臍ヘルニアは5%の乳児に見られる頻度の高い疾患です。
(白人では10%、アフリカ系黒人では30%と人種間で差が大きい。)
ヘルニア門が2cm以下のものは95%が自然治癒することと、
嵌頓が非常に稀なことから、従来”様子見”が指導されてきました。
しかしヘルニア門が2cm以上だと、手術が必要になるケースも多く、
自然治癒傾向が乏しくなります。
サイズに依らず、総じて言うと1歳までに約80%、2歳までに約90%以上が自然治癒します。
年齢的には1歳を過ぎると自然治癒傾向は乏しくなります。
これらに対して、圧迫固定法で治療を行った場合、
生後3ヶ月未満で治療開始 したものは96%以上の効果があります。
3~4ヶ月で67%、
4ヶ月以上で始めた場合の効果は0%でした。
通常、治療開始から1ヶ月で20%、2ヶ月で50%、3ヶ月以内に85~90%が治癒し、
7ヶ月までに95~100%の例で治療効果が期待できます。
サイズの大きな臍ヘルニアにはかなり有効な方法です。
また乳児早期に閉鎖するため治癒後の皮膚の弛みが少なくなり、
自然治癒した場合と比べて美観的優位性があると小児科の学会で報告されています。
治療は至って単純で、出っ張った臍をサイズのあった綿球で押さえて固定するだけです。
サイズの小さなヘルニアは皮膚を寄せなくても押さえるだけで治りますが、
サイズの大きなヘルニアは皮膚を寄せて固定します。
この治療法の唯一、難しい点は皮膚がかぶれることです。
テープの粘着剤の質、皮膚に掛けるテンションの強さ、児の皮膚の過敏性
によってかぶれやすさが違ってきますが、
通常、以下の素材を使って固定すれば3日間程度貼り続けてもかぶれないようです。
キズパワーパッド
http://www.jnj.co.jp/consumer/bandaid/products/medicaltools/
(Amazonで購入可能。サイズは、普通、中、大、があります。大を使うことは滅多にありません。)
デュオアクティブET
https://www.mimaki-family.com/item/item_4296.html
を購入してください。
小児外科医の中には否定的な意見もありますが、
その理由は、
1.効果がはっきりしていない。
2.皮膚疾患を合併しやすい。
というものです。
これらに対し、上記のような有効性の統計があり、最新の素材で皮膚疾患の合併も防げるようになりました。
臍ヘルニア圧迫法を施行している医療機関
http://c2.cgiget.com/cgi/mezase/u/debeso/
でやり方を教わるか、自信がないなら3~5日に1回通院しながらやっていただくと良いでしょう。
主に自宅で行う場合も、時々、皮膚の状態と、ヘルニア門の閉鎖を小児科でチェックしてもらってください。
1歳を過ぎても閉じない場合や、閉じた場合でも、余剰皮膚が気になる場合は、小児外科を受診してください。
いずれの場合も、通常2歳以降に手術を行います。
臍が大きく飛び出しても、嵌頓して緊急手術になることは通常ありませんが、
固く緊張している場合や、赤く腫れている場合は嵌頓が疑われるため緊急に受診してください。
(日本での嵌頓頻度は0.6%。腹水の存在や、結合織病や二分脊椎による筋の脆弱や麻痺が誘因になりやすい。)
鼠径ヘルニアは1~6%の人に生じます。
(通常3~5%ですが、出生体重2500g以下では6~20%に合併します。AFD児よりSFD児に多いです。)
男児は腸管、女児は卵巣が飛び出すことが多く、右側が60%、左側が30%、両側性が10%です。
出生時の体重が1500g未満の児では頻度が多いものの、6割程度で自然治癒が期待できます。
一方、成熟児では頻度は低いものの、自然治癒傾向は6~35%と低いようです。
自然治癒は通常月齢8までに起こるとされるため、手術は月齢8~12まで待つ施設と
月齢3以降であれば、発見次第手術する施設があるようです。
嵌頓して戻らない場合は、緊急手術になることもあり、
小児外科で定期的に診て頂き、適切な時期に手術を受ける必要があります。
手術は原則、月齢3以降、もしくは月齢8~12に行います。
手術は全身麻酔下で行います。