<母乳の特徴>
1.牛乳はカゼイン含有量が多く、その凝乳は硬いため人乳より消化が悪く便秘がちになる。
人乳はカゼイン含有量が少ないため、凝乳が柔らかく消化が良く便も柔らかい。
2.人乳は乳糖やオリゴ糖の含有量が多く、これらによってビフィズス菌が増殖し、乳酸等に分解する。
このため腸内は酸性環境に保たれ、消化管感染症を来しにくい。
3.人乳はミルクに比べ、脳の発達に必要な高級不飽和脂肪酸(リノール酸やリノレン酸)を多く含む。
4.牛乳は人乳よりCaとPの含有量が多く、特にPの比率が高いため
生後数日で高リン血症、低カルシウム血症を来し新生児テタニーの原因となる。
一方、人乳ではリンが少ないため低カルシウム血症を来しにくい。
5.牛乳はNaやKといった電解質が多く、かつての育児書に白湯を飲ませるように書いてあったのは
高Na血症や高K血症を防止するためである。
人乳では当然NaやKは適正量が含まれているので白湯を飲ませる必要はない。
6.人乳には亜鉛、銅、マンガン、コバルト、セレン等の微量元素が必要量程度含まれるが、
牛乳にはこういった微量元素が足りないことが多い。
7.人乳にはビタミンAの前駆体であるβカロチンを多く含むが、ビタミンKが不足している。
このため日本では、出生日、生後1週間、生後1ヶ月の3回、ビタミンKシロップを内服させるようになり、
ビタミンK欠乏性出血性疾患(新生児メレナ)は日本全体で年間10数名まで減った。
しかし完全には防止できていないためビタミンKは生後6時間以内に筋注することが AAPから推奨されている。
8.母乳中には分泌型IgAを多く含んでおり、特に初乳に多い。
(従って初乳を破棄するということがあってはならない。)
9.母乳中には好中球やマクロファージを含んでおり、感染防止に寄与する。
このため母乳を常温下に24時間放置すると腐敗するどころかむしろ細菌数が減少する。
10.ラクトフェリン、リゾチーム等の抗菌物質が含まれている。