイスで起きたら - 1 -
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
「スイスでフクシマのような事故が起きても、許容される年間の放射線量は1ミリシーベルトだ」とスイスの連邦保険局 ( BAG/OFSP ) 放射線防護課主任、クリストフ・ミュリット氏は強調する。
この1ミリシーベルト ( mSv ) は、外部被曝 のみならず食べ物摂取による内部被曝の場合も厳守される。特に妊婦、胎児、子どもの場合は絶対だ。
ミュリット氏は放射線学の専門家。原発の事故などによる放射線の被害からスイス国民の健康を守るのが任務だ。チェルノブイリの事故で汚染されたスイス国内の対策にかかわり、1999年には現地に赴き半径30キロの立ち入り禁止区域で調査も行った。
ミュリット氏に、福島原発のような事故がスイスで起きたらどういった対策を考えているのか、また現在の福島へのアドバイスなどを聞いた。今回のインタビューでは情報量が多いため、2回に分けお届けする。
swissinfo.ch : 福島の原発事故から2カ月が経過しますが、まだ収束しておらず、水素爆発などもまったくないとは言えない状況です。もし、スイスで福島のような原発事故が起きたら、どう対処するのでしょうか。
ミュリット : 放射線の当たらない家屋などに避難、あるいはその地域からの退去、安定ヨウ素剤の配布などを行う。3時間後に原子炉が爆発すると分かれ ば、基本的には退去だ。事故の初めが特に重要で放射性ヨード131を避ける必要がある。甲状腺がんを引き起こすからだ。世界の基準は、甲状腺の器官そのも ので50ミリシーベルト以上の放射線が計測されないのが原則。これ以上は許されない量だ。
とにかく事故の第1段階では外部被曝と放射性 物質の吸引を避ける。この2点が大切だ。被曝時間を制限する、放射線を浴びないような建物に避難する、また放射線を出す物体から距離を取ることだ。例えば 放射性物質から1ミリメートル、つまり触ってしまう距離と1メートルの距離とでは、被曝線量が全く違う。100万倍違う。距離を取ることは肝要だ。
第 2段階で少し落ち着けば、食料摂取などによる体内への取り込みが問題になってくる。スイスではこの内部被曝でも外部被曝と同様の被曝線量1ミリシーベルト の基準は守るようにする。以上はスイスが特殊というのではなく、世界の基本的対策はほぼ同じだ。ただスイスが厳しくしている点は、この年間の被曝量を1ミ リシーベルトに限定し、特に妊婦や胎児、子どもには絶対にこの1ミリシーベルトを守る点だ。中でも胎児の場合は放射線によるダメージが大人の3、4倍だか らだ。
しかし、放射能事故現場の作業員たちの最大被曝線量は、スイスでも250ミリシーベルトだ。一人一人が計器を携帯するのは義務 で、250ミリシーベルトになったらアラームが鳴るようにしておき、鳴ると放水中であろうと作業の途中であろうと、その場を去らなければならない。この数 値は欧州連合(EU)や世界保健機構(WHO)でも同じだ。
フクシマの原発内は毎時1シーベルト ( 1000ミリシーベルト ) の高い放射線が観測されていると聞く。つまり1人15分しか作業できないという訳だ。1000人の作業員がいれば、10人が15分作業して終了し、また 10人が入るという方法を取らなければならないだろう。
非常時だから250ミリシーベルトだが、実は100ミリシーベルトが重要な基準値になっている。多くの研究が100ミリシーベルトから、ガンや胎児の奇形、知能障害などの危険性が高まると証明しているからだ。30年後にこうした症状が現れる場合もある。
swissinfo.ch : 作業員の被ばくも大問題ですが、原発から4、50キロメートル離れた地域の住民の積算放射線量も問題になっています。この積算放射線量による影響とはどのようなものでしょうか?
ミュリット : 長期にわたって浴びた放射線量が、ある値を越すとこうした症状を引き起こすという目安がある。例えば500ミリシーベルトから1 シーベルト ( 1000ミリシーベルト) では、がんにかかる可能性が高まり、1シーベルトから2シーベルトではさらにこの可能性が高まる。5シーベルトで100人中50人が死ぬ。瞬間に浴びても 500ミリシーベルト からリンパ球の減少が現れ、50シーベルトでは2、3時間後に死ぬというものだ ( 右欄参照 )
結局、長期間の被曝では、被曝後10年から30年後にがんに、2年から10年後に白血病にかかるリスクが高まると言われている。ただ、1シーベルトを浴びたから必ずがんになるというわけではなく、可能性が高まると言うことだ。
swissinfo.ch : 福島などで今後問題になるのは、食べ物や水などによる内部被曝の積算放射線量ですが、スイスの基準はどのようなものでしょうか。
ミュリット : スイスでは先に述べたように、国際基準に従い放射能事故の場合、一般の人の被曝線量は年間1ミリシーベルトに限定されており、汚染された 食品消費量の総数がこの1ミリシーベルトを超えないように、含有放射能量が決定される。それは1キログラムにつき何ベクレル ( Bq ) が上限かという値になる。
具体的には二つ基準がある。世界の限界基準値とスイスの許容基準値で、後者は世界の基準値が高すぎるため、ス イス独自で決めたものだ。これは健康管理という観点からではなく、食品の品質を消費者に保障する目安としてあり、世界基準の1~10% の数値にあたる。例えば放射性ヨード131では、世界基準値は食品全般で1キログラム中2000ベクレル、液状食品で500 ベクレル。これに対し、スイスの値は両方ともわずか10ベクレルにしている。
現在日本では野菜が2000ベクレル、液状食品が300ベクレルで、欧州連合 ( EU ) が日本に基準を合わせようとしているため、スイスの許容基準値も、もう少し高い値に変えざるを得ないだろう。
管理すべき食品中の主な放射性物質はヨード131、セシウム137、ストロンチウム90、だが、こうした基準値に沿って計測することで、内部被曝は制御できると思う。
た だ、その場合、それぞれ半減期が違うため、対策はさまざまになる。例えばヨード131は半減期が8日だが甲状腺がんを引き起こす。半減期が30年のセシウ ム137は筋肉に、半減期が30年のストロンチウム90はカルシウムと同じ働きをするため、骨に吸収される。骨に残ったストロンチウムは骨髄細胞を侵すた め、白血病を発病させやすい。
そのため大切なのは、食品中にどの放射性物質がどれほどの量あるのか、さらにその国の食文化によって何を 主体に、一年に何キログラムの放射線汚染食品を食べるかという4点。スイスでは乳製品の消費が多いので、こうした食品の放射線量レベルの上限は低くしてい る。日本では魚や米など消費量の多いものの基準に気をつけるべきだろう。
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
2011-05-11 15:48
福島原発事故、もし「フクシマ」がスイスで起きたら - 2 -
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
スイスでもチェルノブイリの放射能がイタリア語圏のティチーノ州を汚染した。そのときの政府の対策を、昨日の第1版に続きスイスの連邦保険局 放射能線防護護課主任、クリストフ・ミュリット氏に聞いた。
内容には、日本の原発事故後の対策に応用できるヒントが隠れていそうだ。
swissinfo.ch : スイスもチェルノブイリの放射線、特にイタリア語圏ティチーノ州が汚染されました。そのときの対策はどういったものでしたか?
ミュリット : 当時ティチーノ州に放射能汚染された雲が着いたとき大雨が降り、放射能性物質がすべて牧草地に落ちた。スイス連邦保険局 ( BAG/OFSP ) は、これらを食べる牛や羊を殺さない方針を取った。
ドイツでは牛を全て殺した。しかしセシウム137を筋肉に含む牛肉は食用にならない上、焼却しても半減期が30年であるため、その灰の処理に困る。
ス イスでは、殺さず牛や羊に前年の干し草を食べさせ、また羊の群れを汚染されていない西部のフリブール州に移動させた。セシウム137は確かに半減期が30 年だが、体内に入るとおよそ半分が40日~60日間で排出される。従って羊肉の1キログラムあたりのベクレルの値が減少する。
こうして、年間の摂取量が1ミリシーベルトを超えないようなベクレルの値で肉を生産させ出荷を許可した。農家への補償もいらない上、家畜を殺さずに済んだ。
swissinfo.ch : しかし、たとえ羊をフリブールに移動させてもセシウム137は羊の糞尿中に排出され、最終的にまた牧草地にたまるのではないでしょうか?
ミュリット : 確かに排出されるが量の問題だ。まったく汚染されていない牧草地にセシウム137が多少排出されても問題にならない。またセシウム 137は地下深くに染み込むため、草の根はこれを吸い取らない。ただ、このセシウムも染み込む途中で粘土層にたまる場合がある。従って30年間はフリブー ル州でもティチーノ州でもこの量を測り続けている。
ところで、現在の日本のような場合だが、もし汚染された土地で農作や牧畜を行う場 合、二つの方法がある。一つは表層の土を取り除くことだ。そうすれば栽培は可能になる。ただその土をどこに持っていくかという問題は残る。もう一つは30 センチメートル分の深さで表層の土と下の土を入れ替えるように掘り返す。そうすれば表層部の高濃度の部分が核散され、1キログラムあたりの放射能濃度が薄 まる。
だが、こうした手段が取れず一番問題の多い場所が森だ。土を掘り返せない上、キノコは放射能を吸収しやすく、野生の動物や木の実など多くの生物が放射能を持ち続けるからだ。チェルノブイリのせいで、ドイツの森では今でも高い放射線量が観測されている。
swissinfo.ch : 福島では農作のために土地をどうすればよいと思われますか?
ミュリット : 現在原発事故が収束してない段階では何もできない。ただ半径30キロ圏はとにかく触わらない。その後状況が安定してきた時点で、ガンマ 線を出すセシウム137とアルファ線を出すプルトニウム239の量を各場所で計測する。その後、汚染を完全に取り除くのか、削減させるだけなのか、つまり 土を取り除くか掘り返すかを決めることになるだろう。
場所によっては、農作が永久にできない所もあるだろう。例えば半減期が2万 4000年のプルトニウム239が検出される場所だ。わたしだったらそれでも一応掘り返して、多少拡散させコンクリートなどで覆いをするだろう。だが、こ こでは栽培はおろか人も住むわけにはいかない。
ところで、こうした農村地域にはまだ対処の方法がある。しかし、都会の場合は難しい。も し最悪の事態が起き、フクシマの原子炉3基とも制御できず、しかも風が東京方面に吹き雨が降ったとしたら・・・もちろん都民はすぐ避難するので問題はない が、放射性物質を即刻除去しなければ、建物などに染み込んでしまう。消防団が直ちに放水し洗い流す必要があるだろう。
福島県の学校の校庭でかなりの放射能が確認されたと聞いたが、これも放水して、水路を付けて流したらどうだろう。また、ほかの場所で生徒を遊ばせるなどしてはどうか。子どもたちは非常に放射線の被害を受けやすいからだ。
swissinfo.ch : チェルノブイリから国境を挟んですぐそばのベラルーシの村々では、事故後も村に住み続けたという話ですが。
ミュリット : ベラルーシの幾つかの村では事故の情報がほとんど入らず、また国が対策を行わなかったため村民はそこに住み続けた。そこでスイスを含め他国からNGOが入り住民を指導した。
住 民は食べ物も体も、計器を使って放射線量を計る方法を学んだ。この遊び場は大丈夫だが、森は放射線量が高いのでその傍では遊ばないように子どもたちを指導 し、汚染の少ない牧草地に牛を移動させもした。ある家族で妹の体のセシウム137の線量は低いのに兄の方は高い。なぜか。兄はキノコが大好きだが妹は嫌 い。そうか、キノコは放射線量が高いのかと言う風に少しずつ学んでいった。
現在、現地の支援者が年間の被曝量基準を1ミリシーベルトないしは0.1ミリシーベルトに徹底するよう活動を続けている。
も ちろんこうした対策は本来、国が行うものだ。そして、国がこうした事故後の対策を行う場合に気を付けなければならないのは、まず状況を分析し、それに応じ て決定を行う。それは経済をマヒさせるものであってはならないだろうし、とにかく状況や場所によってさまざまに異なるだろう。
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
2011-03-23 15:00
原発事故「最も憂慮すべきは遺伝子変異」
レナート・キュンツィ, swissinfo.ch
福島第一原発では今もなお予断を許さない状況が続いている。今後日本のみならず世界中でがんのリスクが増すと考えられる。しかし、それ以上に深刻な問題は世代を越えた遺伝的な損傷だという。
マルティン・ヴァルター氏 ( 66歳 ) はソロトゥルン州グレンヒェン ( Grenchen ) の内科開業医だ。1991年に1カ月間ウクライナの病院で働いた経験も持つ。
また1988年から2年間、核戦争防止国際医師会議スイス支部 ( PSR/IPPNW Schweiz ) の支部長を務め、「核を使わない電力 ( SoA ) 」運動や原発建設に猶予期間を求める運動などの委員会で中心的な役割を果たした。この原発建設の猶予期間については、1990年秋の国民投票で認可されて いる。
swissinfo.ch : 東京電力さらには日本政府の不十分な情報開示に対し批判の声が高まっています。正確な情報が伝えられないことで日本国民の命が危険にさらされているということはありますか。
ヴァルター : それはない。急性被曝は免れている。少なくともこれまでのところ ( 17日現在 ) 原子力発電所の敷地外では放射線量がさほど多くなく、急性被曝には至らない。北半球の住人が急性被曝で死亡することはない。しかし、原発内で原子炉の冷却 作業をしている作業員たちを取り巻く環境は別だ。どうか線量計を装着していてほしい。
ただ、情報伝達が不十分だったり危険を軽視したりすると大きな誤りを犯すことになる。吸収線量と人体への影響は正比例の関係にあるからだ。つまり、心配のいらない吸収線量というものはない。わずかな摂取でもがんを引き起こし、乳がんや大腸がんなどから死に至ることもある。
今後日本では確実にがん死亡率が高まるだろう。たとえ完全な炉心溶融に至らなかったとしてもだ。
swissinfo.ch : 専門家によれば3月17日と18日の2日間が原子炉冷却の鍵を握る最後のチャンスとされ、成功しなければ炉心溶融が決定的になるとのことでした。世界が日本に対して抱く不安は当然のものですか。
ヴァルター : 当然だ。先述したがんの増加を恐れてのことだ。例えば、チェルノブイリでも急性被曝で死亡した人は多くなかったが、事故後にがんで多くの人たちが亡くなった。
しかし、がんのリスクの増加以上にもっと深刻な問題は遺伝子への影響だ。それも世代を越えた影響だ。最新の研究では、少量の吸収線量でも継代的な影響がありうることが分かっている。
イ ギリスにあるセラフィールド ( Sellafield ) の使用済核燃料の再処理工場に勤務する人たちの子どもには白血病のリスクが高い。これは父親の吸収線量と関係があり、子どもたち自身は放射線にさらされて いない。原発事故だけでなくこうした通常の場合でも、人間ならび動植物の遺伝子に損傷が発生する。こうした事実を知った上で、あえて原子力に頼るかどうか はむしろ倫理的な問題だ。
swissinfo.ch : 放射能汚染では放射性同位体のヨウ素131、セシウム137、キセノン133、クリプトン85ならびにストロンチウム、プルトニウム239が漏出します。どれも危険ですが、特に危険なものはどれですか。
ヴァルター : まず、危険度は半減期によって変わってくる。ヨウ素は8日間でほぼゼロになる。つまり、スイスの子どもたちにヨウ素剤を与えても意味がないと言える。さらに大人が服用すると逆効果になりかねない。
セシウムの半減期は30年なのでセシウム汚染は日本からスイスにまで行き渡るが、スイスでの危険度はごくわずかだ。セシウムはカリウムのように体内で代謝されるため、一回限りの摂取なら数カ月後にはなくなる。
ス トロンチウムは体内に蓄積され、死ぬまで残る。ここでも人体への影響は半減期に左右される。ストロンチウムはカルシウムのように骨に蓄積されるため消える ことはなく、骨髄は絶えずβ線の影響を受けることになる。子どもの骨髄は脂肪が少ないため、のちのち白血病になるリスクが大人よりも高い。
プルトニウムは一度体内に入ったら決して消えない。ごく微量の摂取でもがんを引き起こす。
swissinfo.ch : チェルノブイリの場合、子どもへの医療行為はどの程度可能でしたか。
ヴァルター : 普通なら子どもが甲状腺がんにかかることはない。事故前のウクライナでは住民5000万人に対し年間3人ほどだった。しかし、事故後1500人の子どもが甲状腺がんを患った。4000人という話もある。
それまでこうしたことはなかった。これはヨウ素131の影響だった。もし事故直後に政府が子どもたちに安定ヨウ素剤を与えていれば避けられただろう。当時の子どもたちに急性被曝があったとは思えない。
セシウムに関しては、ウクライナでは大人も子どもも食品から摂取している。それは今も変わらない。これに対してはりんごペクチン剤が服用されている。りんごペクチンは体内のセシウムの量を減らし、継続的なセシウムの摂取に対しても有効に働く。
swissinfo.ch : 原爆を経験した唯一の国である日本が今また大規模な原発事故に見舞われているというのはある意味ひどい皮肉のようです。当時の医療的な経験は今回の役に立ちますか。
ヴァルター : それはないだろう。当時は特別な治療を施すことがまったくできなかった。その上、被曝の影響は異なる。広島と長崎で被曝した父親を持つ子 どもたちとチェルノブイリで被曝した父親を持つ子どもたちをイスラエルの研究者たちが調査した。その結果、父親が原爆で被曝した後に生まれた子どもたちに は遺伝子の変異がまったく見られなかったことが分かった。
それに対し、チェルノブイリの事故後に解体作業者として入った父親から被曝後に生まれた子どもたちには一定の割合の遺伝子 ( ミニサテライトDNA ) に相当数の変異が見られた。遺伝的な視点で見ると、今回の福島第一原発の事故は深刻なケースだ。
レナート・キュンツィ, swissinfo.ch
( 独語からの翻訳・編集 中村友紀 )
ヴァルター・ヴィルディ ( Walter Wildi ) 氏略歴
1969年、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) で自然科学の博士号取得後、地質学の専門家として核燃料廃棄物の貯蔵計画に加わる。
1970~1994年、アルプス地域などの地質の沈殿作用研究に従事。
1995年から現在まで、ジュネーブ大学の地質学教授として「フォレル研究所 ( Institut F.A.Forel ) 」の研究所長を務める。
1997~2007年、上記の職務の傍ら、スイス政府の原子力安全委員会のメンバーとなり、2002~2007年の5年間、同委員会の会長を務めた。
政府の原子力安全委員会は、原子力産業関係者以外の専門家による安全監視機関。1997年から2007年の10年間、監視が行われた。
2011-04-05 14:53
福島第一原発事故、避難指示圏を半径40キロに拡張を!
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
「原発に絶対の安全は存在しない」と、スイス政府の原子力安全委員会長を5年間務めたジュネーブ大学研究所長ヴァルター・ヴィルディ教授は主張する。
また、福島第一原発事故の経過を研究した上で、半径40キロ圏内でも高い放射能が場所によって確認される現在、「なぜ日本政府は半径30キロ圏内を、責任を回避する形の自主避難要請にしたのか理解に苦しむ。半径40キロを避難指示圏にすべきだ」と話す。
swissinfo.ch : 福島原発事故で、原発の存在そのものが問われています。スイスの原子力安全委員会長の経験からどう思われますか?
ヴィルディ : 原発は廃止すべきだと思う。一つのエネルギー源として極端に高額だからだ。建設費そのもの、安全性の確保、監視、特にテロの攻撃回避の監視などに、巨額の資金がかかる。
ま た、原発に「絶対の安全」は存在しない。今回スイスでもなぜこんなに騒いだのかというと、この安全性が問題になったからだ。福島で冷却装置が止まったと き、非常用ディーゼル発電も作動しなかった。実はスイスでも安全性のテストを行うと、しばしばこのディーゼル発電が作動しない。作動したとしても直後に停 止したりと不安定。つまりこの非常用発電が原発の最大の弱点で、そのため原発に信頼が置けない。
2006年にスウェーデンで炉心の溶融 をギリギリ免れた事故があった。事故で通常の冷却装置が止まったとき、4機の非常用ディーゼル発電のうち1機だけが作動した。もう1機は作動したが直ぐに 止まり、作業員が20分後にたまたま原因を突き止め、2機が作動したお陰で危機は免れた。
使用済み燃料棒のプールの水循環用に非常用の発電機が日本にはなかったが、それはスイスでも同様だ。こうしたことから、原発には絶対の安全はないといえる。
それでも原発を認めるということは、今の日本のように、自分の国の一部を失う、つまりその地域の人が荒廃した土地を後にして再び故郷に戻れないようなリスクを受け入れるということだ。
swissinfo.ch : 今後どの地域が放射能で汚染されるか、またそうした地域に人は住めなくなるのでしょうか?
ヴィルディ : 今後放射能濃度が高くなる地域は、風と雨に大いに影響される。現在、汚染地域は、福島第一原発から内陸に向かって水平に細長く広がり、さらに北西と南西に広がる傾向を見せている。では東京はどうかというと、現在の状況からは何とも言えない。
わ たしの考えでは現在、半径40キロ圏内が、場所によるばらつきはあるが汚染されている。今後この土地に再び住めるかどうかだが、地表から深さ20~40 センチメートルまでの土を取り除き、これを放射能が出ないような形でどこかの場所に保存するという計画も検討中だと聞いた。しかし、それはとてつもない量 の土で難しいだろう。風景も完全に変わるだろう。
チェルノブイリでは、およそ半径30~40キロ圏の汚染地域から人を完全に転居させた。25年たった現在、政府当局は数百人の高齢者にのみ再入居を許可した。というのも、放射能を今後何年間か蓄積してがんになるとしても高齢者にとっては ( 寿命と ) 同じだからだ。
こうしたゾーンをはっきりと確定するには、とにかく土地の放射能濃度を広範囲に、詳細かつ正確に測定することが望まれる。
と ころで、つい先日半径40キロ圏内のある地点で高い濃度の放射能が観測された。正確な各地の数値が関係当局から出ないので、グリーンピースがこれを行った のだが、( 日本の当局が ) 原発を持ちながらこうした測定の体制を整えていないことにはただ唖然とした。技術的には非常に単純なことだ。これは政治の姿勢の問題というか、文化の違い というか、われわれには信じられない。
swissinfo.ch : 今後福島原発はどうなっていくのか、あなたの意見を聞かせて下さい。
ヴィルディ : 恐らく今後数カ月間は1~3号機の炉心の冷却を続ける必要がある。その後、炉心が少し低温になったところで、コンクリートで固めるか、砂で固めるか、とにかく放射能漏出を遮断することになるだろう。
しかし、それまでに炉心の溶融した燃料棒の表面は高温のため水が直ちに水蒸気となり、高濃度の放射能を含んだまま外に排出される。大量の汚染水もだが、大気中に排出され続けるこの高濃度の放射能が問題だ。
半 径20キロ圏内の住民は避難したが、40キロの地域でも高い濃度が観測されたことから今後20キロから40キロ圏内の人々のがんにかかる可能性は高まって いく。ヨードやセシウムだけに限らず、重いために遠くまで飛散はしないが非常に危険なプルトニウムでさえ、この圏内には存在しうる。第3号機にプルトニウ ム・ウラン混合酸化物燃料MOXが使用されているからだ。
こうした状況でなぜ日本政府は半径30キロ圏内を 責任を回避する形での自主避難要請にしたのか理解に苦しむ。30キロではなく、40キロ圏内をただちに避難指示圏にすべきだ。
予 測できるのは、補償金の問題だ。今回福島原発事故の損害額の見積もりは4兆フラン( 約366兆円 ) 。同じことがスイスで起これば、電力会社が避難した人などへの補償金として保険から1.8億フラン( 約165億円 ) を払い、差額は政府が受け持つ。日本では、恐らく東京電力は支払えないだろうから政府の負担になるのだろうが、それが巨額なため自主避難要請にしたのでは ないかと推測する。避難しようとしまいとそれは個人の責任だということだ。
もう一度言うが、こうした事故での補償を含め、原発はとにかく巨額な支出になる。
しかし、原発はいつも安全だと宣伝されてきた。スリーマイル島でも、チェルノブイリでもこれらの事故は例外的に起こったのだと。特にチェルノブイリはロシアで、しかも古い型だったから起こったのだと宣伝されてきた。
swissinfo.ch : 福島原発事故も津波のせいだというのではないでしょうか?
ヴィルディ : 今回は津波のせいだけではない。地震、津波の想定値が低かった。設備の安全性のレベルが低かった。直ぐに冷却しなかった。情報が直ぐに伝わらなかったなど、明らかにこうしたさまざまな要素の総合で起きたのであって、津波だけだとは言えない。
もし理由が一つならそれを修正すればすむ。しかし、今回はすべてが悪かった。ではどうするのかということだ。
swissinfo.ch : 汚染水が海に流れ込んでいますが、今後の影響は?
ヴィルディ : 放射能の、特にヨード131とセシウム137が近海の魚貝類の中に蓄積されていく。中でも重いセシウムがたまっていく。従って、恐らく福島第一原発近海では今後4、50年は漁業ができないだろう。
近辺のアジアの国や太平洋の島などが、海流の関係で汚染される可能性があるかもしれないが、汚染がアメリカまで達するとは考えられない。海は巨大で放射能が拡散されるからだ。
結論として、今後数週間は高濃度の放射能が排出されるだろう。従って信頼できる測定システムを使い、正しい情報を半径40キロ圏やそれ以上の放射能濃度の高い地域の人々に知らせ、避難させることが緊急課題だ。その上で長期的な視点に立った解決策を探ることが重要だと思う。
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch
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以下は反原発のサイエンスライターである広瀬隆氏が書いた文章を転載しました。
彼は地球温暖化の原因の一つが原発の流す熱排水だという荒唐無稽な主張をしていて、以下の主張も有意差の有無について触れていないので、あくまで参考程度の仮説として考えて欲しい。
例えば1st trimesterの胎児には殆どヨウ素は移行しないので、5万倍の濃縮は起きません。
また地下核実験に移行するまでに大気圏内核実験で放出された放射性物質の量の方が圧倒的に多いので、間違っている部分もあります。しかし5~9歳で超過死亡が増えることは、チェルノブイリ周辺でも起きていることなので正しいのではないかと思っています。
文中のCommon unitsが分かりにくいので、SI units に換えて記載しました。
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原発がとまった日~一億二〇〇〇万人のための脱原発読本広瀬隆編著 より
ヨウ素131の生体濃縮
「空気中から植物体内に200万から1000万倍の濃縮」――-ヨウ素131は、なぜ、このようなすさまじい濃縮を示すのでしょうか? ヨウ素は、海には 豊富に存在しますが陸上にはきわめて乏しい元素です。ゆえに陸上に生息する生物は、乏しいヨウ素を必要な量まで濃縮する能力を身につけました。とくに、自 ら動くことができない植物がその能力を高め、それを食べることによって動物もまた、陸上でヨウ素を満たせるようになったのです。
天然のヨウ素に有害なものなどありません。ところが人類は、原子炉で放射性のヨウ素をつくり出してしまいました。生物は、そのヨウ素が人工なのか天然なの かを見分けることができません。有害な放射性ヨウ素を栄養だと思ってどんどん取り込みます。つまり、生きるため、成長するために備えている生命の仕組み が、まったく逆に作用し、有害なものをそれと知らずに濃縮するのです。
人間の体内にヨウ素131が入ると、天然のヨウ素を必要としている器官、甲状腺に集まります。ただし、例外が二つあります。妊娠中の女性がヨウ素を取り込 んだ場合、自分の甲状腺には集めず、大部分が胎盤を通じて胎児に集まります。また授乳中の母親の場合にも、乳腺を通じて赤ちゃんに集まります。しかも、そ うした幼い生命ほど成長に欠かせないヨウ素を必要としますから、大人の何倍もヨウ素を濃縮するのです。たとえば、妊娠二か月の胎児の体重は約5グラム、仮 に体重50kgの母親が取り込んだ放射能が全量移行した場合、5万倍の濃縮が行なわれます。
赤ちゃんや胎児にとつて、甲状腺は心身の成長を制御し、ホルモンを分泌する大切な器官です。そこに放射性のヨウ素が集まり、細胞を分子レベルで破壊する と、どのような障害が起きるかは、まだほとんど解明されていません。しかし、生まれつき甲状腺ホルモンの分泌に障害があるために起きる病気として、クレチ ン症(先天性甲状腺機能低下症)があることは紹介しておきます。表情に乏しい、不活発、便秘がひどいなどの症状が特徴で、放置すると発育障害を起こしま す。身体の発育がとまれば小人病や身体障害、あるいは内臓機能や免疫機能の低下、知能の発育がとまれば精薄になったりする恐ろしい病気です。
1980年5月21日『ワシントン・ポスト』 - スリーマイル島原発周辺 甲状腺異常児出生が増加?
スリーマイル島原子力発電所に隣接する、ランカスター、バックス、リーハイの三郡で、昨年四月から三月までの間に甲状腺機能低下症(クレチン症)と呼ばれ る欠陥をともなった赤ん坊が13人生まれた。通常この種の異常児の出生率は5000人に一人であり、1979年の同地域における総出生数約15200人 からすると3人がふつうだといわれる。州保健当局は同原子炉からの放射線漏れ事故がこれに関係しているかどうかの調査を開始する。
1981年2月25日『毎日新聞』 - スリーマイル原発事故直後 新生児の死亡率急上昇
米ピッツバーグ大学のアーネスト・スターングラス教授はこのほど、スリーマイル原発事故の発生直後から、風によって放射能がまき散らされたペンシルベニア 州、ニューヨーク州北部などの地域で、新生児の死亡率が40~50%も異常に急上昇したとの研究報告をまとめ、23日付の週刊誌『ネーション』に掲載し た。同原発事故については事故当時同州保健局長だったマクレオド同大学教授も、同じような指摘をする研究報告を行なっている。スターングラス教授は同原発 から排出された放射性のヨウ素131と133によって呼吸器系統などの発育に障害が起こり、死亡した可能性が強いと指摘している。
さて、スリーマイル原発事故では、どれだけのヨウ素131が放出されたのでしょうか? 公式発表では、事故2日後に周辺の牧場から集めた牛乳から1.33Bq/L検出されたのが最大値だと発表されています。たったの1.33Bq/Lです。1986年5月の日本では、10日茨城の原乳から11.5Bq/L、18日島根の原乳から25Bq/L、また、輸入の配合飼料ではなく、屋外で野草を食べていた千葉のヤギ乳からは87Bq/L が検出されました。
果たして日本の胎児および乳児は、どのような影響を受けたのでしょうか。
放射能の害は若者優先。若ければ若いほど影響を強く受けます。学童は大人の10倍、乳児と妊娠後期の胎児は、その10倍(大人の100倍)の影響を受ける といわれています。それ以上に感受性が高いのが妊娠初期の胎児。アリス・スチユワート博士によると、妊娠初期の胎児は妊娠後期の胎児にくらべ10倍も感受 性が高いということですから、大人にくらべ1000倍も放射能の影響を受けやすいということになります。
アーネスト・J・スターングラス博士は、核実験後の放射能の動きを追跡し、核実験が行なわれた風下のほうで、たくさんの赤ちゃんが死んでしまっていると発 表しました。その「死にすぎ分」はアメリカだけで37万5000人(1年未満に死亡した乳幼児総数)、さらに胎児死亡や自然流産や死産の数は、アメリカだ けで200万~300万人に達しているにちがいないと主張しています。また、スターングラス博士は、乳幼児と胎児の死亡率を急激に上昇させる最大の要因 は、最短時間に最高の放射線量を与える半減期の短い同位元素、すなわちヨウ素131などだと指摘しました (図3)。
また、日本がん学会で発表されたデータによると、1945年の第1回の核実験の5年後に日本の子どものガンが急増、大規模な核実験があるたびにガン死亡率がはね上がり、1965年ごろには、核実験をやらなかったころとくらべて増加率600%、6倍も増えています。
さて、1945年から1980年までに合計423回の大気圏内核実験が行なわれましたが、チェルノブイリ原発事故は、その過去のあらゆる核実験、原爆投 下、原子炉事故、原子炉運転などにより環境中に放出された放射線量に匹敵する量を、たった一回の事故で放出しました。ヨウ素131の放出量だけみても、ス リーマイル事故の約100万倍です。
そして日本でも、5月4日に千葉の雨水から検出された492Bq/Lのヨウ素131は、米英ソ3国が続けざまに行なった大気圏核実験後に日本で測定された最大放射能値の約100倍に匹敵するといいます。
あの当時、牛乳と野菜の摂取を避ければ、被曝の8割は軽減できたと思われます。事実、母乳を測定して1.1Bq/Lのヨウ素131が検出された母親が、驚いて翌日から野菜を食べるのをやめたら、とたんに母乳の放射能値はゼロに近づきました。
新聞やテレビで、せめて「妊婦と乳幼児を持つ母親は注意すべきだ」との呼びかけがなされていたら……。
私は、国民の健康よりも原子力行政を優先させた政府と、〝大本営〟発表をそのまま報道するしか能がなかったマスコミのことを一生忘れないでしょう。
さて、日本で政府の放射能対策本部が、いかに情報を操作するかに腐心し、マスコミがそれに加担し、国民のほぼ99%の人たちがチェルノブイリの放射能に対 し鈍感な反応を見せていたころ、ヨーロッパでは、とてつもない事態が進行していました。信頼できるデータが豊富な西ドイツのヨウ素131汚染を日本国内の 汚染と比較してみましょう。
ヨーロッパのヨウ素汚染
西ドイツにおける水道水の平常値は、すべての放射性物質を合わせても、0.1~0.2Bq/Lの範囲にありよした。また、1962~1965年の 核実験による牛乳汚染で、ヨウ素131の最大値は4Bq/L。牛乳の放射能値が3.7Bq/L(100pCi/L)を超えたときはそれを回収する といった規定がつくられ、チェルノブイリが起こるまではその効力が存続していました。
しかしチェルノブイリによる汚染は、なんと水道水が平常の270~450倍、牛乳は核実験ピーク時の1300倍の値を記録しました (表1)。
(表1注: SI units系に変換した。)
恐怖と不安のなかで、子どもたちのために、少しでも汚染されていない食品を探し求めた人びと。あたかも何も起こっていないかのように、平然といつもと変わ らぬ毎日を送った人びと。当時のヨーロッパでは、放射能について正しい認識を持てば持つほど、絶望的な日常生活を強いられたのです。
西ドイツからの報告のなかで、私が最も衝撃を受けたのは子どもの遊び場の汚染でした。
西ドイツの放射線防護規定では、37000Bq/m^2 (100万pCi/m^2)を超えた場合、放射線防護服の着用が必要と規定されていますが、ミュンヘン市の遊園地では4万Bq/m^2 (108万pCi/m^2)を超える数値が検出されました。つまり子どもたちが砂場で遊ぶにも放射線防護服が必要だということです。屋外で遊ぶことを 禁じられた子どもたち。
(筆者注:3月23日の飯舘村は、Cs-137が、16.3万Bq/kg×土壌20kg/m^2=326万Bq/m^2だった。チェルノブイリでは148万Bq/m^2以上のCs-137汚染で強制移住させた。)
何も知らされず泥んこになって遊んだ子どもたち。いったいどちらがより不幸だったのでしょうか。
ヨーロッパの子どもたちは、1986年5月の雨のことを生涯忘れることができないでしょう。
では、このような汚染のなかで、西ドイツ当局がどのような対応をしたのか、列記してみましょう。
・4月29日、連邦政府の科学研究相は、「この風向きであれば西ドイツに放射能の雲がやってくることはない」と言明した。
・5月6日、許容値の10倍を超える汚染野菜が出回っていたが、内務省は、野菜や牛乳は政府の許容量以下だから安全、測定された汚染値は人体に影響を与える量ではない、と言いつづけた。
・5月8日、放射線防護委員会は、飲料水の汚染が平常値のほぼ500倍を超えた段階で、飲料水の測定自体をやめるよう勧告した。それ以降、水道水の検査は行なわれていない。
・5月16日、放射線防護委員会は「低量放射能による胎児への危険はない。この事故による被曝線量は小さい。この線量は自然放射線の約1年分である。したがって胎児への障害は予想されない」という声明を発表した。
・当局は放射能測定値を外部に洩らさないよう関係部局に圧力を加え、妊婦や子どもの被曝線量を減らすような対策の発表を、いたずらに人心を動揺させるとの口実で抑えていた。
こうした西ドイツ当局の対応は、日本政府がとった対応と、あまりに似通っています。ひとたび原発事故が起きてしまったとき、「お上」 がどれほど危険な役割を演じるかは、もはや明白です。原発がこの世に存在するかぎり、私たちはこの教訓を忘れてはなりません。
チェルノブイリ原発から西ドイツのミュンヘンまでの距離は、ほぼ北海道の泊原発から鹿児島までの距離に相当します。同じように、チェルノブイリからポーラ ンドまでが、四国の伊方原発から東京、チェルノブイリからキエフまでが、浜岡原発から名古屋までの距離と考えてもいいでしょう。ひとたび日本でチェルノブ イリ級の事故が起きれば、日本国申すべての食品が汚染され、もはや私たちは、その「放射性物質」を自らの胃袋へ廃棄するしかないのです(表2)。
表3は、現在日本が設定している基準値です。野菜の基準値は、なんと7400Bq/kg (20万pCi)。
こんな基準値を持っている国は、世界中どこを探してもありません。すでに、日本国内の原発事故への準備は始まっています。いま原発をとめなければ、私たちは本当に7400Bq/kgの野菜を食べさせられるでしょう。
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≪今後の課題≫
東海地震の震源の真上にある浜岡原発を止めないと、遠くない将来に起きる東海地震では福島以上の被害が出て、偏西風に乗って東京の汚染は酷いものになる可能性が高いです。
東京に住む者は、政府や中部電力に働きかけて停止させる必要があります。
福井も地盤が緩く、危険です。
筆者・2011年4月17日記
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アメリカ在住の方から以下の資料を教えて頂きました。
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf
これは、今まで西欧諸国側に出ず、
ロシア語・ベラルーシ語などの言語のまま埋もれていた資料を
半分ほど掘り返して翻訳・集計した資料だそうです。
甲状腺以外の健康被害、特に性腺への影響から周産期死亡が増えていることや、
人間より世代交代が早い動植物で個体減少や奇形が起きていることが気掛かりです。
Cs-137による乳癌の増加があるかどうか、流産も含めた周産期死亡、奇形の増加があるかどうかを福島で長期に渡って調査する必要があります。最終的な結論は30年後になりそうです。
外部被爆は大したことのないレベルになっていますが、まだ若い人が福島周辺の飲食物を摂取することは控えた方が良いでしょう。
筆者・2011年9月29日記
チョウの羽や目に異常=被ばくで遺伝子に傷か―琉球大
時事通信 2012年8月10日(金)21時29分配信
東京電力福島第1原発事故の影響により、福島県などで最も一般的なチョウの一種「ヤマトシジミ」の羽や目に異常が生じているとの報告を、大瀧丈二琉球大 准教授らの研究チームが10日までにまとめ、英科学誌に発表した。放射性物質の影響で遺伝子に傷ができたことが原因で、次世代にも引き継がれているとみら れるという。
大瀧准教授は「影響の受けやすさは種により異なるため、他の動物も調べる必要がある。人間はチョウとは全く別で、ずっと強いはずだ」と話した。
研究チームは事故直後の昨年5月、福島県などの7市町でヤマトシジミの成虫121匹を採集。12%は、羽が小さかったり目が陥没していたりした。これら のチョウ同士を交配した2世代目の異常率は18%に上昇し、成虫になる前に死ぬ例も目立った。さらに異常があったチョウのみを選んで健康なチョウと交配し 3世代目を誕生させたところ、34%に同様の異常がみられた。
http://www.nature.com/srep/2012/120809/srep00570/full/srep00570.html
The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly
Scientific Reports
2,
Article number:
570
doi:10.1038/srep00570
Received
06 June 2012
Accepted
24 July 2012
Published
09 August 2012
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The collapse of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant caused a massive release of radioactive materials to the environment. A prompt and reliable system for evaluating the biological impacts of this accident on animals has not been available. Here we show that the accident caused physiological and genetic damage to the pale grass blue Zizeeria maha, a common lycaenid butterfly in Japan. We collected the first-voltine adults in the Fukushima area in May 2011, some of which showed relatively mild abnormalities. The F1 offspring from the first-voltine females showed more severe abnormalities, which were inherited by the F2 generation. Adult butterflies collected in September 2011 showed more severe abnormalities than those collected in May. Similar abnormalities were experimentally reproduced in individuals from a non-contaminated area by external and internal low-dose exposures. We conclude that artificial radionuclides from the Fukushima Nuclear Power Plant caused physiological and genetic damage to this species.
Subject terms:
Figures at a glance
Introduction
introduction
Massive amount of radioactive materials were released from the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant (NPP) to environment due to the Great East Japan Earthquake1, 2, 3, 4, 5, 6. However, precise information on exactly what occurred and on what is still ongoing is yet to be established7, 8. This lack of information raises serious concerns about biological influences on living organisms that could ultimately produce long-term destruction of ecosystems and cause chronic diseases. Prompt and reliable evaluation of the biological influences of the artificial radionuclides from the Fukushima Dai-ichi NPP is lacking, and only a few studies have been performed to date9, 10. In the case of the Chernobyl accident, changes in species composition and phenotypic aberration in animals11, 12, 13, 14, 15, 16, 17 and an increase in the incidence of thyroid and lymph cancers in humans18 have been reported. Similarly, an increase in the incidence of cancers has been reported for atomic bomb survivors in Hiroshima and Nagasaki, Japan19. However, the effects of low-dose radiation exposure on animals, including humans, are still a matter of debate20, 21, 22 despite the relatively rigorous documentation of physiological damage to animals from external high-dose radiation exposure. Moreover, one of the greatest concerns is the possible inheritance of the adverse effects of exposure by the offspring of the exposed individuals. However, experimental demonstration of genetic mutations in the germ-line cells that are inherited by the offspring of radiation-exposed parents has been scarce, although the germ-line damage was shown in barn swallows23.
We address these important issues in connection with the recent Fukushima Dai-ich NPP accident. We use the pale grass blue butterfly Zizeeria maha (Lepidoptera, Lycaenidae) as an indicator species to evaluate the environmental conditions. A reliable rearing method has been established for this species24. Butterflies are generally considered useful environmental indicators10, 15, 25, 26, and this species is particularly suitable for this purpose because it is widespread in Japan, including the Fukushima area, and because its wing colour patterns are sensitive to environmental changes24, 27. In the past, this species was used to evaluate the ecological risk associated with transgenic maize pollen28, 29.
The meltdown and explosion of the Fukushima Dai-ichi NPP occurred on 12 March 2011, when Z. maha was overwintering as larvae. On that date and thereafter, these larvae were exposed to artificial radiation not only externally but also internally from ingested food. In this study, we examine possible physiological and genetic changes in this butterfly in the Fukushima area resulting from damage by artificial radionuclides from the Fukushima Dai-ich NPP. We also evaluate the risk of external exposure and that of internal exposure to ingested radionuclides.
Results
results
Abnormalities in field-caught individuals and their F1 offspring
We collected 144 first-voltine adults (111 males and 33 females) from 10 localities (Shiroishi, Fukushima, Motomiya, Koriyama, Hirono, Iwaki, Takahagi, Mito, Tsukuba, and Tokyo) approximately 2 months after the accident on 13–18 May 2011 (Fig. 1a; Supplementary Table 1). Most of the collected adults appeared morphologically and behaviorally normal, but mild morphological abnormalities were detected in some individuals upon close inspections (Fig. 1b–e; Supplementary Table 2). The overall abnormality rate for 7 localities (excluding Shiroishi, Koriyama, and Tokyo to allow comparisons with the second phase of field work in September) was 12.4% (Table 1). The male forewing size (from the base to the apical end) was different among populations (ANOVA, df = 7, F = 4.0, p = 0.00093); it was significantly reduced in the Fukushima population in comparison with the Tsukuba population (t test with pooled SD, p = 0.00091, Holm-corrected by 28 combinatorial pairs, excluding Shiroishi and Koriyama due to small sample sizes) and with the Hirono, Tokyo, and Takahagi populations (t test with pooled SD, p = 0.018, 0.018, and 0.038, respectively, Holm-corrected by 28 pairs as above) (Fig. 1c). The male forewing size was negatively correlated with the ground radiation dose at the collection localities (Pearson correlation coefficient r = −0.74, df = 8, p= 0.029, Holm-corrected by 2 pairs [ground radiation dose and distance from the NPP]) (Fig. 1d).
Figure 1: First-voltine collection and abnormalities.
(a) Collection localities. A red dot indicates the location of the Fukushima Dai-ichi NPP. Black dots and black half dots indicate the cities from which the first-voltine adults were collected. Brown dots and brown half dots indicate cities from which the host plant leaves were collected for the internal exposure experiment. All experiments were performed in Okinawa, marked by a blue dot. Inset shows the collection localities around the NPP. (b) Representative wings with normal (leftmost) and aberrant colour patterns. Numbers 1, 2, 3, and 4 indicate the first, second, third, and fourth spot arrays, respectively, and “D” indicates the discal spot. Red arrows indicate loss, dislocation, and weak expression of spots (left individual), weak expression and dislocation of spots (middle individual), and enlargement of spots (right individual). These samples were caught in Mito except for the leftmost aberrant specimen, which was caught in Iwaki. Scale bar, 1.0 cm. (c) Male forewing sizes from various localities. The first quartile and third quartile were indicated by horizontal bars at the bottom and top of the box, respectively. Median is indicated as the centre line inside the box. Outliers were indicated by dots. A red dot indicates the mean value and a red bar the standard deviation (SD). Holm-corrected p-values are shown, which were obtained for pairwise comparisons among 8 localities using t tests with pooled SD. Only male samples were used here because when the female samples were used to obtain eggs, broken wings resulted from the egg collection procedure. Samples from Shiroishi (n = 5) and Koriyama (n = 3) were excluded because of small sample sizes. (d) Scatter plot of the male forewing size and ground radiation dose at each collection locality. Pearson correlation coefficient r = −0.74 (Holm-corrected p = 0.029). (e) Representative morphological abnormalities. From left to right, dented eyes (Shiroishi), deformed left eye (Iwaki), deformed right palpus (Takahagi), and deformed wing shape (Fukushima). Arrowheads indicate deformation. Scale bars, 0.50 mm with the exception of the rightmost bar, which is 1.0 cm.
Table 1: Overall abnormality rate (OAR) of adults
Based on the established rearing method24 (Supplementary Fig. 1), we obtained F1 offspring from the female parents caught in the Fukushima area. This and all the following experiments were performed in Okinawa, located 1,750 km from the Fukushima Dai-ichi NPP (see Fig. 1a), where artificial radiation can scarcely be detected. Some of these field-caught parents had mild abnormalities (Supplementary Table 2), but those from Motomiya showed no detectable abnormalities and appeared to be morphologically and behaviorally healthy. In the F1 generation (Supplementary Tables 3, 4), the mortality rates of larvae, prepupae, and pupae and the abnormality rate of adults were high for Iwaki, Hirono, Motomiya, and Fukushima, and overall abnormality rate of the F1 adults was 18.3% (Table 1), 1.5 times the overall abnormality rate of the parent generation. The eclosion-time dynamics (Fig. 2a) as well as the pupation-time dynamics (Supplementary Fig. 2a) varied among the F1 populations from different localities. The eclosion curves of all of the local populations examined differed significantly from the eclosion curve of the Tsukuba population (generalized Wilcoxon test, p < 0.00001 in all population groups, Holm-corrected by 28 pairs). Essentially identical results were obtained in the pupation curve (Supplementary Figure 2a). The half-eclosion time was negatively correlated with the distances of the collection localities from the Fukushima Dai-ichi NPP (r = −0.91, df = 6, p = 0.045, Holm-corrected by 30 pairs [{ground radiation dose and distance from the NPP} versus {abnormality rates of four stages (called “total”), adults, wings, colour patterns, appendages, and others; mortality rates of pupae, prepupae, and larvae; periods of prepupae and pupae; peak days of eclosion and pupation; half days of eclosion and pupation}]) (Fig. 2b). Similarly, half-pupation time was negatively correlated, but not significant statistically (Supplementary Fig. 2b).
Figure 2: F1 abnormalities.
(a) Eclosion-time dynamics. Cumulative percentages of eclosed individuals were plotted against eclosion day. All local populations differ significantly from the Tsukuba population (generalized Wilcoxon test, Holm-corrected p < 0.00001). (b) Scatter plot of half-eclosion time and distances of the collection localities from the NPP. Half-eclosion time was derived from the eclosion-time dynamics shown in (a) as the time when 50% of the pupae eclosed. Pearson correlation coefficient r = −0.91 for half-eclosion time (Holm-corrected p = 0.045). (c) Scatter plot of abnormality rate of appendages and distances from the NPP. Pearson correlation coefficient r = −0.86 (Holm-corrected p = 0.18). (d) Representative morphological abnormalities of appendages. Miniaturized left foreleg tarsus (Fukushima F1, leftmost), undeveloped left middle leg tarsus (Fukushima F1 and Hirono F1, second and third from the left, respectively), and undeveloped palpi (Takahagi F1, rightmost) were structurally abnormal, reminiscent of Drosophila Distal-less mutants. Arrowheads indicate abnormal structures. Insets show enlargements of boxed areas. Scale bar, 0.50 mm. (e) Representative morphological abnormalities of eyes. Both compound eyes were dented (Fukushima F1, left), and left compound eye was bar-like in shape (Hirono F1, right), reminiscent of Drosophila Bar mutants. Scale bar, 0.50 mm. (f) Representative wing size and shape deformation. Right hindwing was much smaller than the left hindwing of the same individual (Fukushima F1, left), wings were folded (Takahagi F1, middle), and wings were rumpled (Iwaki F1, right). Scale bar, 1.0 cm. (g) Representative wing colour-pattern modifications. The top left three individuals are F1 individuals from an Iwaki parent, and the top rightmost individual is a Hirono F1. The bottom samples, from left to right, are F1individuals from Hirono, Mito, Shiroishi, Motomiya, and Motomiya. Arrows indicate modified spots. Scale bar, 1.0 cm.
We also observed a negative correlation between the F1 abnormality rate of appendages and the distances from the NPP, although not significant statistically (r = −0.86, df = 6, p = 0.18, Holm-corrected as above) (Fig. 2c). We detected morphological malformations in various parts (Supplementary Table 4) including legs, antennae, palpi, eyes, abdomen, and wings (Fig. 2d–g). In addition to dented compound eyes (Fig. 2e, left), the entire eye structure was deformed in a pattern similar to that of Drosophila Bar mutants (Fig. 2e, right). Wing aberrations, including broken or wrinkled wings, were found in many individuals (Fig. 2f). Asymmetric hindwing size reduction was observed in a few individuals (Fig. 2f, left). Colour-pattern changes were relatively frequent (Fig. 2g). In one individual, the third spot array was located closer to the second array. In another individual, spots were deleted or added, which was occasionally found only in a right or left wing. In another individual, spots were fused together. Additionally, wing-wide spot enlargement was relatively common, especially in individuals from Iwaki. This spot enlargement pattern differs from those observed at the northern range margins and from those induced by temperature shocks24, 27. It also differs from those seen in sibling inbreeding24.
It is noteworthy that we obtained relatively high abnormality rates for the F1 populations from Motomiya, the parents of which showed no detectable abnormal phenotype. Other parents used for egg collection were also comparably normal and vigorous. The abnormal F1 individuals obtained from healthy parents suggest that genes that are important in morphological development were damaged by radiation at the stage of germ-line cell development in the parents.
Inheritance of abnormalities by the F2 generation
We tested the fertility of these abnormal F1 individuals and the inheritance of their abnormal traits. We chose 10 F1 females with abnormal traits (except one female from Shiroishi, which did not have any detectable abnormal trait) and crossed them with non-abnormal F1 individuals from Tsukuba. Of the collection localities from which the F1 offspring were obtained, Tsukuba was the farthest from the Fukushima Dai-ichi NPP (Supplementary Table 4) and therefore chosen as the source of the non-abnormal F1 adults. To avoid failure due to the unexpected infertility of the males, we put 3 normal virgin males for 1 virgin female in a single cage. Although our mating system is nearly always successful and yields more than 100 offspring per female if both males and females are fertile24, 3 females out of 10 produced only a limited number of offspring, i.e., less than 2 adult offspring (Supplementary Table 5). Nonetheless, we were able to obtain a reasonable number of eggs from other females and successfully reared these offspring to the adult stage.
The F2 generation showed a relatively high abnormality rate (Fig. 3a; Supplementary Table 6). The overall abnormality rate in the F2 adults was 33.5% (Table 1). An important finding was that certain traits observed in the F1 generation were inherited by the F2 generation (Fig. 3b; Supplementary Table 6). Colour-pattern modifications were relatively frequent (Fig. 3c). Wing-wide spot enlargement was evident especially in the Iwaki F2 generation as in the Iwaki F1 generation discussed above. In particular, 52.4% of the Iwaki F2 females in the strain “Iwaki1” inherited this trait; this inheritance was biased towards females (Supplementary Table 6). Abnormalities of appendages were also relatively frequent (Fig 3d). A striking antenna malformation, or a forked antenna, was observed in a F2 individual from Takahagi (Fig 3d). This abnormality had never been seen in the F1 and other individuals that were reared in our laboratory. These results demonstrated that the abnormal traits observed in the F1 generation were inherited by the F2 generation and that it is highly probable that these characteristics are caused by genetic damage introduced to the parent germ-line cells, possibly due to the Fukushima Dai-ichi NPP accident.
Figure 3: F2 abnormalities.
(a) Abnormality rate for the F2 generation. The x-axis shows strain names that indicate the local origin of their P generation. The total number of individuals (corresponding to 100%) was indicated for each strain. See also Supplementary Table 3. (b) Identical and homologous abnormality rates. The number of individuals that show abnormal traits identical to the F1 parents was divided by the total number of individuals obtained and expressed as a percentage. Similarly, the number of individuals that show abnormal traits in organs, such as wings and appendages, homologous with those in their F1 parents was divided by the total number of individuals obtained and expressed as a percentage. The total number of abnormal individuals (corresponding to 100%) was indicated for each strain. (c) Representative wing colour-pattern aberrations. Arrows indicate modified spots and wing parts. The top leftmost wings are the wing-wide spot elongation type of the Iwaki F2, a phenotype similar to that of its F1 parent shown in Fig. 2g. The top four samples, from left to right, are Iwaki F2, Takahagi F2, Iwaki F2, and Fukushima F2 individuals. All of the samples at the bottom are Fukushima F2 individuals. The bottom middle and rightmost wings show a deformation of the hindwing shape, which were obtained from the offspring of the Fukushima F1 parent that had the small hindwing shown in Fig 2f. Scale bar, 1.0 cm. (d) Antenna and leg malformations. The left panel shows a Takahagi F2 individual with a malformation of left antenna, which is short and forked (arrowheads). The right panel shows a Takahagi F2 individual with a deformation of the left hindleg femur. Insets show pictures taken from different angles. Scale bars, 0.50 mm.
More severe abnormalities 6 months after the accident
To assess the possible genetic and ecological impacts of the Fukushima nuclear accident on the populations of Z. maha, we asked if any abnormalities similar to those found in the F1 and F2generations in the laboratory from the first-voltine females were observed in the field 6 months after the accident. We again collected Z. maha adults from the 7 localities (i.e., Fukushima, Motomiya, Hirono, Iwaki, Takahagi, Mito, and Tsukuba; 18–21 September 2011) and from Kobe (3–4 October 2011) (see Fig. 1a). They were probably the fourth- or fifth-voltine individuals. We collected a total of 238 individuals (168 males and 70 females) from these localities (Supplementary Table 1). We observed frequent malformations of legs and antennae as well as wing colour-pattern aberrations (Fig. 4a; Supplementary Table 7). The overall abnormality rate for the 7 localities (excluding Kobe to allow comparisons with the first phase of field work in May) was 28.1%, more than double that observed in the field-collected first-voltine adults in May (Table 1). The total abnormality rate of the field-collected adults in September 2011 was correlated with the ground radiation dose at the collection localities (r = 0.84, df = 6, p = 0.13, Holm-corrected by 14 pairs [{ground radiation dose and distance from the NPP} versus {abnormality rates of adults, wings, colour patterns, appendages, and others, and wing sizes of males and females}]) (Fig. 4b).
Figure 4: Abnormalities in the adult samples collected in September 2011 and in their F1 offspring.
(a) Representative morphological abnormalities of the field-caught individuals. Insets are enlargement of the boxed areas. The tarsus of the left hindleg was structurally abnormal (Hirono, left), the tarsus of the right foreleg was not developed at all (Fukushima, second from left), the right antenna (an arrowhead) was elongated with abnormal structure and colouration (Motomiya, second from right), and the wing colour-patterns and wing shape were modified as indicated by arrows (Iwaki and Fukushima, right). All scale bars indicate 1.0 mm with the exception of the rightmost bar, which is 1.0 cm. (b) Scatter plot of ground radiation dose and abnormality rate of the field-caught adults. Pearson correlation coefficient r = 0.84 (Holm-corrected p = 0.13). (c) Representative abnormalities in the F1 generation. The left three panels indicate malformations of left foreleg tarsus (an arrowhead) (Takahagi F1, top), tumor-like solid protuberance (arrowheads) in the ventral side of the thorax (Takahagi F1, middle), and dented eyes (Fukushima F1, bottom). Scale bars in the left three panels all indicate 1.0 mm. Wing colour-pattern modifications (arrows) of the F1 samples were shown on the right: from left to right, Iwaki, Iwaki, Motomiya, Hirono, and Takahagi (top), and Takahagi, Motomiya, Motomiya, Fukushima, Motomiya, and Motomiya (bottom). Scale bar in the wing panel indicates 1.0 cm.
In the F1 generation from the September samples, the mortality rate and the abnormality rate were relatively high (Supplementary Tables 3, 4), and abnormalities similar to those observed in the field-collected September samples were observed (Fig. 4c). The overall abnormality rate of the F1 adults was 59.1% (Table 1). These results demonstrated that the September populations in the Fukushima area deteriorated in comparison with the May populations, possibly due to genetic damage caused by radiation from the Fukushima Dai-ichi NPP, as predicted from the results of our previous breeding experiments using the first-voltine adults.
Effects of external and internal exposures
To experimentally reproduce the abnormal phenotypes obtained from the field and in the breeding experiments, we artificially exposed larvae and pupae that were obtained from females caught in Okinawa to radiation from 137Cs, one of the major radionuclides released from the Fukushima Dai-ichi NPP, up to 55 mSv (0.20 mSv/h) or 125 mSv (0.32 mSv/h). In both exposure levels, we observed abnormal traits (Fig. 5a) and forewing size reduction in both sexes in comparison with non-irradiated controls (t test, p < 0.00001 in both sexes) (Fig. 5b). The survival curves indicated dose-dependence; the 55-mSv and 125-mSv curves differed significantly from each other (generalized Wilcoxon test, p = 0.0040, Holm-corrected by 6 pairs). We also observed significant differences between the 55-mSv curve and its control (generalized Wilcoxon test, p = 0.018, Holm-corrected as above) and between 125 mSv curve and its control (generalized Wilcoxon test, p = 0.0000026, Holm-corrected as above). The survival curves also indicated that external exposure caused frequent deaths at the prepupal stage and that the higher dose mainly affected the pre-eclosion and eclosion stages (Fig. 5c).
Figure 5: External and internal exposures.
(a) Representative abnormalities obtained by external exposure. Left hindleg tibia and tarsus, antennae, palpi, and an eye showed abnormal structures (All exposed at 125 mSv with the exception of the left bottom individual, which was exposed at 55 mSv. All scale bars, 1.0 mm). Aberrant wing colour patterns are indicated by arrows and boxes (Left wings exposed at 55 mSv and right wings at 125 mSv. Scale bar, 1.0 cm). Inset shows the enlarged boxed area. (b) Forewing size reduction in the externally exposed individuals at 55 mSv (t test). (c) Survival curves of individuals that were exposed externally. Differences between the exposed at 55 mSv and its control (Holm-corrected p = 0.018), between the exposed at 125 mSv and its control (Holm-corrected p = 0.0000026), and between the exposed at 55 mSv and at 125 mSv (Holm-corrected p = 0.0040) were statistically significant (generalized Wilcoxon test). (d) Survival curves of individuals that ingested contaminated leaves from different localities. The host plant collection localities are shown. All curves differed from the non-contaminated Ube curve (generalized Wilcoxon test, Holm-corrected p < 0.000001). The Hirono curve was different from the Fukushima curve (Holm-corrected p = 0.0017) and from the Iitate flatland curve (Holm-corrected p = 0.00035) (generalized Wilcoxon test). (e) Scatter plot of the 137Cs activity of the host plant and pupal mortality rate (r = 0.91) and colour-pattern abnormality rate (r = 0.96). (f) Forewing size reduction in the internally exposed individuals (t test). (g) Representative abnormalities of individuals that ingested contaminated leaves. From the top left to the right bottom, the panels show right antenna malformation (Iitate montane region), right palpus abnormality (Fukushima), dented left compound eye (Iitate flatland), eclosion failure (Fukushima), bent wings (Fukushima), additional bent wings (Hirono), aberrant wing colour patterns (Fukushima), and an ectopic black spot beside the discal spot (Iitate flatland; enlargement in the inset). Arrowheads indicate abnormal parts, and arrows indicate deformed wing spots. Scale bars for the top four panels indicate 1.0 mm, and those for the bottom four panels indicate 5.0 mm.
To evaluate the effects of internal exposure caused by ingested food, we fed host plant leaves collected from the Fukush