<風疹>

<風疹ワクチンの利点>

・妊婦が妊娠初期(特に20週まで)に風疹に感染すると胎児に白内障、先天性心疾患、難聴を3主徴とする先天性風疹症候群が起きます。

流行がない年でも毎年10人以下の先天性風疹症候群が生まれています。

大きな流行になると過去には全国で100人以上の先天性風疹症候群が生まれた年もありました。

これを防ぐことが風疹ワクチンの主目的です。

・乳幼児や成人に感染すると、全身の淡紅色斑状丘疹、発熱、リンパ節腫脹を3主徴とし、

通常、発疹出現と同時に発熱が3日前後続き、カタル症状を伴います。

風疹の不顕性感染率は25~50%と高く、顕性感染は50~75%です。

年長児では有熱期間が長く症状が重くなります。思春期以降では更にこの傾向が顕著です。

ワクチンの副反応による発熱の頻度は、小児で2~3%、思春期~成人で約1~2%です。

ワクチンの副反応による発疹の頻度は、小児で0.3%、思春期~成人で約0.3~1%です。

ワクチンの副反応によるリンパ節腫脹の頻度は、小児で0.1%、思春期~成人で1~2%です。

3主徴の出現頻度はどれも3%以下で、自然感染の顕性感染率50~75%より低率で軽度です。

・風疹の自然感染では脳炎が6000人に1人起きます。ワクチン接種者では100万人に1人程度に脳炎が起きます。

・風疹の自然感染では血小板減少性紫斑病が3000人に1人起きます。

ワクチン接種後の血小板減少性紫斑病が(因果関係が不明な例も含めて)年間10例以下の報告があります。

血小板減少性紫斑病は色々な原因で起き、接種者が毎年100万人以上いたことから100万人に10人以下と思われます。

・風疹の自然感染では発疹出現の数日後、成人では関節炎が20~35%に起きます。通常5~10日で軽快します。

ワクチン接種9~27日後に関節炎を来すことがあり、症状は数日~7日以内に軽快します。

思春期以降ではワクチンによる関節痛が25%に、関節炎が10%に見られます。

乳幼児ではワクチンによる関節痛が0.5%に起こり、関節炎は殆どありません。

ワクチンの副反応に伴った関節症状は一般に頻度も程度も軽い傾向です。

<風疹ワクチンの有効性>

ワクチン接種者の95%程度は風疹抗体価が陽転し、通常10年以上有効域にある抗体価(HI法で8倍以上)が続きます。

風疹HI抗体価が8倍以上の者は感染するリスクが低く、感染しても先天性風疹症候群の発生率は初感染妊婦よりかなり低いとされます。

HI法で128倍以上では今のところ先天性風疹症候群の発生例は報告されていませんが、64倍までは発生例があります。

<妊産婦および家族への注意事項>

・妊婦は接種禁忌です。接種後は3ヶ月間避妊する必要があります。

しかし実際は妊娠初期に接種を受けた妊婦で先天性風疹症候群が生まれた例はないため中絶の適応ではありません。

・授乳婦が接種しても授乳は続けることができます。(母乳中のリンパ球やIgAのおかげで感染しません。)

・妊娠初期の女性がいる場合、その家族への接種は問題ありません。むしろ積極的に接種すべきです。

80%以上の接種者はウイルスが咽頭から検出されず、検出例も量は自然感染の1/100以下で弱毒であることから

感染した例は歴史上存在しません。風疹ワクチンの抗体陽転率は95%以上で非常に有効です。

一方、自然感染では不顕性感染者もウイルスを排出し感染源になります。

また不顕性感染した母親からも先天性風疹症候群が生まれます。

ワクチンの副反応として接種者が感染源になるということはありませんのでリスクがコントロールし易くなります。

<風疹ワクチンのその他の副反応>

・局所の発赤は1~2%です。

・Guillian-Barre症候群が極めて稀に起きます。生命予後は良好の疾患です。

<風疹の流行と風疹ワクチンの歴史>

1977年から中学生女子を対象に定期接種が行われましたが、約5年周期で冬~初夏に幼児~小学校低学年に流行が起きました。

特に1~2歳と5~9歳に罹患のピークがあり、風疹患者に占める0歳児の割合は3%以下と少ないです。

中学生女子を対象とするだけでは流行を抑えることができず、その都度、先天性風疹症候群が生まれたことから

その後男女の区別無く幼児期に接種するようになりました。

そして2006年4月からMRワクチンとして就学前にも2回目の追加接種を行い、

流行を押さえ込むと共に妊娠可能年齢まで免疫が有効となるように変更されました。