<肺炎球菌ワクチン>

<肺炎球菌23価ワクチン>

日本で高齢者に接種されている肺炎球菌23価ワクチン(万有のニューモバックスNP)は通常は任意接種であり、健康保険がきくのは脾臓を摘出した患者のみということになっています。

23価ワクチンは非タンパク抗原を用いているため免疫原性が弱く2歳未満児には無効です。

<肺炎球菌7価ワクチン>

海外では乳児への定期接種に組み込まれている多価タンパク結合肺炎球菌ワクチン

(通常7価ワクチン。Pneumococcal conjugateと言う。商品名は Prevnar。アメリカでは2000年承認、同年定期接種開始。

承認国数は74カ国、定期接種採用はそのうち8カ国。血清型は、4、6B、9V、14、18C、19F、23F。

この7価で侵襲性のある肺炎球菌のうち75%程度をカバーする。)

は2歳未満にも有効で、月齢2から接種されています。

アメリカでは2000年から接種を開始し、2002年までの2年間で肺炎球菌による化膿性髄膜炎は58%に、

蜂窩織炎は51%に、菌血症は68%に減少しました。

Hibと同様に肺炎球菌も5歳未満児に感染リスクが高いので、定常状態に達するには、

0歳児が接種を受け、5歳に達するまで約5年以上かかります。

(健康保菌者である5歳以上の兄弟の保菌率が今後下がって、年少兄弟への家庭内感染が低下する可能性もありますが、

後述する中耳炎のデータからするとその可能性は低そうです。)

ですから5年以上経過しないと肺炎球菌7価ワクチンの効果は正しく評価できませんが、

2年間の統計データと原理からすると肺炎球菌による重症感染症の発生率は50~75%減少すると考えられます。

従ってHibワクチンの1/100という素晴らしい減少に比べると、

現行の肺炎球菌7価ワクチンは原理的におそらく1/4までにしか減らせず、改良が望まれます。

一方、肺炎球菌7価ワクチンを接種しても肺炎球菌による中耳炎は減らなかったという残念なデータがあります。

これは中耳腔が血液(抗体)が届かない空間であることに起因しているのかも知れません。

残念ながら現在、日本ではまだ臨床第二相治験段階で承認申請すらされていません。

Hibワクチンが1987年にアメリカで開始になり、1992~1993年頃に殆どの先進国でも一斉に導入されたのに、

日本では2007年まで15年もの遅れが出ました。

日本ではHibワクチンが定期接種にすらなっていない現状で、肺炎球菌7価ワクチンが何年先に販売になるか予想も着きません。

日本では通常入手できませんが、個人輸入している医院も稀にあるので接種は(困難ですが)不可能ではありません。

当院では接種希望者が一定数に達すれば個人輸入に取り組みたいと思います。

(アメリカで医師として働く友人に訊いたところ、最低でも100万円程度の一括購入でないと買えないそうです。)


(上記は、2007年に書きました。2020年時点では13価ワクチンになっています。2010年代初頭には19価ワクチンの開発が試みられていましたが、まだ完成していないようです。)