<漢方の欠点>
1.多くの処方が苦い!
漢方薬は味が苦くて、小児では飲めない子が多いのが最大の欠点です。
内服できない子の比率は年齢にもよるのですが、
1歳前後の味覚が十分発達してきた頃から反抗期が終わる頃までが最も内服させることが難しく、
内服できる子の比率は、ゼリー、ヨーグルト、ミルク、アイスクリーム、ココア、ジャム、コンデンスミルクに混ぜて
母親が努力しても、おそらく半数以下~半数前後と思われます。
しかし飲める子の過半数に有効性を示します。
乳児期は味覚が十分発達していないので、水に溶いて練り、口にスプーンやスポイトで入れると
嫌そうな顔をしながらも多くの乳児はペチャペチャと飲んでしまいます。
4歳以降ぐらいからは”誉め殺し”が最善の方法です。
また内服する意義を説いたり、採血された経験のある子では「注射よりはいいでしょ?」と脅しているお母さんもいます。
<飲みやすい処方>
葛根湯、桂枝湯、小建中湯、黄耆建中湯、桂枝加芍薬湯、五苓散、補中益気湯、
六君子湯、四君子湯、麻黄湯、五虎湯、治頭瘡一方、甘麦大棗湯など
<飲みにくい処方>
小青竜湯、黄連解毒湯、温清飲、荊芥連翹湯、人参湯、柴胡剤全般など
(要するに生薬として、黄連、黄ごん、黄柏、細辛、辛夷、柴胡、荊芥、呉茱萸が入ったものが苦い。)
2.柴胡や人参を含む処方は比較的高価である。
ツムラの処方では薬価の高い順に並べると、
柴苓湯(1日薬価542.7円)、小柴胡湯加桔梗石膏(同364.5円)、柴朴湯(333.75円)、黄連湯(311.25円)、柴陥湯(307.5円)、
当帰湯(297円)、小柴胡湯(278.25円)、竹じょ温胆湯(273円)、加味帰脾湯(261.75円)、
茵ちん五苓散(247.5円)、人参養栄湯(1日薬価235.8円)、柴胡桂枝湯(234円)、補中益気湯(228.75円)、
半夏白朮天麻湯(228円)、猪苓湯合四物湯(225円)、半夏瀉心湯(219円)、温経湯(215.25円)、大柴胡湯(214.5円)、
女神散(209.25円)、白虎加人参湯(207.9円)、柴胡清肝湯(204.75円)、清暑益気湯(204円)、
柴胡加竜骨牡蛎湯(201.75円)、麦門冬湯(201.6円)、炙甘草湯(201.6円)、
六君子湯(196.5円)、啓脾湯(195.75円)、帰脾湯(191.25円)、苓甘姜味辛夏仁湯(189円)、清心蓮子飲(186円)、
茯苓飲合半夏厚朴湯(185.25円)、柴胡桂枝乾姜湯(182.25円)、大建中湯(180円)、
という順位で高価です。
腸間膜静脈硬化症に山梔子の長期服用が関与
JR大阪鉄道病院消化器内科部長の清水誠治氏は,生薬の山梔子(サンシシ)を含む漢方薬の長期服用が腸間膜静脈硬化症の発症に関与していることを,第22回日本消化器関連学会週間(JDDW 2014;10月23~26日,運営委員長=防衛医科大学校校長・三浦総一郎氏)のワークショップ「希少消化管疾患の臨床像と問題点(消化管アレルギー含む)」で報告した。厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業「腸管希少難病群の疫学,病態,診断,治療の相同性と相違性から見た包括的研究(代表研究者=北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター長・日比紀文氏)」が行った全国実態調査から明らかになった。
9割近くが漢方薬を服薬
腸間膜静脈硬化症は,腸間膜静脈の線維性肥厚・石灰化によって起こる比較的まれな虚血性の大腸疾患である。
今回の調査は,同疾患の発症要因(特に漢方薬の関与),病像,経過,治療の現状を明らかにすることを目的に行われた。昨年,1,400施設にアンケートを送付し,133施設から222症例の回答が寄せられた。
その結果,男女比は1:1.8と女性に多く,年齢は26~89歳(平均63.8歳),ピークは70代だった。症状は,腹痛が最多で約半数(100例),そのほか下痢(38例),イレウス,腹部膨満(各37例)と続いたが,無症状の症例も約4分の1に認められ,診療上,注意を要する点として挙げられる。
基礎疾患は多岐にわたるが,高血圧症(73例),肝疾患(40例),高脂血症(22例)が上位3疾患だった。
今回の調査の焦点となった漢方薬服用に関する病歴の聴取は222例中169例(76.1%)で行われており,147例(87.0%)で漢方薬の服用が確認された。このうち,119例(81.0%)がサンシシを含む漢方薬を服用していたが,詳細不明,サンシシが含まれない漢方薬も各14例あった。
生薬としてサンシシが含まれる漢方薬のうち,実際に服用されている漢方薬の種類は,加味逍遥散37例,黄連解毒湯36例,辛夷清肺湯14例,茵蔯蒿湯13例が多く,服薬期間は3~51年(平均13.6年)と長期に及び,5年以上の服薬例が9割以上,10年以上が約7割を占めた。
服薬中止後の手術例はなし
内視鏡所見の特徴として挙げられるのは,色調異常(98.5%)の他,浮腫,伸展不良,びらん,潰瘍も半数以上の症例で認められた。部位は上行結腸では100%に所見を認め,下部に行くに従って低下していくことが分かった。
また,同疾患の診断のポイントとなる腸間膜静脈の石灰化は,単純X線で66.1%,CTで91.2%に認められ,両者が行われた156例から単純X線の感度を求めたところ,73.7%だった。
治療は,無治療が73例(33.0%),無治療からの漢方薬休薬が13例(5.9%),漢方薬中止が73例(33.0%)などで,最終的に手術に至った症例は約2割だった。サンシシを含む漢方薬の服薬者では半数以上の症例で漢方薬の中止が行われ,服薬中止後の手術例は見られなかった。
清水氏は「腸間膜静脈硬化症が疑われる場合,漢方薬服薬の聴取を行い,判明したら服薬中止の指示をすることで手術を回避でき,緩徐ではあるが石灰化の改善が期待できる。今後,漢方薬以外の発症要因の特定や,有効な内服治療などを検討していく必要がある」と述べた。