HPVワクチン〜2016年の状況
長崎大学小児科教授である森内浩幸先生の記事を紹介します。(2016年記載)
この内容は小児科医にとって驚くような内容ではなく、皆、思ってきたことです。
子宮頸癌は年間に10000〜15000名の発症がおり、死亡者数は3000〜3500名です。
(この幅があるのは、進行した子宮ガンでは発症部位がもはや、体部なのか頸部なのか分からないぐらいに進行している例があり、統計から外されているものがあるからです。)
この内の半数以上がワクチンで予防可能な16型と18型で、ワクチンによって年間の死亡者の半数の1500名ぐらいの命が救えます。
逆に、これをしないことは20年後に年間1500名もの命を奪い、数千人から子宮を奪っているということなのです。
これを見過ごすことは過半数の小児科医が悔しく思っています。
(実は小児科医の中にもHPVワクチン反対という意見の人が1%ぐらいいます。)
マスコミの偏向報道に騙されず、自分のお子さんを守って欲しいと思います。
これらの報道では子宮ガンで亡くなった家族のことなど報道していないのです。
百日咳ワクチンでも、MMRワクチンでも、肺炎球菌ワクチンでも、同じような愚行をマスコミはしてきました。
百日咳や麻疹では接種が中断されると、すぐに感染者が増え始めるので、世間のプレッシャーが掛かって、数年以内には再開されてきました。
残念ながらHPVワクチンは統計学的に効果が証明されるのが、20年後になってしまいますが、
すでにオーストラリアなどでは若い女性の前ガン病変が統計的有意差を持って減少し始めています。
騙されて将来悲しい結末にならないように、どうか動いてください。
でも、できることなら20年後ではなく、今、動いて欲しい。
小児科医、神経内科医、精神科医、麻酔科医(疼痛の専門医)はHPVワクチンが始まるよりも遥かに昔から同様に思春期の女性(時には男性も)に歩行障害、視覚障害、記憶障害、疼痛が起こることは知られていました。
この殆どが転換性障害と言われる精神疾患です。
私もHPVワクチンが始まるよりも遙か昔に歩行障害、視覚障害の女子中学生の主治医になったことがあります。
棘が指に刺さったことを契機に麻痺と疼痛が発症した小学生男児、
麻痺を訴える40代女性もいました。
もっと軽い転換性障害は過換気症候群で、これは医療従事者でなくても見たことがある人は多いと思います。
転換性障害は時間は掛かりますが、環境調整や認知行動療法で徐々に治っていきます。
むしろ「HPVワクチンのせいで歩けなくなってしまった」と思い込み、適切なサポートが受けられなくて、迷路に迷い込んでいるのが残念でなりません。
副反応だと報道されているワクチンと無関係の疾患に怯えて、ワクチンを接種する機会を逃すことはとても損をすることです。
医師に中にも、ガン検診すればワクチンは不要だと考える人が少数いますが、これは間違っています。
日本人にはガン検診への抵抗が大きく、欧米とは比較にならないぐらい低率です。
ガン検診は中医の提供する医療で、ワクチンは上医が提供する医療です。
検診で見つかっても子宮を失う可能性があります。
偏向報道に騙されないでください。子宮頸癌で亡くなった人なんて紹介していないのです。
HPVワクチンを接種した方が得なことは小学生でも分かる不等式の問題です。
接種する機会を逃さないようにしてください。
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2016年8月31日
【子宮頸がんワクチン特集】
ワクチンで防げる悲劇を見過ごしていいの?
子どもにワクチンを打つ小児科医の立場から
長崎大学小児科学教室主任教授(感染症学) 森内浩幸
つい最近まで、世界中で5歳の誕生日を迎えることなく死んでいく子どもが年間1000万人もいました。そのうちの約4分の1に当たる260万人の命はワクチンで予防できる感染症によるものでした。子どもだけではありません。ワクチンによって予防できる病気で死んでいく大人も毎年200万人近くいて、その死因の第2位はB型肝炎に続く肝硬変と肝がん(年間約60万人)、そして第3位はヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん(年間約30万人)でした。つまり、子どもの時にワクチンを接種することで、大人になって発症するがんを防ぐこともできるのです。
いずれにせよ、私たちはこれらの病気がワクチンによって防ぐことができることを知っています。必要とされる子どもたち、少女たち、大人たちへワクチンを接種してあげさえすれば、こんなにも多くの人たちが死なないで済むのに、それに目をつぶって知らぬ顔でいることは許されません。それは恐るべき規模の大量殺りくに「不作為」という形で加担しているのと同じです。
ワクチンで救われてきた子どもの命
日本でも私が生まれた頃には、破傷風やジフテリアで死ぬ子が毎年それぞれ数千人、麻疹や百日咳で死ぬ子が毎年それぞれ1万人以上いました。消えてしまったように思っているこれらの病気が、ワクチンを止めたとたんに舞い戻って来ることを、世界は 途轍もなく高い授業料(多くの犠牲者)を払って経験してきました。
日本における実例の一つは百日咳です。ワクチン接種後に2人の子どもが亡くなったという報告を受け、「百日咳なんて過去の病気だからワクチンなんかいらないのに、そのワクチンが2人の子どもの命を奪った」と 誹られ、中止に追い込まれました。その結果は、年間の患者数が数百人まで減っていたのに1万人を超えるようになり、百日咳による死亡者がゼロになっていたのに中止した3年間で113人もの命が奪われました。
しかも、ワクチンのせいと言われてきた副作用の多くは、実は 濡れ衣や単なる紛れ込みです。上述したように、古いタイプの百日咳ワクチンは脳症を起こし、下手すると命に関わることがあると言われてきましたが、そういう「百日咳ワクチン後脳症」の患者さんたちのほとんどは、実は遺伝性のてんかんであることが後に判明しました。ワクチンとは関係なかったのです。
欧米でかつて「MMRワクチン(はしか、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチン)によって自閉症が増える」という報告が出ましたが、実はこのデータは全くのでっち上げであることが判明し、論文は撤回され、著者は医師免許を剥奪されています。
日本では慣れていなかった同時接種がおっかなびっくり行われるようになってすぐ、接種後の突然死がいくつも報道されてちょっとした騒ぎになったのを覚えていますか? でもそれは、「乳幼児突然死症候群(乳児の死因の第3位で、全く健康だった子が突然死んでしまう)」等の紛れ込み(たまたまワクチン接種後のタイミングで起こってしまったこと)を見ていたに過ぎなかったのです。
もちろん、ワクチンによる重い副作用がゼロだと言うわけではありません。でもそれは雷に当たるよりも億万長者になるよりも 稀なことなのです。一般にワクチン副作用と称されているものの多くは、本当のところワクチンのせいではないのです。
しかしながら、このワクチンの副作用と称されているものは、ニュースでは非常に大きく取り上げられます。
一方、ワクチンが数多くの命を救うことは全くニュースになりません。おそらくその理由の一つは、「犬が人を咬んでもニュースにならないが、人が犬を咬んだらニュースになる」という報道の原理が働くからです。珍しいことだからニュースになり、当たり前すぎることにはニュースの価値がありませんから。しかしそのようなニュースが繰り返し目に飛び込み耳に入るようになると、「近頃は、犬に咬みつく人が増えているんだって」というメッセージが、疑いようのない事実として浸透していくのです。
HPVワクチンとは何を防ぐのか
さて、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの話です。ヒトパピローマウイルスにはたくさんの種類があり、一部のものは、子宮頸がんや、性器や肛門の周りにイボを作る病気「 尖圭コンジローマ」を起こします。
今使われているワクチンは2種類あって、どちらも子宮頸がんを最も起こしやすい16型と18型を防ぐことができます(1種類はさらに尖圭コンジローマを起こす6型と11型も防ぎます)。16型と18型で子宮頸がんの約3分の2を引き起こしますが、特に比較的、若年で発症するのはこの二つの型が主体です。
私は厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会によるワクチン評価に関する小委員会の中で、これらのワクチンの「ファクトシート(医学的事実を集積し詳細に検討してその有効性と安全性を評価した報告書)」の作成に関わりました。
世界中で相当数のデータが集積されており、その有効性や安全性のデータから本当に期待できるワクチンです。小児科医であり、特に感染症を専門にしている立場から、強く推奨すべきワクチンの一つであると評価しています。
しかし今、このワクチンは日本において(世界中で日本だけにおいて)、積極的な勧奨中止という判断の下、せっかく定期接種に加えられたというのに接種率はほぼゼロになってしまいました。なぜでしょう? それは、国内で338万人の少女に接種した後、体のいろんな部位の痛みだとか、体が勝手に動く不随意運動だとか気分不良だとか様々な訴えを持つようになったことが問題視されたからです。
厚労省の副反応検討部会の資料によりますと、上述の様々な症状が続いている子が186名、これに未確認分を推定して加えると276名、これは接種者の0.008%に相当します。仮にこれが全て本当にワクチンのせいで起こったとして、ではワクチンを接種したらどうなるのか考えてみましょうか? 子宮頸がんの 罹患率や死亡率、子宮頸がんのうちワクチンによって予防できる割合を計算に入れると、接種者338万人のうち2万5千人がワクチンによって子宮頸がんを免れ、7000人が死なずに済むのです。
そして副作用と言われているものは、本当にそうなのでしょうか? この年頃の女の子によく見られる不定愁訴(原因不明の体調の悪さ)を、ワクチンのせいと思い込んでいるのではないでしょうか?
名古屋市の調査では、ワクチン接種後に起こるとされる様々な症状の出現率が、ワクチン接種者と未接種者との間で違うかどうかを、3万人の規模で解析しています。その結果、接種者の方が未接種者よりも多く訴える症状は何一つありませんでした(注:2015年12月に出された中間報告では上記のような解析結果を出していながら、本年6月の最終報告では生データの提示だけ行って、解析を行わないという不可解な対応を取っています)。つまりワクチンによってそういう症状が出ることは、仮にあったとしても極めて稀であると言えます。
誤解してほしくないのは、これらの症状で苦しんでいる子どもたちがワクチンのせいであろうとなかろうと、しっかりと向き合い、その苦しみを除くために努力すべきだということです。これまでこのような不定愁訴で苦しむ子どもたちは、しばしばまともに相手にされてきませんでした。そしてそのことがこの子たちの苦しみを増幅させてきたのです。それについても、私たち医療従事者は深く反省する必要があります。
ワクチン接種で防げる悲劇を防ぎましょう
いずれにしても、以上述べたことを整理すると、今日本で起こっていることは一体全体何なのでしょう?
数百人がワクチンとの因果関係が不明の訴えを持ち続けるようになったことを理由に、その100倍ほどの人が子宮頸がんになり、そのうちの3割近くはそのために命を落とすことを容認していることになるのです。世界保健機関(WHO)をはじめ、数多くの国際的な組織や学会はこのような日本の状況に深く憂慮し、このワクチンが有効かつ安全で多くの命を救う大切なワクチンであることを強調しています。日本国内でも、ワクチンに関わりが深い学術団体15からなる予防接種推進専門協議会は、さらに二つの関連学術団体とともに声明を出し、厚労省に積極的勧奨の再開を訴えています。
ヒトパピローマウイルスワクチンの積極的勧奨中止以降、本来であれば接種されたはずの女子がこれまでに170万人を超えます。この170万人のうち、将来約2万人が子宮頸がんを発症し、そのうち約5500人が死んでしまいます。もしワクチンを接種すれば2万人のうちの約1万2500人は 罹らずに済み、5500人のうちの約3500人は死ななくて済むのです。このままこの子たちがワクチンを接種しないままでいるならば、私たちはこの3500人の殺人に加担することになります。そして勧奨中止をさらにダラダラといつまでも延長することによって、さらに大規模な集団殺りくの加害者へとなっていくのです。
政府も学会も、逃げ腰になってはいけません。繰り返し言います。それは不作為の殺人です。医学的に正しいデータだけをもとにして、真に国民に患者に利するよう判断を下すのが、プロとしての重大な責任です。マスメディアも、珍しいことや「絵」になることにばかり飛びつき、訴えてくる人々をセンセーショナルに取り上げるだけではなく、目に見えてくることが決してないけれど数多くの命が救われる事実を丁寧に説明することに、もっと紙面や報道時間を割いてください。
女の子をお持ちのお母さんお父さん、わが子が将来もしも子宮頸がんに罹り、命を失ったり、助かってもその後遺症で苦しんだり、子どもも持てなくなってしまったりする姿を見たらどう思われるでしょう? ワクチンを接種していたら防げたかもしれない悲劇なのです。
若い女性・女子の皆さん、子宮頸がんって、何も特別な人に起こる特殊な病気ではありません。ごくありきたりの生活をしている人に普通に起こる病気なのです。この病気にかかる確率は、ワクチンによって何か大変な副作用を起こす確率とは比べものにならないくらい高いのです。
日本は経済的に豊かであったにもかかわらず、ワクチンに対して理性的な判断ができず「ワクチン後進国」でした。ワクチンの導入が遅れたために奪われた命、残った障害は数知れません。近年、ようやく種類だけは接種できるワクチンが日本にも増えましたが、この騒動で明らかになったように、その実体は今なお後進国です。いつまでこういうことを繰り返すのでしょう? ボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞でもありませんが、どれだけ多くの命が失われたら私たちはあまりにも多くの犠牲者を出してしまったと気付くのでしょう? あらぬ非難や中傷に対して、臆病風に吹かれている場合ではありません。
(付記:筆者はヒトパピローマウイルスワクチンの製造販売企業を含め、数多くの企業が共催するワクチン啓発活動に関わり、正当な対価を得ています。しかしその行動原理はただ一つ、ワクチンという最善の医薬品によって病気を防ぎ命を守ることに可能な限り貢献したいからです)。
【略歴】
森内 浩幸(もりうち・ひろゆき) 長崎大学小児科学教室主任教授(感染症学)
1984年、長崎大学医学部卒業。米国National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)感染症専門医トレーニングコース修了。NIAID臨床スタッフを経て、1999年、長崎大学小児科学教室主任教授。日本小児感染症学会理事、日本ウイルス学会理事。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161227-OYTET50000/
2016年12月27日
子宮頸がんワクチン、非接種でも「副作用」…症状を追加分析へ
子宮頸がんワクチン接種後に体の痛みや歩行障害など原因不明の副作用疑い例が相次いだ問題で、厚生労働省研究班は26日、接種歴のない女子でも一定程度、同様の症状を訴えているとする調査結果を有識者検討会に報告した。
ただ、接種者との比較は「年齢構成の違いなどからできない」との内容で、委員からは研究班に追加の分析を求める声が相次いだ。追加分析には数か月かかる見通しで、検討会はその後に同ワクチンの積極的な勧奨を再開するかどうか、議論を進める。
研究班(主任研究者=祖父江友孝・大阪大教授)による調査は今年1~11月、全国の計1万8302の小児科や精神内科などを対象に実施。昨年7~12月に受診した12~18歳で、関節痛や歩行障害など約20の症状のうち、一つ以上が3か月以上続き、通学や就労に影響がある患者を調べた。
その結果、原因不明の痛みなどの症状を持つ患者数は、ワクチンを接種していない女子では10万人当たり20.4人、接種した女子では同27.8人と推計された。
2013年6月に勧奨が中止されたことで、接種者は10歳代後半に偏っており、非接種者の年齢構成とかなり異なっていることなどから、祖父江教授は「単純な比較はできず、接種と症状との因果関係も言及できない」と説明した。
これに対し、検討会の委員からは、調査結果を評価するためには、さらなる分析が必要との意見で一致。年齢構成の差などを踏まえ、年齢別の特徴などの分析を追加で行うよう求めた。
検討会終了後、座長を務めた桃井真里子・国際医療福祉大副学長は記者会見で、「接種していない人でも、これだけの人が症状を訴えているということを国民に理解してもらうのは重要なこと。接種勧奨の方向性は現段階では言えない」と述べた。
弁護団「調査に問題」…学会は勧奨再開求める
今回の調査結果について、子宮頸がんワクチンで健康被害を受けたとして国などを相手取り損害賠償訴訟を起こしている原告側弁護団が26日、東京都内で記者会見し、「非接種者でも副反応(副作用)と同じような多様な症状が出ているという結論は不当だ」との見解を示した。
弁護団は、原告の女性の中には運動障害や認知機能障害など複数の症状が出ている人がいるのに対し、調査では、頭痛など一つの症状だけでも対象としていることを問題視。代表の水口真寿美弁護士は「調査の設計自体に問題があり、今回の結果をワクチンの接種勧奨の再開に向けた基礎データとして使用することに断固反対する」と述べた。
一方、日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は今回の調査を受け、「多様な症状がある女性の診療に 真摯
に取り組むとともに、多くの女性が子宮頸がんで命を落とすなどの不利益が拡大しないよう、国の勧奨再開を強く求める」と話した。
厚労省によると、国内では年間約1万人が子宮頸がんを発症し、約2700人が死亡。ワクチン接種でがんの原因となるウイルス感染を50~70%防ぐことができるという。同ワクチンの接種率(推計)は、18歳が81・2%であるのに対し、15歳は42・9%、13歳は0・7%にまで落ち込んでいる。